Books to Dominate Married Women
Happiness and luck
『私の可愛い妹である恵は、着物を着ての所作が本当に美しいと思いますね』
『ありがとうございます。明兄様♪』
二卵性の双子の兄妹である私と恵の二人は、お母さんに頼まれた買い物を済ませた後に、お店の近くの甘味処で御茶と御茶菓子を味わっていますね。
『チラッ、チラッ、チラッ』
『黒髪の絶世の美少女である、私の可愛い妹である恵は。周囲から注目を集めていますね』
甘味処の店内で、着物姿の恵に対して。周囲の男性からは好意の視線が、女性からは羨望の視線が集まっている事を感じて、私が感想を話すと。私の可愛い妹である恵は、口許に上品に穏やかな微笑みを浮かべると。
『私に対する視線だけだとは思えません。明兄様♪』
どういう意味でしょうか?。
『明兄様。先程買い物を済ませたお店の出入口の横に設置されている販売所で、硬貨で削る形式の宝籤を、私が明兄様に御勧めして購入されましたけれど。硬貨で削って当落を確かめられてはいかがでしょうか?』
買い物を済ませた後に、私の可愛い妹である恵から勧められて、硬貨で削る形式のスクラッチ宝籤を十枚一組で購入したのですけれど。恵は何かを確認したいような、表情を浮かべているように思えますね?。
『マンションに帰ってから削ろうと考えていましたけれど。別にここで削っても問題はありませんからね』
『はい。明兄様』
『カリッカリッカリッ…』
『私の可愛い妹である恵。これは今私の財布の中に入れてある、幸運の金貨の効果ですか?』
私の問いに恵は、一等に当選した宝籤を確認してから頭を下げて。
『はい。明兄様。仰られる通りです』
…成る程。
『私は今後二度と、宝籤は購入しない事にしますね』
私の言葉に恵は。私の顔を真っ直ぐに見詰めて、瞳を覗き込むような目付きを美しい表情に浮かべながら。
『理由を御尋ねしても宜しいでしょうか?。明兄様』
私は恵の視線を正面から受け止めると、熱い緑茶を一口飲んでから。
『この幸運の金貨を所有していた、私の美奈さんの前夫の男性は。一代で財産を築きながら、猜疑心の塊のような人間になっていたそうですからね。財産を築く力の源となっていた、幸運の金貨を失う事に対する恐怖心から、猜疑心に囚われていたのだと私は思いますね。私は恵を含む多くの素敵で素晴らしい女性達が周囲に居て、既に充分に幸福ですからね。この幸運の金貨で財産を築いて富を蓄積しようとして、今の幸福を手放す危険性は冒さない事にしますね。私は冒険よりも堅実を好みますからね』
兄である私の返答に、妹の恵は深々と恭しく御辞儀をして。
『明兄様は、本当に自制心のある聡明な御方だと思います』
私は、私の可愛い妹である恵に対して笑みを浮かべて。
『大切な妹である恵に、そのように言ってもらえて。私も兄として嬉しく思いますね』