そもそも泊まるかどうかの判断も先延ばしにしてたので忘れていた。

「兄上が泊まった宿とか分かる? どうせなら同じ所がいいな。もしくはアレク、知ってる宿とかあったりする?」

「案内してもいいわよ。アレックスちゃんはどう?」

「私は知ってる宿などありませんのでお姉さんにお任せしたいと思います。」

こうして兄上が泊まったという宿に連れて行ってもらった。さて、空いてるかな?

到着。

「聞いてくるから待ってなさい。」

姉上が中に入っていった。

「残念、満室だわ。他に行きましょ。」

「じゃあどうせなら高い宿でお願い。アレクに相応しい宿をね。」

「全く……無駄遣いしてんじゃないわよ。まあその方が空いてそうだしね。」

「カース、私はどこでもいいのよ?」

実は私が泊まりたいだけだ。ノミのいる布団なんて嫌だからな。バランタウンの宿がそうだったのだ。見た目はきれいだが少しノミがいた。すぐ丸洗いして乾燥魔法で皆殺しにしてやったが。布団は傷んだだろうが知ったことではない。

歩くこと十分と少し。昼に食事をした通りに着いた。なるほど、やはり高級エリアなのか。

「ここなんてどう?」

外見からは分からないが言われてみれば上品さが漂っている。看板は『辺境の一番亭』、宿っぽくないけど、他の宿もそうだしな。

「聞いてくるわ。待ってなさい。」

それにしても姉上の面倒見の良さに驚きだ。結構嬉しい。

「大部屋が空いてたわ。何人でも一泊金貨十枚よ。」

マジかよ……恐ろしく高い……

まあいい。これも勉強だ。

「了解。それなら姉上も泊まっていかない? たまにはいいんじゃない?」

「残念ね。無断外泊は厳禁なの。破ると大変なことになるわ。前日までに届けが要るのよね。」

「それは残念だね。明日はどうする?」

「それもだめなの。予定が入ってるわ。」

「分かった。今日はありがとね。明日の昼過ぎには領都を出ると思うから。あ、これお土産。」

そう言って魔力庫からエビルパイソンロードの皮を取り出す。

しまった。どうやって切ろう……

「これを使って。」

アレクが魔力庫からナイフを取り出した。業物のような雰囲気が漂っている。呪われてないだろうな?

「さすがアレク、いいナイフを持ってるね。」

「何言ってるのよ。カースがくれたのよ。サウザンドミヅチの牙。」

そうだった。それからナイフを作ったのか。こんな業物になるとは。では早速……

すごい……私程度の腕なのに剃刀ように切れる。エビルパイソンロードだぞ? 恐ろしい……

コート三、四人分ぐらいの皮を切り分け姉上に渡す。

「ありがとう。とんでもない名前が出てきたけど面倒だから気にしないわ。」

「兄上とお揃いでコートでも作るといいと思うよ。オディ兄にはトビクラーでコートを作る予定だし。」

「カースが弟でよかったわ。今度来たら面白い魔法を教えてあげるわ。アレックスちゃんもまたね。私、年の近い妹が欲しかったの。オディロンは弟だし馬鹿だし。」

「そんな……妹だなんて……私とカースはまだ……そんな……」

「アレクは姉上そっくりだよね。じゃあまた焼肉行こうね。」

宿の前で皮を出したり切ったりしたので少し注目されてしまった。早く入ろう。