At the end of a metastasis that fell into a rift in dimension.
It's Kroto's decision!
「クロト君、落ち着いた?」
笑顔でクロトにお茶を出し、頭を撫でるシガル。
声をかけられたクロトは、お茶を受け取ってコクンと頷く。
少なくとも、クロトと同じ様な存在の話をしてる時よりは大分マシだ。
「クロト、その、話させといてなんだけど、話すのが辛い時は言って良いんだぞ?」
抱きかかえているクロトの頭を撫でながら言うと、クロトはお茶をゆっくり飲みながら頷く。
うーん、頷いてはくれるし落ち着いては居るけど、何か考えこんでるっぽい。
普段なら返事の声ぐらいは出してくれるのになぁ。
『クロト』
「・・・なんだ」
珍しく、ハクがクロトの名前を呼んだ。
するとクロトは、ずっと黙っていたのに顔を上げて口を開いた。
・・・ちょっと悔しいとか思って無いし。
『そいつ、強いのか?』
「・・・多分、今なら弱い」
『なんだ』
ハクが何気なしに聞いた一言に応えたクロトだが、俺はそれを聞き流さなかった。
今なら弱いって事は、そこまで警戒しなくても大丈夫なのか?
後でイナイかブルベさんに言った方が良いよな、これ。
『なら、出会ったら消滅させる』
「・・・多分それが、一番幸せ、か」
ハクが物騒な事を言うと、クロトはそうした方が良い呟いた。
最初に言ってた時もそうだけど、クロトはその存在の目的を知ってる様な感じがする。
でも聞くとまた、さっきみたいになりそうで怖い。
特にさっきのクロトは完全におかしくなっていた。あれはまずい。
「・・・殺して、あげなくちゃ。僕が、やってあげなくちゃ」
もう最近完全に癖になっている、両手を胸で握る動作。
その両手が赤くなりそうなほどに力を込めて握られていた。
クロトの様子にシガルも心配げな表情を見せる。
勿論俺もクロトの言葉の真意が解らず、胸にざわついた物を感じていた。
「クロト、困ったら頼って良いからな」
クロトの頭を撫でながら言うと、クロトは握っていた手をゆっくりとおろしてコクンと頷く。
どうやら今のクロトは俺を頼るという選択肢が無いっぽい。
うーん、心配だなぁ。この子割と、思い込んだら一直線な所有るし。
前に記憶取り戻したときがそうだったしなぁ。いきなり消えたりしないかが心配だ。
「ねえ、クロト君」
俺がクロトの様子に悩んでどうした物かと考え込んでいると、シガルがクロトに声をかける。
膝をついて目線に合わせ、クロトの手を取って優しい笑みで。
「クロト君が決めた事、やらなきゃいけないって思った事、私達にも手伝わせてくれないかな。きっと、力になれると思うんだ。内容を今は言えなくても良い。気持ちが落ち着いてからでも良い。ただ一人で抱え込まないでね。私達は家族なんだから」
「・・・うん、ありがとう。シガルお母さん」
シガルのとても優しい、いつか聞いた覚えのあるとても優しい声に、クロトは頷く。
俺が落ち込んでいた時に、飛竜の事件の時に聞いた優しい声。
その声は、シガルの優しさはクロトに届いたらしい。
クロトの反応を見て良い笑顔を見せるシガルを見て、そう思った。
「・・・お父さん」
「どうした?」
「・・・多分、イナイお母さんは予想してると思うけど、遺跡の破壊は早めにやった方が良い」
「そうなの?」
「・・・あいつは今、力が足りない。だから足りない分を、遺跡に求める」
ああ、遺跡にある力を求めるのか。
クロトは取り込まれる感じだったけど、復活したそいつはそのままだから問題ないのかな。
となると確かに、遺跡破壊を速めた方が良いか。
「・・・でも、そうすると、きっと、お父さんの体がもたない」
「え、マジ?」
「・・・多分、今回と同じ期間でやり続けたら、いつか倒れる」
あれー、マジか。割と余裕あると思ってたんだけどなぁ。
もしかしてこの、相変わらず微妙に回復してない状態が原因かしら。
実は浸透仙術を使えるようになった辺りから、なーんか回復が鈍いのよね。
動けないわけじゃ無いけど、何となく調子が戻らない感じがするというか。
実際動かすとちゃんと動けるから何かよく解らん。
でももしこれが原因だとすると、なぜそうなるのかね。
まだ浸透仙術を使いこなせていないせいで、負荷が回復しきらないんだろうか。
でも気功の流れ自体は平常通りなんだよな。
「・・・でも、ゆっくりでも、破壊していけば、きっと出会う」
「出会うって、そいつにかい?」
「・・・うん、だから」
そこで言葉を切って、クロトは顔を上に向けて此方を向く。
その目はいつものぼーっとした目では無く、力強い、何かを決めた目に見えた。
普段しなさ過ぎる顔に、俺は少し面食らってしまう。
「そいつの相手は、僕がやる。やってやらなきゃいけない。だから、誰にも手を出させないで」
ちゃんとクロトのまま、今までにない程強い口調で、俺にそう言った。