Another Arcadia Online

The moon and night are cold and ridiculous (1)

今宵の月は綺麗だなぁ……。

月は僕の心を優しく照らし、冷たく嗤う。やるせない僕をあざ笑うかのように月は冷たく、僕の顔を覗き込む。

月の光がすべてを惑わし、誘い込む。

今日も今日とて月の光が途絶えることはない。

「月夜に現れるモンスター……。僕の父はそいつに殺された」

満月が照らす今日の夜、僕の父を殺した憎いモンスターが出現する日だ。

☆ ★ ☆ ★

《マクラベル王国王都郊外に謎のモンスターが飛来しました》

と、突然アナウンスが響き渡る。

謎のモンスター? いかにも怪しい。ログインしてアナウンスを聞いた。謎のモンスターとはなんだろう。私はアクアたちを連れて王都郊外に向かった。

他のプレイヤーも来ており、その謎のモンスターを探しているのだろう。

そんな風なモンスターは見当たらないが。

「離してくれ! 僕はあのモンスターに復讐をするって決めたんだ!」

「だめだ。冒険者でもない君が外に出るのは危険だ。危ないことは冒険者や兵士に任せておきなさい」

「だけど!」

「君のためだ。力を持たない者が挑めるほど魔物は弱くない……。君の父は残念だった。だが、こらえなさい」

門の前で誰かが兵士に止められていた。見た目は16くらいの若い男性。腰にナイフを携えている。たしかにあれじゃ狩れてもツノシカくらいじゃないだろうか。

たしかに危険だ。

「自ら死にに行くことを君の父が望んでいるわけがないだろう!」

「ならあいつは誰が倒すんだ! あいつの前では誰もかれも死ぬばかりだ! どうするんだよ!」

「どうもこうも……。ゼウス様もそのモンスターの対策を考えている! だから、待て」

「待てるかってんだ!」

その男性は止める兵士の手を振り払い、前に出ていった。

《緊急クエスト:月夜は冷たく嘲笑ひ を開始します》

というアナウンスが響く。

私はその男の子を追うことにした。

「あの男の子無謀すぎるぜ! そこが最高にかっけえなぁ!」

「無謀なことはかっこよくないと思うけれど」

「そんなことより、あの男の子はものすごく焦ってる音色をしてたね。私にはわかるよ。音楽家だもん」

どんな理屈だ。

だけど、たしかに。謎のモンスターというのが気になるところだ。私と一緒に走っているアクアが何か考え込んでいる。

ぶつくさと何か言っていた。

「あの男の子はどっちいった!?」

分かれ道。

どっちいったのかわからない。とりあえずどちらかを選んでそっちに向かおうとすると、私の上になにやら黒い影が通った。

その黒い影は見えなくなった……と思うと、私たちの目の前に降り立つ。

狐……? もふもふとしてて可愛い。けれど、もしかしてこいつが……?

九つの尻尾を持った……いわゆる九尾が凛として私たちの前に座りこむ。冷たい目で私たちを見つめていた。月の光がキツネを照らす。幻想的だった。

とりあえず鑑定してみた。

――――――――――

・月下狐ムーフォッコ

――――――――――

月下狐。

私は戦闘態勢を整えた。

だけど、次の瞬間、驚くことが起きた。

「おー、久しぶりやん! ポセイのやつ! 元気にしとったか?」

「やはりあなたでしたか。月下狐」

「へ? 知り合い?」