その後すぐアッサムの指示を受けた護衛達が部屋へ入ってきた。彼等はこれから双葉を浚いに行くのだ。見つからない様に慎重に、でも怪我しない様に気をつけて盗んできて欲しい。

「絶対に、正体ばれるは駄目だよ?」

《謎の強盗団》はヤラとイサとミマ。三人で平気か聞いたら、イサとミマはヤラの部隊にいたから三人の方が動きやすいんだって。

アッサムがやること話したら皆ノリノリだったらしい。イサやミマもあの現場を見ていて思う事があったようだ。

「いってらっしゃい! 気をつけてね!」

三人を見送り、ジユにあの双葉との繋がりを聞けば、ジユはあの双葉の村の出身だった。

「じゃあ、あの赤ちゃんは?」

「彼女は、私の姉です」

は? 姉? え? え?

「「「えぇぇぇ!!!!」」」

詳しく聞けば、双葉には稀に魔力の少ない成長しないまま生きる赤子が生まれてくるらしい。その赤子には不思議な力があり、他人の脳内にその人の魔力を使い映像を送る事ができるのだ。

「何で僕?」

「相性の問題だと思います。それにあまりにも強い魔力には使えないそうなので」

朱鷺が悪夢で眠れなくなったと聞き、ジユはすぐに姉だと気付いた。隠れ家に連絡を入れたが応答がなく、急いで行ってみればそこはもぬけの殻。

双葉のネットワークを使い探しだした先で偶然、踏みつけられる長を見た。

隠れ双葉には《双葉と関わってはならない》という決まりがある。関わって双葉な事がばれぬように。里を出たら双葉とは縁を切れと、隠れ双葉を守る為の掟だった。

けれどジユは赤子の姉の世話をしに度々里を訪れていた。だからこそだろう。ジユは目の前で長が蹴られるのを見て、耐えられなかった。刺し違える気だったと。

「私が隠れ双葉であるとわかれば、朱鷺様や皆様にご迷惑がかかると、今ならばわかるのですが。あの時は頭に血が登り、怒りに我を忘れておりました。止めてくれて本当にありがとうございました。そして嘘をついた事、巻き込んでしまった事、本当に申し訳ございませんでした」

言いながら土下座してくるのを慌てて止めた。

「ジユ、頭上げて」

ジユの頭は上がらない。困った。謝罪は受けるけど、土下座は慣れない。気まずさにみじろげば、アッサムが口を挟んでくれた。

「双葉は遅かれ早かれ手をつける案件だった。気に病まずとも良い。悪夢も今はもう見ぬのだろう?」

後半は朱鷺へ問いかけ、頭を撫でてくる。アッサムに頭を撫でられると、ちょっと落ち着く。

「うん。たぶん。見ないよね? ジユ」

一応確認した。恐怖が二倍になるあの夢は本当に怖いのだ。

「はい」

「双葉の長が来たらもう一度呼ぶ、少し休め」

アッサムが言えば、ジユは追加のお茶を持ってきたトウミに手をひかれて退室して行った。

「ねぇ、ラハムは何してるの?」

通信機片手に何やら作業中のラハム。

「あぁ、神官の面談の手配だ。こちらの会話もあれでちゃんと聞いているから問題ない。それより朱鷺に紹介しておきたい奴等がいる。今呼ぶから少し待て」

アッサムも通信機を片手に何やら打ち込んでいる。僕も通信機欲しいと思いました。