A Mid-level (Middle-aged) Office Worker’s Laid-Back Industrial Revolution in Another World
Episode 654: A letter arrives in Wangdu.3 (Negotiation between the 2nd and 3rd princes families. )
レイラが懐中時計を見ていた。
室内は机の対面には第2皇子一家と第3皇子一家が向き合い、第1皇子一家とアズパール王はそれを横から見る位置に座っている。
「・・・17時です。
始めましょうか。」
レイラが話し合いを始める。
「はい、わかりました。
では・・・私達第2皇子一家から『魚醤』、『さつま揚げ』、『つみれ』のレシピの希望価格はこれになります。」
リネットが答えるとエイミーが席を立ち紙を裏にした状態でアルマの前に置く。
アルマが書面を持ち上げ内容を確認する。
「・・・はい、レイラ。」
「・・・」
レイラがアルマから受け取り、中身を見る。
アルマもレイラも内容を見ても顔色を変化させないのだった。
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15時半前後のレイラ達の執務室。
「で?何で3人ともしかめっ面なのかな?」
午後の会議を終えたウィリアムがお茶を飲みながらアルマとレイラとエリカを見ている。
「それはさっきも言いましたけど、魚醤とさつま揚げとつみれのレシピにいくらまで払えるかの話し合いをしているからです!」
「うん、そこは聞いた。
それで?」
アルマの言葉にウィリアムが返事をする。
「決めかねています。
タケオさんから貰った10個のレシピに対しては私達は金3枚を払いました。
じゃあ、今回の3つにはいくら払えば・・・」
「・・・銀貨9枚で良いんじゃないのかい?」
エリカの言葉にウィリアムが簡単に答える。
「私達とタケオさんの間ならね。
だけど、あの時第2皇子一家もタケオさん相手に支払いをしています。
なら第2皇子一家があのレシピに提示した金額の3個分が最低金額になるはずです。」
「・・・確か・・・その後に家族間で金額の話にはならなかったのだったね?」
レイラの言葉にウィリアムが思い出しながら言う。
「ええ。
それに今回のレシピは単なる料理では無くて『魚醤』が入っている。
第1皇子一家とエルヴィス領ではウスターソース、そして第2皇子一家が正式にタケオさんから魚醤が手に入っている。
私達もその一端で魚醤が手に入りそう・・・全ての王家で新しいソースか調味料が手に入るとなると単にこの間のレシピの単価をそのままとはいかないと思うんだよね。」
アルマが口を尖らせて言ってくる。
「第2皇子一家が前回の提示金額に一体いくら提示したのか。
それによってレシピの単価が変わってきます。
私の想定は私達の倍を提示したとして3つレシピに金貨2枚相当、その後の魚醤のソースとしての利益分が金貨8枚相当として、計金貨10枚が妥当ではないかと考えたのですが・・・」
エリカが持論を展開する。
「エリカさんの想定は低いように思うのよ。
ニールお義兄様達はエルヴィス家のスミスとエイミーの話がある。
なら、タケオさんやアリスを味方に引き込むにはある程度の費用を積んだのではないかと思うのよ。
ならレシピを私達の3倍は提示したとして金貨3枚、魚醤のソースは金貨10枚の計金貨13枚が今回の提示額の金額だと思うの。」
アルマの持論を言う。
「なるほどね。レイラはどう思っているんだい?」
「私はレシピの費用はエリカさんがいう通り倍を見て金貨2枚、魚醤はウスターソースが確か金貨30枚でタケオさんが買っているから魚醤も同金額として半額の金貨15枚が妥当だと思うんだよね。
魚醤のレシピはあくまでタケオさんから私達と第2皇子一家で買ったとすれば半額で良いと思うのよ。
なので計金貨17枚かなぁと。」
「そうかぁ・・・」
ウィリアムが3人の意見を聞いて考え始める。
「ウィリアムはどう思うの?」
アルマが聞いてくる。
「そうだね・・・今回は王家内での交渉だから安くする必要はない(・・・・・・・・・)と思うんだよね。
だから今の3人の話の中で最大の費用を出して良いよ。」
「ん?・・・という事は?」
「レシピの費用として金貨3枚、魚醤の費用として金貨15枚、計金貨18枚を提示しよう。
そうすることでニール兄上にもこっちの誠意が通じるだろうしね。
それに聞いた話の内容だとニール兄上達は僕達の卸売市場に売り側として来てくれるのだろう?
