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122 Stories Meeting with the Dean of the College - You'll Be Required to Handle Otona-

「取り敢えず座りたまえ」

クリストフェルから着席を命じられた亮二は - 評価ポイントマイナス5点 - と心の中で呟きながら表面上はスキル”礼節 7”が発動しているので完璧な所作で着席を行った。

「”ドリュグルの英雄”なんて言われてるからどんな田舎者かと思いきや中々どうして。これなら貴族派に入れてやっても問題ないかもな」

クリストフェルの聞こえないように言っている呟きもスキル”聞き耳 5”を取得したばかりの亮二には丸聞こえで、心の中で - 何様のつもりだよ。評価ポイントさらにマイナス15点 - と減点させながら、にこやかにクリストフェルに話しかけた。

「学院長、本日のお呼び出しについてそろそろ教えて頂いても構いませんか?」

「ああ、毎年の恒例行事でもある優秀な成績を収めた生徒との面談だよ。特に今年はリョージ君の顔を早く見たかったのと、勲章について私が直接説明したかったので入学式が終わると同時に来てもらった訳だ。いつもなら1週間後に面談をするんだがな」

「名誉な事なんだぞ」と言外に分かりやすく言われた亮二は「光栄です」と答えて、さらにクリストフェルの評価を下げるのだった。

◇□◇□◇□

「…それで私は学院長として5年にも渡って情熱的に教育に力を注いでいる訳だ。君も最後まで優秀な成績のままで、しっかりと結果を出して私の学院に寄与してくれたまえ」

クリストフェルによる自画自賛の5年間の学院活動報告を聞かされている亮二は、「私の学院(・・・・)ね」と内心ゲンナリとしながら笑顔で相槌を打っていた。そんな見た目は笑顔な亮二の様子を見てクリストフェルはさらに気分良く1時間ほど話を続け、やっと本題の【黒】の勲章に付いての説明を始めるのだった。

「【黒】の勲章についてだが、君があまりにも優秀な成績を収めたので【紫】では駄目だろうと私が(・・)緊急理事会で議題に上げたのだよ。いつもなら何かと口答えする鉄仮…ライナルト主任教授が何も言わないところをみると、何も言えないくらいに素晴らしい考えだったのだろう」

「そうなんですね」

亮二は笑顔で相槌を打ちながら - どうせライナルトの事だから特に悪影響は無いから面倒くさくなって無視したな。後で学院の状態について確認しておくか - と心の中で呟くとインタフェースを起動して「やる事リスト」に【ライナルトに学院状況を確認】と記入するのだった。クリストフェルがさらに自分の学院に対する貢献度の話を続けようとしたが、背後から「そろそろ次の会合の時間です。学院長」と声が掛かった。

「残念だが時間が来てしまったようだ。君との話は楽しかったから、また呼んであげよう」

「有難うございます、学院長。お忙しい中、貴重なお時間を頂けて楽しかったです。また、学院に付いてのお話を聞かせ下さい」

「はっはっは。君は本当に話が分かる子だね。ライナルト君にも見習って欲しいもんだ」

クリストフェルは上機嫌に笑うと亮二との会談の終了を告げるのだった。

◇□◇□◇□

学院長執務室から退出した亮二はライナルトが居る主任教授室に向かっていた。

「ライナルト教授失礼します。リョージ・ウチノです」

ノックして入るとライナルトが笑顔で出迎えてくれた。亮二が同じく笑顔で話し出そうとすると紙に”この部屋の会話は盗聴されています”と書いて、指を口に当てると喋らないように指示をして、自分を参考にしてほしいかのような話し方で会話を始めた。

「”試練の洞窟”の護衛では世話になったね」

「いえ、私も高名なライナルト教授の教えを受ける事が出来て感謝しております」

「私も魔物との戦闘を間近に見れて良い勉強になったよ」

「これからも分からない事が有りましたら、こ教授頂けますでしょうか?」

「もちろん。私も【黒】の勲章を授与された”ドリュグルの英雄”には期待しているよ」

「本日は挨拶にだけ、寄させて頂きました。ではこれで失礼します」

しばらく他人行儀な対応を続けて会話を終了させた後に、亮二がスキル”魔力検知 5”を意識し始めると呼応するようにライナルトの執務机に置かれている花瓶が赤い光を放ち始めた。息を呑んだライナルトを見ると亮二以外にも見えるようであり、亮二は花瓶に近付くと魔力を全力で流し始めた。

「よし!この部屋から不自然な魔力を検知しなくなった。もう大丈夫だよライナルト」

「軍曹、今何をされました?」

「友達との不自然な会話が飽きたから、花瓶に仕込まれている盗聴器を壊した」

亮二の説明にライナルトは大笑いすると、花瓶を調べて盗聴器らしい物体を中から取り出した。

「これが盗聴の魔道具のようですね。【風】属性魔法を上手く閉じ込めてるようだな。会話が始まったら動くようにしてるのか。魔力の消費も抑えられるし、よく考えられてるじゃないか」

「嬉しそうだね、ライナルト」

「当たり前じゃないですか。学院に来てから、こいつのお陰でどれだけ苦労したか。最初の頃は何でこんなに情報が漏れるか分かってませんでしたからね」

ライナルトは嬉しそうに魔道具を眺めながら「これを解析したら対抗が出来るな」と呟くと改めて笑顔で亮二の来訪の理由を尋ねた。

「で、軍曹が私の所に来られたのは学院長と面談されたからですよね?」

「ああ!そうだよ!何なんだよ、あの学院長!俺が今まで会った中で歴代3本の指には入る「痛い奴」だったぞ」

亮二は学院長の悪口を一通りライナルトに伝えると学院に付いての情報を集めるのだった。