Continuity is the Father of Magical Power
First story, long time no family.
今日は姉ちゃんの結婚式。
俺は姉ちゃんの結婚パーティーに参加していた。
「姉ちゃん、結婚おめでとう。会長……いえ、バートさんもおめでとうございます」
綺麗な花嫁衣装を着飾った姉ちゃんと、立派な貴族の衣装が似合うバートさんにそう挨拶した。
バートさんとは久しぶりに会うけど、随分と大人になっちゃったな。
まあ、成人しているんだから大人か。
それにしても格好いい。
「ふふ。ありがとう」
「ありがとう。しばらく見ない間に、随分と大きくなったな? 初等学校に入りたての君が懐かしいよ」
「ああ、あの時のですか。バートさんはあの時からお姉ちゃんのことが好きだったんですもんね~」
あのからかっていた時のことが懐かしいよ。
会長、顔が真っ赤だったもんな~。
「君にからかわれた時か。あれは懐かしいな。ただ、訂正させて貰うと僕はもっと前からヘレナのことが好きだったさ。そう。初めて会った九歳の頃からね」
「ひゅ~う」
バートさん、思っていた以上に姉ちゃん一筋だったんだな。
もっと早く思いを告げていればもっと楽だったろうに。
「もう。恥ずかしいことを言わないでよ」
「ごめん。つい、君の大好きな弟の前だから」
大好きな弟の前?
「そんな理由? だから、あなたも(・)ちゃんと好きだって言っているじゃない」
もってなんだよ。あれ? 姉ちゃん、もう弟離れは済んだと思っていたんだけど?
まさか、冗談だよね? 俺が原因で離婚とか本当に勘弁だからね?
「ははは……あ、姉ちゃん。俺からのプレゼントはどうだった?」
乾いた笑い声をあげ、これ以上面倒な話にならないよう、俺は話題を無理矢理変えた。
姉ちゃんと約束。ドラゴン料理が美味しかったら母さんに黙っておいて貰うという約束だ。
「うん。最高よ。ちゃんと約束は守ってあげる」
「本当? それは良かった~」
「何を守るって?」
か、母さん!? い、いつの間に背後に?
「い、いや、何も……あ、姉ちゃん。ビルがおめでとうございますだって」
「あら。嬉しいわね。ありがとう。また会った時までに、私を楽しませてくれるくらいには強くなりなさいって伝えておいて」
「了解。伝えておくよ」
姉ちゃんが俺の領地にいた半年いや……もっといたな。その間、毎日のように孤児院に行っていたと思ったら、ビルに剣術を教えていたみたいだ。
本人が言うには、ビルくらいの時の俺と関わることが出来なかったのが悔しかったらしく、それをビルに剣を教えることで晴らしていたそうだ。
姉ちゃんはビルに師匠と呼ばれ、ビルは姉ちゃん式の魔法と剣術を合わせた無駄の無い戦い方を目指し、日々努力をしている。
もちろん、あれは相当な練習をしないと使い物にはならないから、まだまだ強くなるには時間がかかりそうだけどな。
「あと。レオ、私が行けなくなる分、孤児院に顔を出してあげるのよ? 皆、あなたに会いたがっているんだから」
「わかっているよ。だから、ビルの伝言を持って来られたんじゃないか。最近仕事が一段落したし、暇を見つけて行くようにしているよ」
ちゃんと行っているさ。ビルの相手もしてやっているしね。
久しぶりに戦った時、動きが前と段違いで本当にビックリしたよ。
「そう。じゃあ、私の弟子を頼んだわよ」
「もちろん」
「ヘレナが弟子か~。ヘレナ、そのいい加減な性格で人に教えられるの?」
「出来ますけど何か? それなら今度、ビルと一騎打ちをやってみなさい。そうすれば、私の愛弟子の強さと私の素晴らしい教授力がわかるでしょうから」
「やめておくよ。どうせ、いつものようにボコボコにされてしまうからね」
え? 姉ちゃん、いつもバートさんのことをボコボコにしているの?
