「サヤ・フィーリガル!今日からお前はこのパーティーを抜けてもらうぞ!」

「烈火の勇者」と呼ばれているギリアス・ダンナイトは、魔剣士であるサヤ・フィーリガルに吠えるようにそう言った。

サヤは特に反論の言葉を口にせず、黙ってその言葉を受け入れていた。サヤは、いつか自分がそう言われるんじゃないかと思っていた。パーティー内の自分の評判がどうだったのか、サヤ自身が1番よく理解していた。

「はん!どうやら自分がお荷物の自覚はあるみたいだな!」

「待て。ギリアス」

「あん?何だよ?マグナス」

サヤは特に反論する様子を見せなかったが、このパーティー最強の前衛で職業「戦士」であるマグナス・リットンが、軽く手を挙げ意見する。

「いきなりクビと言われても納得出来ないだろう。ちゃんと理由を伝えるべきだろう」

「はん!理由?そんなの分かりきってるだろう?職業が「魔剣士」だったからちょっとは期待していたが、とんだ欠陥品なんだからな!」

ギリアスはそう言って机にあったナイフで自分の腕を軽く切る。すると、ギリアスの腕から流れる血を見たサヤは……

「おうえぇぇぇ〜ーーーーーー!!?」

吐きそうになるのを必死に堪える為に口を抑えた。

「アッハハハハ〜!!!見たろ!?こんな少量の血で吐き気をもよおすんだ!!だから、剣で魔物は斬れないし!魔法で魔物も攻撃出来やしない!出来るとしたら支援魔法ぐらい!こんな役立たずの欠陥品の魔剣士なんてもう使える訳ないだろう!!」

ギリアスとその周りにいたギリアスのパーティーの女達や仲間はゲラゲラと笑ってサヤをバカにする。唯一バカにしていないのはマグナスだけだ。

「そういうこった!今日からお前はクビだ!サヤ!お前が持ってる装備品やら道具全部置いて出て行きな」

「おい!?ギリアス!いくらなんでもそれは!?」

あまりにもなギリアスの横暴にマグナスは声をあげる。が、ギリアスは……

「あん?別に問題ないだろ。こいつの持ってる物はほとんど俺らの力で集めたもんだ。それを返すのは何も間違っちゃいないだろう」

「しかし、だからと言って……」

「るせぇなぁ〜。何も服まで全部脱いで丸裸にしようって言ってる訳じゃないんだ。渡した路銀も返せなんて言わないだけ、優しいと思ってもらいたいもんだぜ!!なぁ!?」

ギリアスは同意を求めるよう仲間内にそう聞く。仲間達も「そうだ!そうだ!」とギリアスにの言葉に賛成の意志を示す。

「分かりました。装備品も道具もここに置いて出て行きます」

「おい!?サヤ!!?」

マグナスは制止の言葉はかけるが、サヤは無言で持っていた装備品や道具を置いて、ギリアス達がいる酒場から立ち去ろうとする。

「おい。サヤ。もしお前がこのパーティーに残りたいって言うなら、俺の女としてなら残っても構わないぜ」

サヤが立ち去る寸前に、ギリアスはサヤにそう声をかけた。

ギリアスはまだ15歳でパーティー最年少の少女であるサヤを前々から抱きたいと思っていた。見た目も悪くない上に、この世界では珍しい黒髪のサヤを抱いてみるのも面白いと思っていた。しかし……

「私はそんな事をする為にパーティーに入った訳じゃないので……」

サヤはそれだけ言うと、今度こそギリアス達がいる酒場を出た。

ギリアスは苛立って舌打ちし、持っていた酒をグイッと煽った……