サラスヴァの日、王都にて。

サンドラは先週丸々学校をサボってしまったためヴァルの日から寮へと戻り学校へ通っている。

スティードは学校を休まざるを得ないため、アイリーンとともに無尽流や破極流の道場で汗を流している。

アレクサンドリーネはシャルロットに連れられて王都の魔法学校に通っている。体験入学扱いだ。ちなみにシャルロットの予備の制服を借りているのだが、胸がきついようだ。

アレクサンドリーネは三年生だが、シャルロットと同じ五年生の授業を受けている。ほとんどの生徒に魔力では勝っているものの、さすがに知識では劣る。いい勉強になりそうだ。

そして昼休み。

シャルロットの友人達を交えての昼食。貴族学校と違ってテラス席などの施設はない。食堂があるのみだ。

「さすがねアレックスちゃん。三年生なのによく付いてこれるわ。」

「いえ、聞いてるだけです。とても理解したとは言えないと思います。」

「お昼からは実技の授業ですし、アレックスさんの腕の見せどころですわね」

「そうですわ。王国一武闘会の準優勝ですもの。楽しみですわ」

「シャルロットさんとの対戦もなさるのでしょう? 勉強させていただきますわ」

「私も勉強させてもらうわ。魔力ではまだ勝ってるけど、一撃の威力では負けてるもの。アレックスちゃんは大会では力押しが目立ったけど、本当は精密制御も得意よね。」

「魔力で劣るからには他で勝負するしかないもので。」

「まあ! 劣るだなんて! 軽く私の五倍はありますのに」

「溜めも詠唱もなしに立て続けの上級魔法連発にはシビれましたわ」

「私はそれよりも炎の中から生還したところで鳥肌が立ちましたわ。あれってドラゴンブレス並みの火力なんでしょう? よく生還されましたわ」

「生き残ったアレックスちゃんも凄いけど、カースもカースよね。あれで火球(ひのたま)だなんて。あいつが豪炎を使ったらどうなってしまうのかしら?」

「カースのお陰でもあるんです。あの時の赤いコート、あれが無かったら耐えきれませんでした。」

「じゃあカースさんからの贈り物? トビクラーですわよね。さすがですわ」

「ドラゴンブレスにも一撃だけ耐えられるというのも本当なんですのね」

「あの時のミニスカートもよくお似合いでしたわ。カースさんと二人してオシャレさんなのね」

シャルロットとしては、アレクサンドリーネに対して妬ましい気持ちはあるが、殺してまでカースを得たいとは思っていない。むしろ妹として可愛く思う気持ちの方が強い。

姉、アンリエットは恋敵であるエリザベスを殺してまでウリエンを手に入れる覚悟があるようだが、シャルロットにはない。人間としては美徳だが貴族としては甘いと言わざるを得ない。

そんなシャルロットのお陰もあり、カースがいない日々をそれなりに過ごすことができていた。

そして午後は実技の授業。

教師の判断で対戦相手が決まる。ルールは単純、王国共通、いつもの魔法対戦ルールだ。

「まずはお手本を。ゼマティスさんとアレクサンドルさん。いきましょう!」

早速注目のカードだ。

「勝負あり。うーん、三年生にはきつかったのかな? では次は…………」

アレクサンドリーネは意外にもあっさり負けてしまった。一体なぜ?

「アレックスちゃん……元気がないわね。無理もないけど。」

「お姉様……こんなことではカースに笑われてしまうのは分かるんです。でも……」

「意外に脆いのね。もしカースが帰って来なかったらどうするの? 泣いて暮らす?」

「お姉様! 聞き捨てなりませんわ……」

「ならどうする? 続きをやる?」

「カースは絶対帰って来ます! 来なかったら迎えに行けばいいだけです!」

「ここからクタナツまで? どうやって行くの? 一ヶ月はかかるわね。」

「一ヶ月で着くなら軽いものです! カースのためならいくらでも歩いてみせます!」

「ふーん。そう。それならカースが帰って来なくても問題ないわね。」

「絶対帰って来ます! 私が待ってるんだから! もう一勝負しますよ!」

少なくとも表面上は元気になったようだ。シャルロットもたまには年上らしいところを見せるものである。