なら多少高くてもいつかは回収出来るだろうしね。
わざわざ駆け引きをする事もないと思うよ。」
「それで行こうか。」
「そうですね。」
「はい、わかりました。」
ウィリアムの提案に3人が頷くのだった。
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15時半前後の第2皇子一家の寝室にて。
「はぁ・・・会議が終わったと思ったら・・・
重大事項が控えていたな。」
ニールが深いため息をつく。
「お父さま、これで私達の領地も潤いそうです。」
エイミーがクリナを抱きながらホクホク顔をニールに向ける。
「そうだな。
・・・それにしてもタケオから良くもまぁこんな数のレシピを引き出したな。
どんな手紙を書いたんだ?」
「え・・・普通に大豆と小豆のレシピを教えて欲しいとしか書いていないのですけど。
それにタケオさんから『王都で作ってみたいので海水を2L以上用意出来ますか?』ともありますし、タケオさんは大豆料理の中でも海辺の領地で作る事が出来る料理を教えてくれたようです。」
「ふむ・・・なるほどな。
大豆はうち向けのレシピで魚醤とさつま揚げとつみれはうちとウィリアムの所か・・・
さて・・・タケオはどう思って書いたのかだな。」
「・・・ん~・・・」
思案していたリネットがさらに首を捻る。
「ん?リネット、どうかしたか?」
「お母様、どうしましたか?」
「いえ・・・なんでわざわざエイミーの手紙にレイラ殿下達宛の伝言を残したのか気になっていたんです。
普通に考えればエイミーの方にレイラ殿下にも教える旨の言葉を書いておけば良いのに、わざわざこっちにしか書かなかった意図がわからないなぁと。」
「まぁ、そうだな。
手紙にもあった通りエイミーにレシピを渡したのだからエイミーが主導的に動いて公平にレシピを行きわたらせたいと考えたというのが普通だが。
たぶんエイミーに内緒でウィリアム達に教えるとエイミーがしたり顔で『どうだ』と言った時にウィリアム達が『知っている』と返答されて落ち込むから可哀相と思ったんじゃないか?」
「父上、私は別にしたり顔なんてしませんよ。」
エイミーがジト目で抗議する。
「んー・・・まぁ正解はわからないですよね・・・
あと考えるならタケオさんがウスターソースのレシピを金貨30枚で買ったのでしたよね?」
「あぁ確かクリフ兄上がそう言っていたな。」
「今回もそのぐらいはかかるかもしれないから『第2皇子一家と折半したら?』という感じなのでしょうか?」
「・・・なるほどね。
で、エイミー、第3皇子一家にいくらで売るつもりだ?
この3つのレシピの交渉権を持っているのはエイミーだ。
好きにして構わないぞ。」
「・・・タケオさんが私達にした通りにしようかと。
私の目的は大豆と小豆の料理レシピの入手です。大豆料理を大量に頂いているので私的には既に目的は果たされています。
魚醤とさつま揚げとつみれは小豆のレシピが教えられない代わりにタケオさんが提示してくれた物ですし、そのタケオさんがこの3つについてはウィリアム叔父上達に教えておいて(・・・・・・)と言われたのですからこちらから金額の提示をする事はしないとします。
第3皇子一家の気持ちを頂き、タケオさんへの謝礼金の一部にしようと思います。」
「うむ、エイミー、それで良い。
王家同士で価格の取引をする必要はない。
困っているなら救済し、困っていないなら気持ちを表せば良い。
王家同士が駆け引きをする事はないだろう。」
「はい、父上。」
「それよりもうちがタケオさんにいくら払うのかを決めないといけないんですけど。」
リネットが最大の問題事を言う。
「「ん~・・・」」
ニールとエイミーが考え始めるのだった。