Another Arcadia Online
I apologized to you, Kamiyashi.
神林君はティアモ……花園さんになにかされたんだろうか。
ゴールデンウイークが明けて学校で神林君のクラスを訪ねてみると、ぽつんと一人で座っている。まずいな。この問題を早急になんとかしないと……。
あの子の思考回路が怖い。
「うちのクラスに何か用?」
「へ?」
後ろからデカい男の人に声をかける。
び、びっくりしたぁ。
「いや、特には……」
「……ははーん」
いや、なんですかあなた。
ははーんって何を悟ったんですか? っていうかあなた誰ですか。こんなガタイがいい人同学年にいたんですね。
「さては好きなやつがこのクラスにいるんだろ」
「いませんけど」
きっぱり否定しておく。
私は異性として好きな人はいない……。そもそも男の子って私とあまり話したがらないしね。相手が私と話すのが嫌なんだろうからまぁそれは仕方ないとはいえ。
「なんでぇ。じゃあなんで覗いてんだよ」
「それは……」
神林君に迷惑かけたから謝りたいだけなんだけどこの状況で言ったら勘違いされるよなぁ。うーむ。このクラスに友達はいないし……。っていうか私自身友達少ないしな。
しょうがない。神林君呼んでもらうか。
「神林君に謝りたいことがあって」
「……あいつになにかしたのか?」
「……まぁ」
「わかった。呼んでやるよ」
「ありがとう。で、名前なんて言うの?」
「俺か? 花園 健斗(けんと)」
といって中に入っていく。
花園……もしかして兄妹? 兄妹なの? 花園くんが神林君を呼ぶと私のほうを見た。そして、笑顔で近寄ってくる。
いや、本当にごめん……。売って……。
「な、なにかようかなっ」
「いや、その、花園さん、この前こなかった?」
「……あー、来たけどどうしたの?」
「……ごめん。それ私のせい」
私があんな嘘をついたから突撃しにいったんだろう。
逃げるためとは言え人に迷惑をかけたんだから謝らなくちゃいけない。さすがに嘘をつき続ける自信はないし謝ったほうがいいだろうし。
「私が咄嗟に神林君と付き合ってるっていう嘘ついたから突撃しに行ったんだと思う。ごめんね」
「……あー」
思うところがあるんだろう。
いや、本当に悪かったです。
「……あー、俺の妹の話してんの?」
と、花園君が会話に入ってくる。やっぱり妹なんだ……。
「悪いな。うちの妹好きになると一直線でさ。ヤンデレ属性もあって怖いんだよ。迷惑かけられたら俺に言え。叱るから」
「……お願いします」
「……えっと、あんたにも迷惑かけられたのか」
「告白されて……。断ったのにずっと付きまとわれているというか」
そういうと花園くんは黙り込んだ。
身内のそんな話は聞きたくなかったよね。ごめん! でも迷惑かけられているのは事実だし……。ちょっとぐらいなら言わないけど流石にもうどうにかするしかない。
「そうか……。悪かった。愛にはキチンといっておく……。悪かった。うちの妹が」
「本当だよ……。顔が可愛いって思ったけど性格に難ありすぎる……」
「もうね、怖い。あの子超怖い」
今でもすごい恐怖心がある。なんていうか、苦手というか。
「俺のメアドとか教えるから迷惑かけられたらいって。もうアイツは厄介だからな」
「うん……」
花園くんとメアドを交換する。ラインはやってないらしい。
「……神林も今朝は悪かったな。妹に手を出したとか疑って。勘違いだったな」
「いや、いいよ。気にしないで」
「お前いい奴だな……」
おっ、男同士の友情が芽生え始めましたね。なら女の子の私は退散するとしましょう。
「神林くん。本当にごめんね。私と付き合ってるだなんて嫌だと思うし別れたことにしよう」
「ぐはっ」
「私がフラれた側でいいから……。それじゃあ」
私はその場を後にした。
「……これが嘘の代償だとでもいうのか」
「……もしかしてお前あの子好きなの?」
「……だが諦めるか! 諦めたら試合終了!」
「こいつも妹とどこか似ている感じがするなぁ」