「やれやれ……スライムに怯えて気絶するなんて情けないわね〜」

サヤはクスクス笑いながら、とりあえず先程の2人の様子を映像魔法にて納めておいた。これで、この2人が完全に自分や自分の娘に手を出す事は二度とないだろう。そう思ってサヤはこの場を立ち去ろうとしたが……

「ん……?」

サヤのこれまでスタンピードを潰してきた勘が、先程から迫ってきているスライムの足音が、普通のスライムの大群の足音と違うと敏感に感じ取っていた。

「もしかしなくても……スライムのスタンピード……?」

スライムは前に述べた通り群れで行動する事が多い魔物である。故に、スライムが大群でやって来たのか、スタンピードなのか分からず、何人もの冒険者がそれにより命を落としている。現に、あれ程スタンピードを潰してきたサヤでもかなり接近してきてようやく分かったぐらいだ。

「スライムのスタンピードか……面倒ね……」

「魔剣士」ではあるが、あまり攻撃魔法を多く習得していないサヤは、スライムを剣で倒せないといけない。流石のサヤも、スライムの特徴のあのぐちゃぐちゃは嫌だった。なので、避けても特に問題ないのではあるが……

「流石にそういう訳にはいかないわよね……」

スライムとは言え、スタンピードとなればそれなりに稼ぎが出せる魔物も出るだろう。それに、サヤだって「スタンピードクラッシャー」なんて呼ばれる者としての矜持がない訳じゃない。それになにより、スタンピードには色々と思うところもある。

「さて……それじゃあ、今日も娘達の為に稼ぎますか……!!」

彼女はいつもの自分の仕事をする為、スライムのスタンピードに突撃していった。