『して、お二人が感じられた攻略難度から考えて、どの程度の戦力が必要ですかな?』

「そうね。貴方のような上位種を中心に五つくらい部隊があればいけるかしら?」

「どの程度戦力を割くかによるけどそうだろうな」

戦っていた感触でいえば最後のダークフェンリルを含めてそこまでの脅威ではない。

シンプルな強さ比べになるのだから、こちらも上位種をぶつければいいだろう。

そう思っていたんだが意外にもアイルが口を挟んだ。

「お待ち下さい。お二人であれば脅威は少なかったかもしれませんが、『奈落』は攻略情報を見る限り難度はAクラス上位が想定されます。アンデッドとはいえ絶対に死なないというわけではありませんから、この街の貴重な戦力を失わないように安全マージンを……」

アイルの言葉に感心して耳を傾けているとなにか勘違いした様子で突然アイルがわたわたし始める。

「あっ……すみません。出過ぎた真似を……当然そのくらい考えられて……」

「いや、感心して聞いてただけだ。続けてくれ」

「えっ、そ、そうですか! はいっ!」

どうも自信を失っている節があるけどなんでだろう……。

大方竜の墓場で実力差を感じているという状況なんだろうが……。

「アイル。俺ははっきり言って貴族や軍の常識がまったくない。それは多分ミルムもそうだ」

俺よりはわかるだろうが、人間社会の情報は何年も前で止まっているはずだ。

「アイルのその知識と経験はそのまま力になる。それにこの領地は、アイルがいるからこそこうして成立している。頼りにしてるよ」

「まあ貴方、放っておいたらここを第二の竜の墓場にしかねないものね」

「うっ……」

領地運営なんてやったことのない俺からすればそうなってもおかしくないだろう……。秩序のないアンデッドタウンは普通の人間からしたら脅威にうつるだろうからな。

ミルムの言葉に何も言い返せなかった。

『お嬢様は、良い方々を連れてこられましたな』

改まった様子でロバートがそう言うと、うつむいていたアイルが顔を上げた。

「全くです」

頬に伝う跡は見なかったことにして、話を続けた。