あれから僕たちが持って帰ってきた情報を整理して、改めて上から命令が下りることになった。新しい任務の目的は、前と同じように情報収集だが特級対魔師の配置に関しても新しくなるようだった。

「ユリアさん。改めて上で決まったお話をお伝えします」

「はい」

本来ならば特級対魔師が全員集まるはずだったのだが、今回はちょうど他の人たちは別の任務が重なってしまうということで僕だけがリアーヌ王女からその話を聞くことになった。

いつものように会議室に呼ばれ、資料を眺めている彼女の前に立つ。

「ではまずこれからのお話です」

「はい」

そして彼女は淡々とその情報について話すのだった。

「特級対魔師に関してですが、下位の方は結界都市の防衛に回ってもらいます。そして、上位四名は主に黄昏の調査などをしてもらいます。以前のように大規模な作戦をする予定はまだありませんが、少し外に出ることが多くなるかもしれません」

「了解いたしました」

後ろに手を組んで、その言葉を受け止める。もともとその話は前から出ていた。僕としても黄昏に行くこと自体はすでに慣れている。戦うことには恐怖感を覚えることもあるが、今となってはその感覚も限りなくゼロに近い。

自分が魔族との混血ということを知ってから、僕は自分の感覚が人間で無くなっている様に思える。いやそれはきっと黄昏に長時間いることもあるのかもしれない。

自分の体はすでに黄昏に侵され尽くしている。もちろん他の人よりは適性が高いかもしれないが、いつ死んでしまうのか……そんなことも分からない。わかるのは僕たち対魔師は自分の命を削って戦っているということだ。

間違いなくそれは、感覚として残っている。

自分の命を削ってまで最前線で戦う。それはやはり想いを継いでいるということに尽きるだろう。

「ユリアさん」

「はい。なんでしょうか」

彼女は立ち上がると僕の方へと近寄ってくる。その瞳はわずかにだが潤んでいるような気がした。

ギュッと手を握ってくる。それは確かな暖かさがあった。

「これからきっとユリアさんはもっと危険に晒されると思います」

「はい。覚悟の上です」

「だからその……」

少しだけ視線を逸らした後、さらにグイッと近寄ってくる。

「ユリアさんのことは私がサポートしますからっ!」

「サポート、ですか?」

「はいっ!」

目をキラキラと輝かせて彼女はそんなことを言ってきた。

「ユリアさんはいつもちょっと無理をしすぎです。だから今後は私がしっかりと管理してあげます」

「えっと。王女様にそうしてもらうのは、本当に恐れ多いというか……」

「いいえ。遠慮しなくて良いんですよ?」

さらに力強く僕の手を握ってくる。その瞳は有無を言わせないものだった。

「その、ではお願いしても?」

「はいっ! もちろんですっ!」

その笑顔はいつにも増して本当に輝いて見えた。