「チキショウ!!どうしてこう上手くいかないんだよぉ!!?」

ゴロ・フィーリガルがそう叫んで机の上にある自分飲んだ大量の酒ビンを払い落とす。そのせいで、床に大量の酒ビンの破片が飛び散るが、最早酒ビンの破片だらけなので今更である。

「チキショウ!!チキショウ!!チキショウ!!!!あと少しで負け分を取り戻せたはずなのに!?あの融通が効かないガシノの店員め!!!」

ゴロは非常に荒れていた。と言うのも、ゴロはまたカジノで出禁をくらったのである。もうすでにゴロは何軒ものカジノ店から出禁をくらっており、カジノ店全てでブラックリスト入りしていた。当然ゴロの態度が悪いのもあるが、ゴロが借金まみれの無一文であるのは周知の事実なので、店側としてもそんな奴の相手をしたくないのだ。

「クソ!!勇者の奴も突然金は出せないと言いやがって!!!」

ゴロはサヤが勇者パーティーに所属して活躍した分のお金の7割を自分が貰う契約をギリアスと交わしていたが、10年前のある日……

「お前の娘は役立たずで捨てたからもうお前に金は払わないからな!」

と言い出して去って行ったのである。サヤの資金を当てにしていたゴロは何度も交渉しようとしたが応じてはくれなかった……

「クソ……!借金取りが来る前に逃げ出すか……!?」

ゴロがそんな事を考え始めた時だった。

「扉が無くなっているようだから勝手に上がらせてもらうぞ」

突然、白いローブで全身を覆った謎の2人組がゴロの家に入り込んできた。

「なんだ……!?まさか……!?借金取りか……!!?金ならないぞ……!!?」

「いいや。我々は借金取りではない。それどころか、お前の抱えてる借金を無くしてやれる話を持ってきた」

「なんだと!?それは本当か!!?」

色々と追い込まれてるゴロは、謎の2人組の言葉に一目散に飛びついた。

「本当だ。お前の娘が「テリュカ」で暮らしているのは知っているか?」

「何!?あいつ……!俺に黙ってのうのうと暮らしてるのか……!?」

「その様子だとどうやら知らないみたいだな。その娘が預かって育てている双子のエルフ。この2人を我々の元に連れて来てもらいたい」

謎の2人組の1人が水晶を取り出し、その水晶から2人のエルフ、ラナとシアの姿が映し出された。

「この子2人をサヤが育てているだと!?あいつ……勇者パーティーに捨てられて、奴隷商人にでもなったのか……」

ゴロがそんな有り得ない妄想を呟くが、謎の2人組は気にした様子もなく、更に懐から大量の金貨が入った袋をゴロの前に渡す。生まれてこのかた見たことがない金額に驚愕するゴロ。

「それは前金兼支度金だ。お前は「テリュカ」に行く資金すら無さそうだからな。この2人を連れて来たあかつきには、借金を我々が返すだけでなく、その金額の倍の額を渡そう。どうだ?引き受けるか?」

ゴロは生唾を飲み込み、勢いよく首を縦に振った。

こうして、サヤの父親であるゴロはサヤに会うために「テリュカ」へと向かった。サヤが、自分が知ってるサヤとは全く違ってるとも知らずに……