「はい、タロウさん。あーん」

「あーん。もぐもぐ」

「美味しい?」

「うん。美味い」

恋人的な行動をしているわけでは無い。いや俺達の関係はそういう物だけど、そういう意味でやっているわけでは無い。

あれから3日はたったのにまだ体が上手く動かないから、シガルが世話をしてくれているだけだ。

動けることは動けるんだけど、歩行をまともに出来ない状態なのでシガルにもう少し休みなさいと寝かされている。

『治りが遅いな。魔術じゃ治らないのか?』

「やめろ!絶対やめろよ!それやると逆に痛いんだからな!」

ハクの言葉に慌て、その行為を全力で止める。ふりじゃないからな!

仙術のダメージがひどい状態で治癒魔術を使われると、逆に苦痛しか起きない。

そもそも単純な外傷はもうない。治癒魔術をかける意味が無い。

まあ、仙術の負荷で筋肉とか断裂してたと思うから、その治癒は必要だったと思うけど。

「・・・お父さん、大丈夫?」

「大丈夫だよ。毎日言ってるだろ? 少し休めば治るからそんなに心配するなって」

「・・・うん」

クロトは毎日大丈夫かと聞いて来る。

何が不安なのか解らないが、俺を見て、物凄く不安そうな顔をする。

クロトにあんまり心配されると、本当に不味いんじゃないのかとちょっとドキドキするけど、それをクロトに言うのもなぁ。

単純に心配なだけだった場合、クロトが可哀そうだし。

「しっかしこう治りが遅いと、治った後暫くは体戻すために少し無理しないといけないかも」

「あはは、その時はあたしも付き合うよ」

「ありがとう、シガル」

「なので今はおとなしくお世話されるよーに」

「へーい」

シガルがなぜこういうかというと、最初俺はシガルの世話を少しだけ拒否したからだ。

いやだって、初日はともかく、今は痛いけど動こうと思えば動けるだもん。

だから体拭いたりとかは自分でやろうと思ったんだよ。

そしたらシガルさん、良いから私がやるから安静にしてなさい!

って言って有無を言わさず全身拭いたんですよね。凄く怖かったです。

拒否した理由は、本当に彼女は全身拭こうとしたからなんだけどね。

尻の皴まできれいに拭かれたよ。すげー恥ずかしかった。

「病人やけが人がお世話をされるのは当たり前なんだからね?」

「いやでも、恥ずかしいって。シガルも嫌じゃない?」

さっきの事だけじゃなく、シガルは下の世話もやっている。

ぶっちゃけこれが一番恥ずかしかった。

「タロウさんはあたしの世話するの嫌?」

「嫌なわけが無い」

即答すると、シガルは満面の笑みになる。

いやだって、ねぇ。そんなの嫌なわけないじゃない。

「なら大人しくお世話されてなさい」

「アッハイ」

笑顔のまま迫力を増すの止めて下さい。怖いです。

でもまあ、確かにシガルのいう事も確かか。同じ状況だったら俺もシガルの世話焼くよな。

シガルが恥ずかしがっているのを世話するのは、なんかこう、ちょっと違う方向に意識が行かないようにしないと不味そうだけど。

「それに別にあたし達、それ位で恥ずかしがること無いと思うんだけどな」

「そ、そうかな」

「そうだよ。裸なんてもう隠す関係じゃないんだし」

「それとこれとはまた違うと思うなぁ・・・」

「そう? なら今度元気になった時に、全身洗ってあげようか?」

俺の言葉に、にんまりした笑顔で言うシガル。

この笑顔は違うやつだ。エロい事考えてる笑顔のやつだ。

「・・・元気になったらね」

「うん!」

そしてそれを察して、拒否できないのが俺でした。

出来るわけね―だろ!

誰に文句言ってるんだ俺は・・・。

あー、もう、早く体動いてくれないかなぁ。

色々試したい事も有るのに何も出来ねぇ。