Another Arcadia Online
Let's make tonkatsu (2)
お、いたいた。滑鶏。
ベイクの岸辺に来た私は目の前のモンスターを見る。名前は滑鶏。この鳥が卵を産むらしい。巣にないかな? と思い、巣を探すことにした。
「ルシファー、滑鶏の巣を探してくれない? 殺さないでね」
「御意」
ルシファーは翼をはためかせ空へと駆け出していった。
私も飛行スキルを使おうと思ったけれど、地上にあったら見つけにくいと思うし歩いて探すことにした。どこだろうか、巣は。
《警報、警報。何者かに接近しております》
また警報だ……!
ということは近くに、大罪の権化がいる! どこだ……? 接近してくるじゃなくて、接近しているってことは私の方から近づいていっているということだろう。
きょろきょろと探していると、なにやら木の枝が集まったようなものが見えた。
その上には卵がある。
「巣だ!」
私は思い切り駆け出すと、なにやら横から攻撃が飛んでくる。
私は咄嗟に躱した。
「避けるとは。人間にしてはなかなか……」
「……悪魔?」
「ははは! そうだ! 崇高なる悪魔、ベルゼブブ様だ!」
おっふ。大罪の権化かよ……!
暴食の悪魔、ベルゼブブ。別名……。
「蠅の王」
「……その名で呼ぶな!」
と攻撃を仕掛けてくる。
くっそ! 狙いは何だよ! 暴食だから……この卵か! 食べたいんだろこれが! だが渡さないぞ! これはとんかつを作るためだから。また探したくないからな!
「卵は渡さない!」
「寄越せ! 俺様が食ってやる!」
こうして、卵をめぐる争いが起こる――はずだった。
魔法を放とうとすると目の前に一人の影が降り立つ。
背中には黒い翼を生やし、剣を強く握りしめている女性。堕天使ルシファー。怒りをあらわにし見参したのだった。
ルシファーとベルゼブブの決着ははやかった。
ルシファーは強い。圧倒していた。
「己が力の限界を知れ」
剣を収め、こちらに近づいてくる。
「神。お怪我は?」
「ないよ」
ありがたい。
ベルゼブブとは戦いたくなかったからね。勝てるとは思うけど一筋縄ではいかなさそうだったしね。
「卵ゲットしたし帰ろうよ」
「わかりました」
帰ろうと踵をかえす。
すると、ベルゼブブが私の足を掴んだ。
「待て……! まだ、俺様のターンは……!」
諦めが悪い。
私は、しゃがみ、ベルゼブブをちょこんと小突く。ベルゼブブは痛そうにおでこをおさえていた。でこぴんしただけなんだけどね。
「終わりにしよ? ルシファーは強いからさ」
「……そういうことじゃない!」
と、立ち上がり、私に詰め寄る。
「お前は卵がなぜ必要なんだ? もしかしたら、なにか作るのではないだろうな」
と、ベルゼブブがいっている。
その通りだ。
「とんかつを作ろうかなって」
「なんと……! ぜひとも俺様にそのとんかつとやらを……」
「まぁいいけど」
揚げるやつが多くなるだけだ。
「食べさせるのはいいんだけどまず働いてね。滑鶏の巣を見てきて。卵をあるだけ持ってきて。ルシファーも」
「御意」
「了解だ!」
このままいくとベルゼブブさんが仲間になりそうで怖いな……。