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137 Stories One comma in an abandoned house - You have a lot of color issues -

「では、第2回魔法教室を開講します!はい、拍手!」

「待ってました!」

前回に引き続き王都郊外にある廃屋に集まった一同は、リョージの用意した椅子に座って授業を受ける態勢になっていた。開始の挨拶と同時に全員から盛大な拍手をもらった亮二は「前回よりノリが良い?」と首を傾げると苦笑しながらルシアが話し始めた。

「当然でしょ!あれだけ良い杖をもらって、今日の授業でシャルロッタ先生より先生らしくて、ライナルト主任教授から直接声がかかったのよ。2人の仲が個人的に良いのは知ってるけど、教授として声を掛けられたリョージ君を見てたら付いて行こうって思うじゃない!」

ルシアからの怒涛の勢いでまくし立てられた感想に、亮二はノリが良い理由を理解すると、嬉しそうに授業を始めようとしたがマイシカから「先生!授業の前に!」と手が挙がるのだった。

◇□◇□◇□

「昨日もらった“ミスリルの杖”をお父さんに見せたら、ひっくり返りながら『この杖をくれたリョージ君に伝えといてくれ。高級品過ぎるから、そのままだとタチの悪い冒険者に襲われるよ』って伝言を預かってるんだけど」

「あっ!それはうちもそうだった!」

「僕は親に取られそうになったけどね」

「私は冒険者だったから、その辺は大丈夫」

一同から上がった声に亮二は眉をしかめると、どうするべきか考え始めたがマテオの台詞が気になったので質問してみた。

「マテオは親に取られそうになったの?」

「そうだよ。杖を見た瞬間に『そんな高級品はお前には早過ぎる!次期当主のお兄さんに渡しなさい!』だって」

亮二の質問に対してマテオから呆れ顔と共に返事が返ってきた。亮二は自分の所為でマテオと両親の仲が気まずくなった事を謝罪すると、マテオからは達観した笑顔が返ってきた。

「別に構わないよ。それに、杖に関しては、『“ドリュグルの英雄”のリョージ子爵から預かっているだけだからね』って言ったら、あっさり引き下がったよ。マルセル王に気に入られている話は、貴族社会では有名だからね。むしろ兄をリョージ君に紹介しろってうるさかったよ」

「会ったほうがいい?」

「会わないで欲しいかな。『俺は次期当主になったら、お前は下僕だからな』って言うくらいの兄だからね。元々、親からは学院を卒業するまでが援助の約束で、卒業と同時に家を追い出される予定だから。むしろ、リョージ君と出会った事を神に感謝したいくらいだよ。兄達にリョージ君との仲を教えて悔しい思いをさせているからね」

マテオの悪い顔に亮二はしばらく考えると笑顔で話し始めた。

「マテオとご両親の仲は悪いんだよね?」

「兄も含めて物凄く仲が悪いよ。それが杖の件と関係あるの?」

「卒業と同時で良いから、俺に雇われない?そして両親や兄達に悔しい思いを存分にさせてやろうよ!」

マテオの諦め気味の話し方に、亮二から自分が雇用すると伝えると一瞬喜びの表情をしたが、すぐに自虐的な笑顔をすると首を振った。

「え?いいの?俺は貴族の三男で雇う意味は無いと思うよ?」

「雇う意味は俺が作るよ。マテオが来るか来ないかの話だと思うんだけどね?どうする?」

そんなマテオの顔を見た亮二は笑顔で「雇う理由は俺が決める」と再考を促して決断を求めた。マテオは目を瞬かせると笑顔になり、亮二の前で跪いて「我が主に、一生の忠誠を誓います」と剣の代わりに“ミスリルの杖”を捧げるのだった。

◇□◇□◇□

「よし!テンプレ的にOK!」

「え?リョージ君何か言った?」

亮二の小さい呟きにマテオが聞き返したが「なんでもない」と答えると、マイシカから挙がっている”ミスリルの杖”の問題について再び考え始めた。良かれと思って渡した”ミスリルの杖”が、まさか騒動の種になる可能性が有るとは思っていなかった。

よく考えて見れば自分も”ミスリルの剣”を王都で使うのは危険だからと”コージモの剣”を装備しているのに、なぜ杖の時だけ考えが至らなかったのかと恥ずかしい思いだった。

「マテオの問題はこれから解決に向かうように全力を尽くすとして、”ミスリルの杖”の問題だよね。見た目を誤魔化してみる?ここに素材として持ってる”鉄”が有るんだけど、例えば、こうやって、こうすると…。どう?」

亮二がストレージから鉄の塊を取り出すと筒状に成形して、その中に”ミスリルの杖”を収納した。新たに創りだした“鉄の杖”は、かなり無骨な感じになっており初心者冒険者が持つに相応しい逸品になっていた。

「凄いね。一瞬で杖を作っちゃったよ。性能はどうなの?」

「そうだね。“ライトニングニードル”16連。なんか引っかかる感じだね。ちょっと撃ってみるから離れてくれる?」

亮二が”鉄の杖”を構えた状態で“ライトニングニードル”を16連で目の前に発現させると、奥にある的に向かって「Go!」と一斉に撃ち放った。一同は亮二の魔法を呆然と見つめていたが、思ったよりも性能が落ちる事に残念そうな顔をしている亮二にロサが意を決したように話し掛けてきた。

「リョージ君。今のって魔法?」

「そうだよ?なんでそんな事聞くの?”ライトニングニードル”って魔法だよ」

「聞いた事も無い魔法名だし、それに詠唱をしなかったよね?」

「俺の得意な【雷】属性の魔法でさ。それと実は俺、詠唱を破棄して魔法を撃つ事が出来るんだよ」

「「「「えぇ!」」」」

亮二のあっさりとした回答に一同から驚愕の叫び声が響くのだった。