Another Arcadia Online

Inari's Village Defense —

ヴァゴンが落下してくる。まだ息があるようで落ちないように翼をはためかせて飛ぶが、カイザーがその程度で逃がすわけがない。

翼を爪で突き刺した。

「カイザー! お前も人間の味方をするって言うのか!」

「僕はイナリさんの味方だよ。さっさと消えようか」

「やめろ! わかった! この村は襲わない! だから……!」

「ドラゴンなのに命乞いをするとは……。ドラゴンは気高くあれ。気高くないドラゴンはいらないね」

カイザーはキレている。

翼を爪でひっかきぶち破った後また上空に連れ去り、爆発を起こす。どちらもSランク。だがしかし、相性が悪いんや。カイザーは血液、汗、体液。すべて爆発属性を持つ。ヴァゴンは吸血竜。血を吸う前提のモンスター。強いが相性最悪なやつとやるとめっぽう弱いんや。

それは、どのモンスターにも言えることやけどな。

そして、死んだのかぴくりとも動かないヴァゴンの死体が村に落下した。

土煙が巻き上がる。

避難していた人たちがヴァゴンの死体に群がる。カイザーはいい笑顔で地面へと降り立った。

「さすがの月下狐も昼では力が出ないですね」

「せや。だが今日夜でもそんな力でえへんかったやろ。新月やと思うし」

「月が出てないとダメなんですもんね」

「せや。能力の枷がすごいんや」

うちは時間限定で強くなる。その分能力的には優遇されてる方なんやけどな。昼だと雑魚やで雑魚。仲間が人間に狩られるときも大抵昼。バカじゃないんならそら力が弱る昼襲うわな。

「今度はまた新たな……!」

「カイザー。誤解されとるで?」

「まぁ、モンスターの宿命ですから。愛されるようなフォルムしてるイナリさん羨ましい」

「ふふん。どや?」

精一杯のどや顔をカイザーにしてやった。

カイザーは少し悔しそうにしている。うちは変化の術で人間に化けようと思ったらできるけど人化ではないので魔物と認知される状態。見た感じだとばれへんやろうけど魔力が魔物のそれっちゅうわけやし魔物探知機なんてもんがあるらしいからそれ使われたら終わりやな。

「狐さん! あぶらあげもってきたよ!」

「でかしたで」

皿にのせて油揚げを持ってきてくれたんや。優しいなぁ。

一つ口に運んでみる。美味いなぁ。たしかにどこでも売ってる油揚げとちゃう。緻密な中の空胞。油抜きしてへんやつやけどそれでもうまい。

これ偉い上物やな。報酬としては別格やで。もぐもぐ……。

「カイザー、いるか?」

「いや、僕油揚げ食べれないんだ今は。さっき爆発起こしたばかりだし近づけると発火すると思う」

「なんや。こんなおいしいもん食われへんとは難儀な体やなぁ」

いらないっちゅうことなのでありがたくもらっておいた。

「また油揚げ買いにくるわー!」

ユウマ村を後にし、屋敷へと戻ることにした。

カイザーは自分が住む牢に戻ることにした。意外と快適らしいな。食べもんも提供してくれるし寝どこも鉄のようにかったいからすごい寝やすいとか。あいつペットと同じやん。

なんて言葉は飲み込んでおいた。

カイザーは純粋やからな。気にせんでもええんや。うん。