月が黒く染まって落ちてくる――

そう考えたほうがいい攻撃。オルテナたちはすでに逃げた。ロトと私がこの場に取り残されている。ルシファーたちを殺すわけではなく、ルシファーたちには見学人になってもらっているようだった。

この場にいながらこの場にいないルシファーたち。

「ミキ、どうするの!?」

「どうするもなにもこれ、避けられないでしょ」

これを避けるのは無理ゲーだ。

だから、避ける前にやってしまえばいいっていうのが本音。だけど、これに耐えたらベノムは敗北する。その言葉に嘘はないだろう。ベノムは紳士的なやつだ。言ったことは守るからな。なにより、公平を誰よりも期している。だからこそ、敗北しないという不公平(アンフェア)な真似はしない。

死ぬと同時に蘇生という手もあるけれど、あれは多分連続攻撃だ。当たったら永遠ノックバックでスキルは使えなくなってじわじわと殺される。だから無理だ。

「なんとかならないの!?」

「今必死に考えてるっ!」

ここであきらめるわけじゃない。

ベノムはこれが失敗して、といった。なら、失敗させる方法があるはずなんだ。突破方法はそれしかない! 失敗させる方法……。

あっ、もしかして!

「ロト! 協力して!」

「わかった」

突破方法が分かったかもしれない。

「ロト。こっからここまで剣で抉って」

「は?」

「いいから!」

半径5mくらいだろうか。それくらいの地面をえぐらせる。

もしかすると、あの炎はもしかして……っていう勘でしかないが、これしかない。距離的に考えると早く終わらせたほうがいいのは事実だ。

「わからねえがやる! 勇者の一撃!」

じわじわと迫ってくる中、地面が抉れた。

「まさかこの中に隠れるわけじゃねえよな!?」

「違うよ! こうするの!」

私は上昇気流で持ち上げる。が、あまり浮かない。どんどんMPをぶっこんでいく。豊富なMPがドンドンと削れていく。まずいな。回復しておくべきだった。

だがしかし、完成。上昇気流が一気に強くなった。持ち上げるだけだったのが抉れた地面をどんどんと押し上げている。

あの炎。地面に着弾したら爆発する。ならば、最初に着弾させてしまえばいい。ただし、ある程度の大きさがないと無理だと予測した。

大きさは適当だけれども。

「ロト! 私の羽根をちぎって私に使って!」

「い、いいのか?」

「このままだと尽きる! MP尽きて間に合わなくなるよ!」

「わ、わかった!」

ロトが私の羽根をむしる。そして、どんどんとMPが回復していった。

「上昇気流! 上昇気流ううううう!」

必死に上昇気流と唱える。

『なぁ!?』

「そう簡単に食らってあげるもんか! こっちだって意地があるんだよ!」

負けたくないから、必死になる。

どんどんと押し上げられた地面が、炎すれすれとなっていた。あと一回! 

「上昇気流ううううううう!」

そう唱えると、地面は炎に接触する。

その途端、爆発が起きた。

「しゃ、しゃがんでロト!」

爆炎が私たちの目の前まで迫る。まずい。私は咄嗟に寝そべった。鼻をかする程度で爆炎の範囲外にいたのだった。

しゃがんでいたロトはもろに食らってしまった。距離をミスった。寝そべってといえばよかったかもしれない。

「蘇生!」

ロトを蘇生させるが、また食らってしまう。蘇生は死んだときの体勢のまま蘇生してしまうから。

「蘇生!」

だから、終わるまで私は蘇生を唱えようと思う。

そして、爆炎が止んだ。