Another Arcadia Online

We stand on the same earth ⑤

美咲が、ガチギレした。

全力の精霊魔法をぶちかました。それは外れたけれど、とても威力が高かったのか後ろに生えていた大木に当たると、その大木は塵となって消えた。

原田はそれを見て、やばいと悟った。

「お、おい。お前! なんでそんな生意気な力を!」

「うるさい。静かにしろ」

美咲は、威力の低い魔法を原田に当てる。

原田は怯んだ。けれど、大剣を構えて美咲に突っ込む。ぶんぶんと振り回すけれど、それは美咲に当たることもなかった。

一度も当たらない。当たるどころか、逆に追い込まれているような錯覚に陥った。

そして、それは現実となった。美咲は、原田が怯んだ瞬間、思いきり殴り飛ばし、そして、原田に首を掴む。

「お、おまっ……! 俺にこんなことしていいのかよ! お前如きが! この俺に! 俺にィィィ!」

「……うるさいな」

美咲の眼は……とても、鋭かった。

今まで見たことのない美咲だった。朱音は、その美咲を見て少し怯えている。射貫くような目。その目で見られたら死ぬかもしれない。

本能的な恐怖が朱音にも起きた。

それは、その睨みを向けられている原田も同じだった。

原田は、美咲の力に少し恐れていた。

こんなにも強かったのかと、なめ腐りやがってとも思っていた。

「やっとリスポーンした……。って、美咲!?」

リスポーンした珠洲が、美咲を見て、驚いている。

幼馴染の珠洲ですら、今の美咲は見たことがなかった。ガチギレしている美咲を見たことは一度もない。怒られたことはたくさんあるけれど、今の美咲は、一度も見たことがない。

そして、珠洲も、背筋が凍っていた。

美咲からあふれているのは、殺意。

その殺意だけで人が殺せそうなほど、鋭く尖っている。

「原田! 逃げろ!」

思わず、珠洲が叫んでいた。

だけれど、逃げれるものなら逃げたいけれど、美咲の首根っこを掴む手がどんどんと締まっていく。体力が、どんどん減っていく。

苦しい。現実でもないのに、原田は苦しいと感じていた。

「お前だけは許さない」

「ひっ……!」

それは、恐怖が勝った瞬間だった。

思わず声を上げる。原田は、涙を流していた。美咲をいじめたいという欲よりも、美咲から当てられる殺意。その殺意が本能的な恐怖を呼び覚ます。本能が勝った。

原田は、「ごめんなさいごめんなさい」と惨めに何度も手を合わせて謝っているけれど、美咲はそれを聞くことはない。

「私が謝ってもお前は許してくれたのか? 私が何度も御免なさいって言ってもお前は許したか?」

「うぐっ……!」

「美咲!」

「どうして私だけ許されないの? なんで私だけ許してくれなかったんだ?」

射貫くような眼孔が原田を貫いた。

そして、原田は、そのまま気絶し、ログアウトしたのだった。