アレクの魔力が尽きたことだし、貴族学校に行ってみよう。白い奴らはまだまだ押し寄せて来るが、そもそもなんで私が王都を守ってんだよ。これだけで表彰もんだよな。

「よし、アレク乗って。ソルダーヌちゃんのところに顔を出してみるよ。」

「ええ、不甲斐なくてごめんなさい。」

「いやいや、あれだけ活躍したんだから無理もないよ。さあ行こう。」

広い王都も飛んで行けば近いものだ。いきなり屋上へ着陸。やはりこの学校も周囲を白い奴らに囲まれていた。

そして屋上には誰もいない。奴らを食い止めているのだろうか。

「ソルダーヌちゃん達はここを拠点にしてたんだけど、誰もいないね。」

「パスカル君もいたのね。みんな校舎内で戦っているのかしら……」

「きっとそうだろうね。それだったら僕達も行ってみよう。気を付けようね。」

「ええ、この短剣で戦うわ。」

貴族なら魔力がなくなろうが戦わなければならない時がある。それが今、とは思えないがアレクの好きにさせよう。私の側にいる限り守るしね。

さて、屋上から校舎内に入り込む。階段を降り、音がする方へと進んでいく。屋上から意外と近い、つまり押し込まれているってことか。

角を一つ曲がると、なかなかの激戦が行われていた。どれ、助けてやるか。

『麻痺』

これなら少々学生達を巻き込んだって構うことはない。そして『浮身』

麻痺に巻き込まれた学生は親切にも後方へ運んであげよう。なお、麻痺している狂信者はアレクが短剣でトドメを刺している。偉い!

「あ、ああ、魔王、さん?」

「まさか助けに!?」

「ああっ女神様もいるぞ!」

「ソルはどこにいるの?」

返り血で顔を少し赤くしたアレクが問いかける。学生さんは少しビビってるな。それより私は『さん』でアレクは『様』なのか。アレクの高貴なオーラなら当然だな。

「ソ、ソルダーヌ様ならあっちです。あちらからの攻撃を防いでおられます!」

「そう、ありがとう。カース、ここは私に任せて。ソルをお願い。」

「分かったよ。おいお前ら。アレクの言うことはきっちり聞けよ。そしたら生き残れるからな。分かったな?」

「は、はい!」

「はいっ!」

「は、はは、はいぃ!」

「じゃあアレク、無理したらダメだよ?」

「ええ、ソルを頼むわね。」

身体強化の魔法を使って駆け出す私。アレクに頼りにされるとフェルナンド先生にすら勝てそうな気分になる。錯覚だけど。

一分ほど走ると、また騒がしい音が聞こえてきた。ここか。

「ソルダーヌちゃん! いるかい!?」

「カース君! 来てくれたの! 助かったわ! みんな! 下がりなさい! カース君に場所を開けるのよ!」

波が引くように学生達が戦いをやめて下がっていく。わずかなスペースを空けて白い奴らが追いすがってくる。させねーよ『氷壁』

そして『狙撃』私の氷壁ごと貫いて打ち込んでやった。ひとまず全滅。

「ソルダーヌちゃん、あっちにアレクも来てるよ。ここはもういいから、みんなで合流して屋上を守ってて。」

「アレックスも……ありがとう。じゃあ頼んだわ! みんな戻るわよ!」

ソルダーヌちゃんを先頭に誰一人いなくなった。エイミーちゃんは何とも言えない表情で私を一瞥していった。パスカル君達は何の心配もしてないようだ。後は任せたって顔をしてたな。

さて、私の後ろを分厚い氷壁で封印しておこう。これで誰も通れまい。このまま出会うに任せて全滅させてやる。それにしてもホントに何考えてんだ? 目的が分からなすぎる。見た感じ白い鎧の奴らはいない。貴族学校だから舐めてるんだろうか。そうなると騎士学校や士官学校、そして近衛学院、魔法学校や魔法学院には凄腕が行ってるのだろうか? まあ知り合いはいないからいいかな。

結局あれから歩いて正門まで到着してしまった。正門周辺に集まっていた白い奴らも全滅させたし、今は焼いてる最中だ。校門丸ごと焼いてるので誰も入れない。まさにファイヤーウォールだ。一旦屋上に戻ってみるかな。

「ただいま。無事だね?」

「おかえりなさい。この子達がしっかり動いてくれたから無傷よ。」

さすがアレク。初対面の男の子だろうと手足のように使いこなしたのか。

「お前らよくやったな。褒美だ。」

この三人に金貨を一枚ずつプレゼント。アレクが無傷で嬉しいもんな。

「は、はへ?」

「へ、へい!」

「ど、どうもす!」

これはいわゆるテンパってる状態か? 貴族らしくない言葉使いだな。

「カース君、おかえり。また助けてもらっちゃったわね。」

「やあ、無事で何よりだよ。人数も減ってないようだし。」

「ええ、うちの上屋敷まで行ってくれたんですってね。色々ありがとう。」

「中を全部見たわけじゃないから、まだ全滅とは限らないんだよね。落ち着いたら連れてってあげるよ。」

「ソル、むしろ屋上で籠城するより全員で上屋敷に行った方が守りやすいんじゃない? 条件次第だけど。」

「そうね。ここだといくつか通路があるからどうしても人手が分散してしまうものね。ここからうちまでは全力で走って二十分程度。悪い選択じゃないわね。」

「判断は任せるわ。ソルも大変よね。」

「その分あとでカース君に甘えさせてもらうからいいわよ。いいわよね?」

「少しだけよ?」

私を置いてそんな話になっている。具体的にどう甘えるのかは知らないが、ソルダーヌちゃんが死ぬよりはいいかな。

「そうと決まれば、みんな! うちの上屋敷まで走るわよ! カース君、護衛をお願いできるかしら?」

「いいよ。今なら少しは安全だと思うしね。」

さっきまで辺境伯家の周辺でだいぶ駆除してたもんな。

「一応確認するわよ。うちの上屋敷に行くのに反対の人はいる?」

「僕は反対です! こんな卑劣な魔王の言うことなんか信用できません!」

「僕もです。移動のリスクを考えたらここの方が安全ではないでしょうか。」

「あの、わ、私も、外を歩くのは、怖いです……」

結局反対派が過半数か。ソルダーヌちゃんに絶対服従ってわけでもないのか。人をまとめるって大変だよなー。まあ私はどっちでもいいし。そろそろ昼か。お腹空いたな。

「ここに留まるのは構わないけど、助けなんか来ないわよ? 多分ね。」

おっと、アレクは辛辣だな。私もそう思うけど。

「何か確信があるの?」

「ええ、さっきカースと王城まで行ってきたの。結界魔方陣で覆われていたわ。あの陛下が王都民を見捨てて自分達だけを守ろうとするなんてあり得ないわ。」

「つまり……それほどの状況ってことね?」

「ええ、そうだと思うわ。それに、いくら何でも騎士団の動きが悪すぎるもの。」

アレクの話を聞くにつれ「勝手なこと言うな」「根拠あるのか」「魔王の伴侶なんか信用できるか」なんてほざいてた野次も聞こえなくなり、静寂に包まれてしまった。そりゃ助けが来るまでの辛抱だって耐えていたんだもんな。貴族のぼっちゃん嬢ちゃんには辛いよな。さあ、ソルダーヌちゃんはどうするんだ?