A Mid-level (Middle-aged) Office Worker’s Laid-Back Industrial Revolution in Another World
Episode 527: The Council of Lords is in progress. (Can I hire a heterogeneous race? )
本日も王城内の広間にて王家と貴族会議議員、文官幹部による会議を開催中。
「ふむ。
ではこの研究所設立要件と所長への権限項目と参戦時の費用精算方法はこれで裁可とする。
まぁ実施してみて不備があればまた皆で話せばよいだろう。」
「「はっ!」」
その場の全員が返事をする。
「はぁ・・・なんだか長かったなぁ・・・
あ、オルコット、この資料一式を今日の夕方にタケオとアルダーソンに渡すのだったな?」
「はい。お二方を招いて事前講習会を実施する予定です。」
「実はな、タケオの方の初期人員が今日昼過ぎに王城で集まるらしいのだ。」
「なるほど・・・では、この資料はキタミザト殿とアルダーソン殿に昼前に渡しておきましょうか。
キタミザト殿なら不備を見つけそうですのでさらなる修正が出来るでしょう。」
「そうだな、目を通して貰ってから会議に臨んで欲しいと言っておいてくれ。」
「はい、畏まりました。
ちなみにアルダーソン殿はどこにいらっしゃいますか?」
「あ、うちの文官達の定宿にいる。えーっと・・・3番宿だったかな?
王都見物に今回は同行しているぞ。」
「そうですか、では後ほどお伺いしましょう。
キタミザト殿はどこでしょうか?」
「確かレイラが今日は妃達の朝食後のティータイムにアリスと一緒に遊びに来るような事を言っていたかな?」
「ふむ・・・では、あとで厨房に行ってみましょうか。」
「オルコットもタケオの行動がわかって来たな。」
アズパール王が苦笑する。
「まぁ、皇子妃達がキタミザト殿がいるのに料理を頼まないわけないでしょう。」
「まぁな。
さてと、次は何だ?」
「はい。
えーっと、新貴族の選定が固まったので各貴族へ通知の発送前の最終確認です。」
「うむ。」
「まずはゴドウィン伯爵領から」
・・
・
「以上、4名が男爵として爵位を授与させる事になります。
これにバビントン男爵、アルダーソン男爵、キタミザト子爵と合わせ7名となります。」
「そうか・・・全員の年齢が30代だな。」
「ええ、丁度良い年齢なのかもしれませんね。」
「うむ、我はこれで良いと思う。
誰か反対意見はあるか?」
アズパール王の問いかけに誰も発言をしない。
「陛下、ではこちらで全貴族と文官、武官に通達します。」
「うむ。
次はクリフとニールの挙式と新貴族達の授与式か。」
「はい。
先の会議で決まったように殿下の挙式と授与式は連日で行うよう調整をしています。
授与式が1月16日、挙式が1月17日です。」
「ふむ・・・間に合いそうか?」
「はい。そもそも授与式は陛下がエルヴィス領から戻られて決められた事に人数を増やした事と挙式を追加した形になります。
総監局や総務局としては規模が大きくなった程度と認識しています。
また、これを期に全貴族を招集してみようかと考えています。」
「ふむ・・・全当主が揃うというわけだな・・・」
「はい。ですが、各領地にも事情はあるでしょう。
当主もしくは次期当主の参加をお願いしようかと。」
「皆が集まるのは久々だな。いつぶりだ?」
「ウィリアム殿下とアルマ殿下の挙式以来かと。」
「もうそんなになるか。
個別には会ってはいるんだがな。
ん?ニール、どうした?」
アズパール王はニールが密かにガッツポーズをしているのが目に入り聞いてくる。
「いえ・・・普段会えない貴族と親交を深められる機会かと。」
「そうだな。
特にニールはクリフが王都に異動した後のカトランダ帝国方面もみるからしっかりとした面通しをするべきだろう。」
ニールもアズパール王も表面を作ってはいるが、心の中では「これはタケオに頼んでスミスが来るように出来るのでは?これは良い機会だ!」と思っているし、アズパール王は「ニールはエイミーをスミスに会わせる気だな?」と二人とも全く別の事を考えていたりする。
「他に決める事はあるか?」
「他には・・・今日はありませんね。」
「ふむ。では、我から皆に一つ検討の依頼がある。」
「!」
その場のオルコット以外の全員が緊張する。
「いや・・・そこまで緊張する事ではないのだが・・・まぁ良いか。
