すっきりした所でデートを始めようとしたのに姉上が……

「待ちなさいよ。自分の用が済んだら『はいさよなら』とはいかないわよ? ちょうどお昼時だし何かご馳走しなさい。それで勘弁してあげるわ。」

ちゃっかりしてるなーこの姉は。貴族らしくないぞ。

「いいよ。どこがいい? 任せるよ。」

「ふふふ、ベイルリパースよ! 行ってみたかったの。アンタお金あるんでしょうね?」

「えーまたー? 昨日も行ったのに。まあいいけど。」

「くっ、生意気な奴ね……」

「ところで、僕はあんまりお腹すいてないけどアレクとソルダーヌちゃんは?」

「私はさっき食べたからあんまり……」

「私もさすがに食欲がないわ……」

そりゃそうだよな。そもそもソルダーヌちゃんは朝から食欲が無さそうだったし。

「くっ、私だけだと食べにくいじゃない。仕方ないわね。今日のところは勘弁してあげるわ。いいわよいいわよ、そこら辺の男に奢らせるんだから。」

おや? 兄上一筋ではないのか? まあいいや。

「じゃあ姉上またね。次はアレクの引越しで来るから姉上とは入れ違いかもね。」

「ソルもまたね。私は何とも思ってないから気にしないでね。」

「私を王都まで乗せて行きなさいよ。」

「ありがとう。絶対また来てね。待ってるから!」

姉上のセリフを聞いたソルダーヌちゃんが不思議そうな顔をしていたが、教えてやらない。内緒にするほどではないけど勿体振ってるだけだ。

それにしてもやっと二人になれた。やはり上級貴族なんぞと付き合うもんじゃないね。アレクはいいけど。

「さーてあちこち歩いてみようか。今からが本当のデートだね!」

「うんっ!」

こうして私達はバイロの日の昼下がり、腕と腕を絡ませて仲良く領都を散策した。例の二人には会わなかった。これもお約束なのだろうか。

今回のアレクの服装は刺激的だからな。あいつらがこれを見たらトチ狂ってしまうかも知れない。

特にミニスカートと膝下まである少し長いブーツの相性が素晴らしい。しかしその綺麗な生足を拝むにはド派手な真紅のコートを脱がすか揺らすかしかない。まったく、十歳なのに悪い女だ。

「ねぇカース、いつもより見られてる気がするの。少し恥ずかしいわ。」

「それは仕方ないよ。アレクが魅力的なんだから。それって『美人税』って言うらしいよ。」

「そ、そうなのね…….//」

モジモジするアレクも堪らんな。夏にはどんな服を着てもらおうかな?

はっ!? 水着だ!

アレクサンドル家の令嬢が率先して水着を着れば必ず流行る! そして布の面積が小さいことがステータスって文化を作れるのではないか?

例えば平民は湯浴み着程度の露出しか許さないって布告を出した上で……

下級貴族で旧スクール水着程度。

下級の上位から上級下位でハイレグ。

上級貴族ならビキニ、アレクほどの最上級貴族ならTバックで悠々と泳いで見せる!

そして王族だけは全裸!もしくはトップレス!で優雅に泳ぐことが許される!

王族以外が全裸で泳いだら奴隷落ち!

そんな風潮を作れないものだろうか。貴族の発言力が強いこの国ならできそうな気がするぞ。

これはファンタジーあるあるの内政チートに該当するのだろうか? それともリバーシを流行らせて大儲けの方だろうか? 儲ける気はないんだが。

そんな下らないことを考えながらもアレクとのお喋りは欠かさない。紳士だからな。

そして時刻は三時過ぎ。そろそろ小腹が空いてくる頃だ。おやつの時間だ。新しい店を開拓したいな。