A Boy Raised by Gods, Will Be the Strongest

Baby picked up by the gods

僕には四人の父親と母親がいる。

彼らは捨て子だった僕を拾い、育ててくれた恩人だ。

十数年前、まだ赤子だった僕は神々が住むという山に捨てられた。

理由は分からない。

その年は飢饉だったらしいし、近隣で戦争が頻発していた。

飢饉によって子供に食料を回せなくなったのか、戦争によって困窮を極めたのか、あるいは双方だったのかもしれないが、赤子だった僕は捨てられ、それを拾ったのが神々だった。

僕を見つけたのは万能の神レウスである。

彼は農民の姿に化け、麓の街を視察してきた帰りに僕を見つけたらしい。

ほろ酔い気分で川岸を歩いていると、川上からどんぶらこと流れてきた僕を見つける。

小舟に乗せられていた僕は小さく泣いていたそうだ。

あまりにも僕の泣き声が自然だったので、あやうくそのまま見送ってしまいそうだった、とはレウスの言葉だった。

ただ、僕はそのまま川下に流され、滝壺に落ちることはなかった。

レウスが救ってくれたからだ。

レウスは大鷲に変化すると、僕を鷲掴みにし、大空に羽ばたいた。

そのまま神々が住まう山、テーブル・マウンテンに行くと、僕を仲間に見せた。

剣神のローニンは僕の顔を覗き込みながら言う。

「なんでい、人間の赤子か。俺はてっきり酒の肴かと思った」

無精ひげを撫でながら嘆く。手には酒瓶が握られている。

治癒の女神ミリアは言う。

「まったく、男はこれだから。見てみなさい、この可愛い赤ちゃん、まるでマシュマロのよう」

ミリアは僕を抱きかかえ、あやしながら微笑む。

それをつまらなそうに見つめるのは魔術の神ヴァンダルだった。

彼はしわがれた声をもらす。

「……子供は好かん。五月蠅いし、我が儘だ」

僕の顔を一瞥すると、魔術書に視線を戻す。

三者三様の態度であるが、万能の神であるレウスは知っていた。彼らが赤子である僕を気に入ったことを。

事実、レウスがこの赤子を育てることを宣言すると、彼らは難色を示したものの、反対はしなかった。

それどころか、なにかと理由を付けては赤子である僕のもとにやってくるようになった。

剣神ローニンは日課である素振り一万回をこなすと、僕のもとにやってきてこうささやいた。

「小っちゃい手だな。まあ、いい、もう少し大きくなったら、剣を握らせ、俺の弟子にしてやろう。すぐに剣圧で蝋燭を消せるようにしてやる」

治癒の女神ミリアは大地との語らいを終えると、僕のもとにやってきて僕を抱く。

「なんと可愛らしい赤ちゃんでしょう。ああ、母性本能がうずくわ」

彼女はそう言うと胸をポロンと出し、乳を与えようとするが、妊娠したことがない女神は乳を出せない。

諦めると胸をしまって代わりに僕の頬にキスをする。

「この子は世界一優しい子、いつか最高の治癒師にしましょう」

ミリアが僕をゆりかごに戻すと、魔術の神ヴァンダルがやってくる。

白髪の老人は詰まらなそうな顔をする。

しかめ面で僕を見つめると、一転、表情を崩し、間抜けな顔をする。

その顔を見てきゃっきゃと笑う僕。

老人の眉が下がる。

「……存外、ユーモアの分かる赤子だ」

老人はそうつぶやくと、決心する。

「よかろう。この坊主をわしの弟子にしてくれようか」

ヴァンダルは僕を見つめるとつぶやく。

「この子はやがて最強の魔術師となる。我が後継者となろう」

こうして三人の神々に気に入られた僕。

僕を拾ってくれた万能の神を含めると四人か。

彼ら彼女らが僕の父親となり、母親となり、師匠となる。

我が儘で自分勝手な人たちだが、彼らは厳しくも優しい師父となる。

そして彼らが僕に名前もくれるのだが、なにかにつけて喧嘩になる四人が珍しく命名に関しては一致した。

争うことなく、一回の話し合いで僕の名前を決めてくれたのだ。

こうして僕は命拾いをし、名前を得た。

神々が僕に与えてくれた名前は、

「ウィル」

という名前だった。

しかし、自分がウィルであると知覚できるようになるまではもう少し時間が掛かる。

なにせ僕はまだ生まれたばかりの赤子なのだ。

特技と言えば泣くことと寝返りを打つことくらい。

他に出来ることはなにもなかった。