Another Arcadia Online

Spirit God wants to live quietly ②

戦いは続く。

魔法を放ち、躱され、ナイフが追従してくるので魔物を二体創造し防ぐ。あと4体しか作れないけれど、出し惜しみしていると負ける。

ただ、相手の体力は半分を切った。かすっただけでこのダメージ。レベル差がありすぎるのも原因だろうけど、精霊神なめんなってことで。

「……僕ももうボロボロ。参ったよ」

「降参するの?」

「いいや。僕もあなたと同じでね。特別な種族なんだ」

特別な、種族?

「僕の種族はね、吸血鬼の始祖。あのナイフは実は僕の分身でね。追尾するのはそのせいだよ。魔法を受けないのは当たる寸前に霧になってまた戻るだけ。簡単なトリックさ」

なるほど。

つまり、判明していない二つの王のうち、一つは始祖。目の前のコイツが王なんだ。私と同じで運がいい人間。

「僕は敵を倒すと強くなる。レベル差があるほどあがるらしいんだよ。だから、君も僕の血となってくれないか」

もちろん答えは決まっている。

「ノーに決まっているでしょ」

「だよね」

わかり切ったことを聞く。

私は、魔法を放ったのだった。その魔法は、当たらず、ナイフが飛んでくる。またあれか……。また魔物創造を……。

……あっ!

どうして、このスキルを使わなかったんだ?

「”霊体化”!」

そう。物理攻撃完全無効化。はい。おしまい。

ナイフは私を貫通し、私の周りを飛びまくる。どうやら物理判定らしく攻撃できないので何回も私を刺そうとしては失敗し、また刺そうとしては失敗している。単純なAIだな。

「……ありゃりゃ。こりゃまずい!」

相手もまずいことがわかったのか私から離れようとする。逃さない。

だが、背中を向けたことがまずかったね。おおよそ物理効かないから攻撃仕掛けられないし、躱すのも体力が残らずに逃げるのが一番いいんだろうと思ったんだろうが、判断ミスだ。

見えない攻撃をどうやってかわす? 

それに、私は一人で闘うわけじゃない。

”陽炎”

陽炎スキルを使い、もう一人私を創り出す。

後を追わせ、私は先回り。

「げっ!」

また踵を返し、逃げようとしたが、奥から私がやってくる。

「は!? どうなってんだよこれは!?」

「さて、これで終わりかな」

私と私の陽炎は魔法を放ち、マグダッドに見事命中。マグダッドはポリゴンとなって消えたのだった。

こうして、私とPKの対決は終わった。

PKが実は王の一人だったことで思うことがある。王がPKにまわるのはとても辛いことだと実感ができた。もし私がPKをしようものならどうやったら止められるのだろう。

私みたいなのがもう一人いて、私は一般プレイヤーで、もしもう一人の私がPKになったら。

……災害。

それ以上? でも、どちらにせよ止めるのは困難だ。

……気を付けよう。