A Mid-level (Middle-aged) Office Worker’s Laid-Back Industrial Revolution in Another World
Episode 924: Watch the game in the arena. 3 (Apologize for what you apologize for. )
扉をノックすると中から「どうぞ」と言う返答があり、セイジョウが扉を開ける。
アンダーセン以外がセイジョウとバロールの方を向いている。
「失礼しま・・・おっちゃん。何やってるの?」
セイジョウが室内を見回しながら言う。
机と椅子は奥に移動されているし、ビエラはお腹を上に向けて大の字で寝ているし、武雄は机下でごろ寝していた。
もちろん小銃改1はしまわれている。
「ん~・・・ちょっと精神的に私は付いていけないんですよ。
戦場では命のやり取りをせざるを得ないのはわかるんですけど。
見世物としてだとね・・・」
武雄が体を起こし安座をしながら言う。
「まぁ。闘技場がない他国から来ると最初はそうなのかもね。」
セイジョウが苦笑する。
「で?何で机を寄せているの?」
「あれです。」
武雄が指さす。
「あ。穴が・・・」
セイジョウが微妙な顔をさせる。
「セイジョウ君。施設管理者に言えば良いのですかね?」
「たぶん。」
と闘技場の方から歓声が聞こえる。
「所長。終わりました。」
アンダーセンが武雄に目を向け言ってくる。
「結果は?」
「・・・エルフ一家の負けですね。
死亡等はわかりませんが、全員が意識を失っていると思われます。」
「・・・そうですか。
セイジョウ君。剣闘士を買えると思いますか?」
武雄が膝に肘を付いて顔を乗せながらセイジョウに聞く。
「ん~・・・前におっちゃんが言っていたエルフかぁ。
契約者同士でやり取りをするなら問題はないはず。
ただ人気のある剣闘士は富の源泉として売られないと思うけどね。」
「そうですか。
ま。実際は買えるかどうかはこの施設の管理人と話をしながら聞いてみますかね。
で。セイジョウ君はどうして来たのですか?
確か私達を監視しているのでしょう?」
「おっちゃん。知っていたの?」
「うちの子がセイジョウ君の精霊の気配が割と近くに居るような事を言っていましたからね。
別に私達は隠れて何かをする為に来たわけでもありません。
むしろ堂々と売買をしに来ただけなので気にもしていませんよ。」
「あぁ。なるほどね。そこでバレたんだ。
はぁ。これは本当に尾行の意味がないね。」
「交渉の内容を知られるのは・・・というより何しに来たかはセイジョウ君に言っていますからね。
それ以外をしに来ていません。
私達を追いかけても時間の無駄ですよ?」
武雄の言葉にバロールが目を細める。
「ふむ・・・」
「さてと。掃除は・・・まぁ端に寄せておいたなら良いでしょう。
机を元に戻しますか。
皆。元の位置に戻しましょう。
セイジョウ君と精霊さんにはお茶を淹れますかね。」
「「はい。」」
武雄達が動き出す。
・・
・
「お茶が美味しい。」
「ふむ・・・なるほどな。」
セイジョウとバロールが元に戻された応接の椅子に座り、武雄が淹れたお茶を飲みながら頷く。
「すみませんね。
本来なら侍女なりなんなりがするんでしょうが・・・」
武雄が苦笑しながら言う。
「ぜんぜん構わないよ。
ね。バロール。」
「人間が作り出す中でも上位でしょう。
大変美味しいです。
それとキタミザト殿。我の事はバロールで結構。」
「わかりました。」
武雄が頷く。
と部屋がノックされ武雄が許可を出すと身なりがきちんとした男性と作業服の者が数名入って来る。
「失礼いたします。
私がこの施設を任されている者になります。
使節団殿。内装を少し傷つけてしまわれたとお伺いしました。」
「この度はご足労頂きありがとうございます。
私の管理不足で建物に被害を出して本当に申し訳ありませんでした。
私の手持ちで何とかなるようご相談をさせて頂きたくお越し願いました。」
武雄が立ちあ上がり深々と頭を下げる。
その様子に施設長が少し驚いた顔を一瞬させる。
セイジョウとバロールは観覧側の壁側にある椅子にお茶を持って移動をする。
「いえいえ。使節団殿方に怪我がなくてよろしかったです。
この建物も年月が経っております。各所で計画的に修繕はしておるのですがね。
なかなか難しい物です。
出来た当初はこうも脆くはなかったのですが・・・」
「そう言って頂きありがとうございます。
多額とはいかないまでも何とか材料費と人件費については賄えるようにいたしますので、よろしくお願いいたします。」
武雄がもう一度深々と頭を下げる。
「はい。わかりました。
ですが、施設の脆さの調査をし忘れた私どもの失態でもあります。
そこで・・・使節団殿には材料費を賄って頂き、他の人件費等々は我らで見させて頂いてもよろしいでしょうか。
それで手打ちとさせて頂きたいのですが。」
「はい。
そちらの条件で問題はありません。
よろしくお願いいたします。
さ。お座りになってください。」
武雄は神妙な顔つきで頷き、席を勧めるのだった。
その様子をセイジョウとバロールは何も言わないで見ているが、脳内では。
(バロールこれってどういう事?)
(本当。考えが足らぬな。)
(はいはい。で?)
(この場合は実は他国の使節団の部屋の壁がどういった経緯で壊れたにせよ「我らを陥れる策略か?」と施設長に対して言ってきても不思議ではないんだ。
事実この壁は脆かった事が露見したしな。狙われた場合の言い訳は出来んよ。
なら国家同士の話し合いで決めても良いほどの案件になる。
なのにあの御仁は頭出しから非を認め、この場で解決して欲しいと依頼をしてきた。)
(ふむふむ。)
(ここで立場が逆になる為、施設長は高額請求をしても良いが、相手は他国の使節。
報告を上げられ、国家としても組織としても「足元を見る最低な交渉をする輩」と印象を付けてしまう事への良し悪しが施設長としては判断が出来ない。
だが、御仁は手持ちでと最初に念押しをしてこの場で払う事を前提にして話を振って来た。)
(つまり?)
(双方から持ち出してお互いに「なかった事」にしましょうと施設長は言ったんだ。
そして御仁もそれを受け入れたという事だ。)
(ほほぉ。)
(はぁ・・・御仁は流石だなぁ。)
(でっかいため息をつくな。)
セイジョウ達の脳内会話が弾む外で、武雄と施設長が具体的な金銭の合意に向けて話し合うのだった。