とんだ鬼嫁だ……バートさん、これから頑張って下さい。
「あら。まだ、あなたに五分五分くらいの強さよ?」
へ~。バートさんは今のビルくらいの強さか。
だとすると、ビルは相当才能があるな。
「いやいや。いいさ。僕はこれから統治力を磨いていかないといけないからね」
統治力か。確かに、これからバートさんは公爵領を統治していかないといけないんだもんね。
大変だ。人ごとじゃ無いけど。
「ふふ。まあ、そうね。私もレオのところで学んできたから助けになると思うわ」
あ! そういうことなの? だから、あんなに積極的にフレアさんの手伝いをしていたのか。
「ああ、ありがとう」
「うんうん。二人はお似合いだな」
お姉ちゃんもちゃんと夫を支える良き奥さんになってくれたことだし、弟は感激です。
「そうね~。でも、逃がさないわよ? 二人の約束、私に聞かせてくれないかしら~? もちろん、パーティーが終わってからだけど~」
まだいたのか……。頑張ってスルーしていたんだけど、ダメだったか。
「「は、はい……」
「ふう」
どうも。母さんには逆らえないんだよな……。
「くくく。何をやらかしたんだ?」
「イヴァン兄さん……」
「レオも母さんに怒られるんだね。ヘレナはしょっちゅうだったけど」
俺が溜息をついていると、イヴァン兄さんとアレックス兄さんがやって来た。
ちなみに、二人の奥さんであるユニスさんとフィオナさんは俺と一緒に来たリーナと楽しそうに会話している。
あとで二人にも挨拶しておかないと。
そんなことを考えながら、兄さんたちとの会話を続けた。
「姉ちゃんが怒られていた? あんなに完璧なのに?」
ペンを持っても剣を持っても一流な姉さんが怒られることがあるのか?
「完璧? ヘレナが? ハハハ」
「兄さん笑ったらダメだって。今はあんなに立派になったんだから」
今(・)は(・)か。確かに、小さい頃は俺にベッタリでちゃんと子供だったか。
「そうだな。母さんがヘレナのことを嫁に出せないって嘆いたけど、全く問題無かったな。なんせ、公爵家の長男を捕まえてきたんだから」
「フォースター家を継ぐ僕としては、ヘレナに凄く感謝しているよ。公爵家とつながりがあるのは心強いからね」
そうだ。俺も感謝しないと。姉ちゃんのおかげで、貴族仲間が増えるんだから。
「確かにな。だとすると、あとでヘレナを褒めてやらないとな。それに、公爵家とのつながりと言えば、もう一つのつながりが出来そうじゃないか?」
「ああ、レオか。そういえば、成人と一緒に公爵になるんだっけ?」
「まあ……そういうことになっているよ」
「嬉しくなさそうだな?」
そりゃあそうでしょ。
「もちろん。次の戦争の最高責任者だよ? 普通、十代の俺がやること?」
いくら人手不足だからだとしても、おかしくない?
