Another Arcadia Online
Ogi the Heartless Demon King and Spirit God ①
精霊である魔王が目の前にいる。
でかい図体をしており、3mはかるーく越しているだろうな。これが、今回のボスらしい。
「……面白いのが来たか」
と、笑っている。
不気味にしか感じられなかった。
「同じ魔王もいて、妖精の王、ましてや精霊の神。私には運の尽きがない」
と、言っているが嬉しそうだった。
早いとこ倒してしまおう。そう思って波動砲を打とうとする。が、やめておく。街中だと被害が広がりかねないからだ。
このゲームはフレンドリーファイアはない。が、背景である建物にも攻撃が通じないとなると話は別になる。森だって火で燃える。建物も破壊可能だ。
街の中で闘うっていうのはきついな……! 制約がありすぎる。
「”魔王の晩餐会”」
と、トロフィさんが変身していく。
どんどん肥大化していくトロフィ。体も変色し紫色になっていた。まるでそれは魔王というのにふさわしい格好となっている。
変身か。私も精霊になったほうがいいのだろうか。いや、そういうスキルあったっけ?
「妖精王すまーっしゅ!」
ぽふっ、と魔王のおなかにパンチ。だがダメージはない。
威力低いっ!
「私も何かしよう……!」
と、私の頭の中に誰かが囁いてくる。
――わたしになって
誰だろう。と、後ろにそびえたつ精霊樹が揺れていた。さっきのは精霊樹の声なんだろうか。
《スキル:大樹化 を取得しました》
なんですと!?
よ、よし。早速使ってみよう!
{”陽炎””大樹化”」
すると、私の体が変形していく。
足は木の根っこのような形になり、腕には葉っぱが生えてきた。どんどん私の体がでかくなる。そして、街を見渡せるかのような大きさとなって止まった。
……これが大樹化?
って、私樹になってるんですけど!?
これって私動かせるんでしょうねえ!
あ、下では私のコピーが働いてる。
そうじゃなくて!
私、樹になります! じゃないんだよ!
これのどこがいいんだ……。図体はでかいし攻撃が当たるだけじゃないか……」
そもそも動けない。
これの活用方法がいまいち……。いや、そうでもない? 体力が増えているし、防御も増している。攻撃や魔法攻撃は少し下がっているけど。
そして、何より実体化というのも気になる。
『わー、精霊神さま樹になった!』
『樹になったー!』
と、私の周りに精霊が集まってくる。
それも、ものすごい数の精霊だった。精霊を呼び寄せる効果でもあるのかは知らないけど、寄ってくるならいいことづくし! 精霊魔法を放っちゃいなさい!
『わかったー!』
『あのくろいひとー?』
『むらさきのひとだよー!』
『よーせいさんかなー?』
狙うのはあの黒い人ですよ。黒い精霊さん。わかるかな?
あ、てかすごい。今気づいたけど大樹化ってMPとか回復するんだ。それもものすごく。陽炎の消費MPもものすごくやばかったけど半分は回復した。
なるほど。この大樹化は回復用ということか。
あ、やめて。プレイヤーさん剣でつんつんしないで。私敵じゃないよ。
スライムだったらぷるぷる。ぼく悪いスライムじゃないよぅっていうのかな?
わさわさ。ぼくわるいせいれいじゅじゃないよぅ。