見聞きしている者もいるだろうが、タケオ・・・キタミザト卿の配下に異種族が入る運びになった。
執事に獣人の親子と配下にエルフの子供の姉弟だな。
昨日、ウィリアムやオルコット、クラークと一緒に個別に面談をさせて貰ったが。」
「陛下、結果として、獣人でもエルフでも雇用契約をしっかりと結べば問題ないとなったと記憶していますが。」
オルコットの言葉にクラークも頷く。
「うむ。
タケオ個人についてはそうだ。
タケオはあくまで能力がある(・・・・)から部下にしたのだろう。
これは我が国の考え方でもある。能力のある者を採用し国力を高めるのを良しとしているのだ。
なのでタケオには雇用契約をしっかりと結べと言って終わったのだ。
だが一方で、我が国の武官の種族的な比率をここに居る皆は知っているな?」
アズパール王の言葉に全員が頷く。
「我はな、これから先・・・数十年の先を考えた時に国が発展するには異種族をも取り込まないといけないのではないかと考えている。」
「陛下、それはどういった意味でしょうか?」
クラークが聞いてくる。
「我は少なくとも国土を拡大させる気はない。
なので、魔物を奴隷にする気もないし、わざわざ不平等を作り出し国内で争いの種を蒔く気もない。
発展とは簡単に言えば人口増加だ。人口増加を目指すのに人間種だけで出来るのか?
それに今、この国は新たな風を入れ、人の配置を変え明るい未来に向かって歩き出そうとしている。
明るい未来とは何か?
それは全ての国民(・・・・・)が『この国で生活が出来て、この国に生まれて良かった』と心から思ってくれる事だと我は考えている。
今の施政者側に人間種しかいない状況はどうなのだ?
本当に全国民がこの国で生まれて良かったと言える状況なのか?
人間種しか利益がない国と化しているのではないのか?」
「陛下、兵士の募集には特定の種族を排除する事はしておりません!」
軍務局長が立ちあがり言ってくる。
「それは知っている。その件は皆で決めたことだ。
だが・・・なぜ募集に対して応募すらされない(・・・・・・・・)のだ?
軍務局長、人間種しか応募してこない理由はなんだ?言ってみろ。」
「それは・・・わかりません。」
「募集したのに応募してこないのは相手だけが悪いのか?
こちら側の不備はないのか?・・・人事局長は居るか?」
「はっ!」
「どう思う?」
「人事局というよりも私の一個人の意見として頂きたいのですがよろしいでしょうか。」
「構わぬ、言ってみろ。」
「募集する側が異種族を認めない為かと。」
「な!?我々軍務局が種族差別をしているというのか!?」
「違うのですか?
人間種と同一条件の募集要項で1名も異種族の者が応募してこない状況があるのです。
選考を重ねて能力が基準を満たしていないから採用をしないならわかります。
でも応募もされない状況とは最初から排除するような・・・彼らが飲めない条件が組み込まれているからなのではないのですか?」
「それは断じてないと言っておきましょう。
私達は能力主義です。個々の武力がある者を採用をし、そして統率力と判断力がある者が昇進していきます。
我々は確かに応募されないという現状はあります。ですが、異種族に門戸を広げているという自負はあります。
我々の所に来ない事をやり玉にあげるよりも自身の文官達の姿勢の方が問題なのではないですか?」
「それは随分前・・・貴方の2代前の軍務局長の時に議論をしました。
『異種族を文官で採用する前にまずは武官で採用し、能力の判定方法、個々の育成方法、集団行動の是非、王国の法律に準ずる覚悟等々を確認してから』という話になっているはずです。
なのに未だに1名も採用しないというのは明らかに武官側で何かしていると考えるのが普通かと思います。」
「くっ・・・だが!」
「そこまでだ!」
アズパール王が声をあげる。
「人事局長、軍務局長、やめろ。
双方の言いたい事はわかった。
これ以上しても結論は出ないだろう。」
「「はっ!」」
2人は難しい顔をさせながら席に座る。
「軍務局長、一応募集要項は一度再考しろ。
もしかしたら人事局長が言う異種族が飲めない条件が入っているかもしれん。」
「はっ!」
「人事局長、軍務局長と一緒に再考した物を見ながら募集要項を考えろ。
もちろん異種族を優遇する必要はない。
あくまで平等にな。」
「畏まりました。」
「さて・・・どうした物か・・・このままで募集を続けても現状のままのような気がするな。」
アズパール王がため息をつきながら言うのだった。