頼りなさ過ぎるでしょ? まあ、皇帝は俺の名声でどうにか出来ると考えているんだろうけど。
「ああ……それは確かに嫌だな」
「でしょ? はあ、帰ったらまた仕事だ」
帰ったら、エルシーと会議だ。
「下手したら、この国で一番お前が忙しいかもな」
「間違いないよ……」
まあ、今は学校の準備が終わったからそこまでじゃないけどね。
ピークの時なんて、再生のスキルが無かったら確実倒れていたな。
「んなこと言うなって。俺が出来る限り助けてやっているだろ?」
ぽんっと肩に手を置かれて、振り返ると父さんがいた。
「父さん……」
「学校、もうすぐ始まるんだろ?」
「うん。二週間後。父さんのおかげで教師が集まって良かったよ。特に、魔法使いを派遣してくれてありがとう」
父さんがいなかったら、魔法コースだけ一年遅らせるしかなかった。
「なに。少しこっちにも魔法使いを分けて貰えるんだから、いいってことよ」
分けると言っても、一学年九十人中五人だからな……。
そんなの、全然父さんの利益にならない。
「魔法使いはどこも人手不足だからね。これから定期的に増えていくなら、むしろ安い初期投資だよ。それに、家族を助けるのは当然さ」
年に五人だよ? まあ、家族の為ってやつか……。
「そうだな。戦争の時は、最大限援助する」
「ありがとう……二人とも」
この恩は、何かで返さないといけないな。
「いいってことよ」
「それを兄さんが言う?」
「別にいいだろう? 俺だって、戦争の時は力を貸すぞ!」
「皇帝陛下をお守りしていなくても大丈夫なの?」
そうだよ。特殊部隊はその為の部隊だ。
西の戦争は囮かもしれないんだぞ?
「それはおじさんがいれば大丈夫さ。それにたぶん、俺と数人は戦争に参加するように陛下から直々に命令されると思うぞ」
本気か? おじさんがいたとしても、数で負けていたらどうするんだ?
「まあ、あいつ……おほん、陛下もレオのことを気にかけていたからな。出来る限りの支援をしたいんだろうよ」
うん……。これは感謝しておくべきか。
「感謝しないといけないな。戦争……その前に三国会議か……。王国がどんなことをしてくるのか最大限に注意しておかないと」
「そうだな。三国会議……平和に終わるといいんだがな」
「まあ、無理でしょ」
たぶん、派手に何かしてくると思うぞ。
それこそ、勇者の力を見せつけるくらいはしてくるはずだ。
「そうだろうな。でも、無理はするなよ? お前はまだまだ若い。だから、国に命を懸ける必要はない」
「わかっているよ。でも、守らないといけないモノはたくさんある。それこそ、命を懸けてもね」
この国には俺の守りたいモノがたくさんある。
だから、何があっても守ってみせるさ。
まあ、死ぬつもりはないけどね。
「そうか。お前も男だな。本当、もうすぐ十三の小僧だとは思えん」
まあ、中身は大人だし……。
「だな。あっちこっち女の子に手を出しているあたりも、とても純粋な少年とは思えないな」
まあ、中身は大人だし……? これは、大人かどうか関係なくないか?
「全く。フォースター家の男は皆、一途なんだよ?」
皆? まさか、じいちゃんは……ばあちゃんだけだ。父さんは……母さんだけだ。おじさんは……エリーゼさんだけだ。兄さん二人も……。
「お、俺だって……五途だし……」
五人だけを愛しているんだぞ!
「流石にその言葉は無理があるだろ」
「「ハハハ」」
「それじゃあ、俺はこの辺で帰らせて貰おうかな。やらないといけないこともあるし」
まだパーティーは終わっていないけど長くいると面倒なことに……。
ガシ!
ユニスさん、フィオナさんに挨拶してからリーナを連れて帰ろうなどと思っていると、頭をがっしりと捕まれた。
「あら、ちょっと待ちなさい。今日くらい仕事を休んでも大丈夫だわ。さっき、一段落したって言っていたじゃない」
「あれ? そんなこと言ったかな~。ちょっと俺、疲れているみたい。家に帰って休もうかな~」
「ふふ。それじゃあ、お母さんが可愛いレオを家で優しく癒してあげるわ。ちょ~っと、正座になって貰いますけど~」
「ハハ、ハハハ……」
はい。久しぶりに母親というものを実感させてもらいました。
実際ドラゴンに殺されかけたし、もう成人まで魔の森に行くのは我慢しないとな……。
それと、ベルの雇い主は俺じゃなくて母さんであることを忘れていました。
ベル、そういえばまだメイドを辞めていなかったのか……。