Avoid the Death Route!
28. Could it be………
「ジル=スターリン。ここは人払いしているはずだぞ。なぜ入室した!」
騎士団長さんが入ってきた近衛騎士を咎めるように声を荒げた。
「即刻、部屋から出ろ!」
ちょっと騎士団長さん、もしかしたら急な案件の報告があるかもしれないよね?
人払いしていた王様の執務室にわざわざ来るくらいなんだからね。
それなのに、話も聞かずに追い出すのは……どうなんだろう?
てか、扉の前に歩哨に立っていた騎士さんがいたはずだよね?
その人達に止められずに部屋に入ってこられたことのほうが、私は疑問に思うんだけど?
というか、このお兄さんもまたイケメンだな~。
んん……あれ……?
お兄さんに……何か違和感が……?
えっと……これは……あれだよね?
「……えっと……精霊さん?」
「「「「《《 えっ!? 》》」」」」
私の呟きに、全員がぎょっとして私を見てきた。
「風の、君があらかじめ教えていたのかい?」
《驚かせようとしているのに、そんなことするわけないだろ!》
「……そうだよね。君はそういう奴だよ」
近衛騎士の格好をした精霊さん(仮)はルークと知り合いのようだ。
精霊さんが騎士のコスプレしているわけじゃないんだよね?
だって騎士団長さん、このお兄さんのこと知っていたんだから、本物の騎士なんだよね?
……それってどういうことだろう?
「本当に精霊さんなの?」
「そうだね」
この人、めちゃくちゃ人間っぽいんだけど……。
耳に届く声の質とかも精霊とは全然違うし……。
「これでもそこにいる風の精霊や緑の精霊より長く生きているからね。人間に成りすますことは容易くできるんだよ。だけど、人間のフリをしている時に精霊だと見破られたのは初めてだよ」
わ~、じゃあ、本当に精霊さんなんだ~。
金髪……ていうより黄色に近い髪か~。
ということは――
「えっと……雷、の精霊さんかな?」
「へぇ~、そこまでわかるんだ……」
当たっていたようだ。
でも、何の属性の精霊なのかって、見た目でわかりやすいよね?
緑の精霊であるヒューリーは髪が緑色だし、光の精霊であるミリアは白っぽい金髪で、ルークは黄緑色だしね……。
最初はヒューリー、ミリアと契約した時の光の色で属性ごとに色があるんだな~と思った。
その法則でいくと、火の精霊が赤、水の精霊が青、土の精霊が茶、闇の精霊が黒って感じでね。
その後、いろんな精霊さんと関わるうちに属性ごとに見た目の色、それも髪か瞳の色が大体統一されていることに気がついたんだ。
で、近衛騎士の精霊さんは髪は黄色。
イメージ的に光の可能性もあったけど、ミリアとはちょっと違うから選択肢が絞られて、雷だと思ったんだよ。
もしかして、私が使っていた判断基準って常識じゃなかったりするのかな?
じゃあ、私の持論はあまり人に言わないほうがいいよね?
それじゃあ~……。
「……何となく、かな?」
「そうか。何となくでピンポイントで当ててくるんだ……」
あれ?
今、周りから凄い溜め息が聞こえたんだけど!?
一人や二人じゃなかったよぉ~?
しかも、呆れたような目で見てくるの!?
何で、どうしてっ!?
《まあ、リアだしね……》
ちょっとヒューリー!?
何、その言い分はなにさ!
父に兄達よ、何でそこで頷いているのぉ!
《やっぱりリアは面白いよなぁ~。こいつもリアと契約すればいいと思って呼んできたんだ~》
《お、ルーク。お前にしては良い働きをしたな~》
ああ~、ルークがどこかに行って戻ってきた時、にやにやしていた理由がこれか……。
うん、ちょっと待とうか!
私と契約させるつもりで呼んだのかい!?
《まだ決まってはいないけどな。雷の、リアを見て確かめてから決めるって言ってたけど、どうすんだ?》
いや、本当に待って!