母上達は起きてた。食事中か。

「ただいま。知らせることがあって帰ってきたよ。」

「おはよう。何事かしら?」

おっ、今日の母上は顔色がいいな。よく眠れたのかな。よかった。逆にアステロイドさん達は疲れが抜けてないって顔だな。いきなり王都にまで来たんだから無理もないよな。

そして見たままを説明する。

「そう……全く意味が分からないわね……でもそんなことが起こってるのなら、騎士団が鎮圧に乗り出さない理由も見えてくるわね。お義姉さんはどう思います?」

「結界魔方陣は王城を守るためではなく、いずれかの騎士団を城下に出さないため。王宮は王宮で別の争いが起こっている……かしら?」

なるほど。そんなこともあり得るのか。やはり報告し、判断を仰いで正解だったな。

「それだと王城を囲む結界魔方陣が切れるタイミングで攻め込むなり、外に出るなりしないものかな?」

確か一日で切れるんだよな?

「王城の結界魔方陣は特別製よ。陛下のご意向がない限り一ヶ月は継続できるわ。」

さすが母上。そっち方面にも詳しいのか。

「じゃあ僕達としては出来ることなんかないよね? 外の狂信者でも掃除してようかな。」

「そうね。そんなところかしら。ここの守りは私やアステロイド達がいるから何の心配もいらないわ。好きに動きなさい。」

アステロイドさん達も頷いている。かなり頼もしい。好きにしよう。

気になるとすれば王妃ぐらいか。国王や王太子はかなり強いし、近衛騎士団はきっと国王側だろう。王妃もたぶん強いのだろうが……少し心配かな。

「じゃあ行ってくるね。白や紫の鎧には気をつけてね。母上なら問題ないとは思うけど。」

「ええ、行ってらっしゃい。」

ちなみに昨夜母上が捕らえた男エルフは、同じ場所から全く動いてなかった。こいつもあの女エルフもこのままだと餓死かな。別にいいけど。

「よーしアレク。上空から白い奴らを探そう! アレクの遠見が頼りだよ。」

「ええ、任せて! 間違いがないかしっかり見るわね。」

あぁ、一般市民があの服を着てるかも知れないのか。奴らに紛れて生き残るためにね。まあ誤射したらそんな服着てる奴が悪いってことで。こんな時なんだから。

昼までに約千人は片付けた。死体は放置してるが、そんなの王都民で処分してくれって話だよな。そのぐらいやってくれないとね。

しかし、紫はおろか白い鎧に一度も出会わなかった。どこに潜んでやがるんだ……

あいつらや幹部を始末しないといつまでも終わらない。エルフどもはその辺りの情報を何も持ってなかったもんな。自分達は好き勝手遊んでさ、後は野となれ山となれかよ。

「そろそろお昼にしようか。教団跡地に行くよ。」

「ええいいわよ。何をするの?」

「あそこで煮炊きしてたら生き残った白い奴らが集まって来ないかと思ってさ。派手に燃やすよ。」

それにしてもあそこの地下深くには、今も総代教主がいるのか。少し可哀想だな。どうにか殺してやりたいものだが。それにもし、あの猛毒が地下水脈とかに漏れたら大惨事だ。まあ、私の手に負える話じゃないけどね。

さて、少し面倒だがオークを解体しよう。そしてミスリルギロチン焼きだ。適当に魚や貝類、海鼠も焼いて食べよう。その間に教団の廃墟は全て燃やす。岩や石の部分はすでに溶岩と化し、それ以外の燃える部材は煙を上げて燃えている。巨大なキャンプファイヤーを見ながらの昼食、バーベキュー。乙なものだな。ついでに火の中にオークを何匹かぶち込んでおこう。香ばしい匂いに腹を空かせた狂信者が寄って来ないだろうか。

寄って来なかった。

「美味しかったね。お腹いっぱいだよ。」

「ええ、御馳走様。美味しかったわ。」

「ピュイピュイ」

「じゃあ昼からだけど、役割を交代しようか。僕が遠見で探すから、アレクは氷弾で狙ってみてよ。遠くから狙うのって結構難しいから頑張ってみて。」

「ええ、やってみるわ!」

私は遠見が苦手でアレクは遠距離射撃が苦手。お互い苦手を克服するチャンスだ。

昼からも鎧の奴らは現れない、見つからない。どこに潜んでやがる……

結局追加で五百人程度仕止めただけで終わった。ゼマティス家に寄って母上に報告してから辺境伯家上屋敷に戻るとしよう。

そのうち盗賊まで襲ってくるのか……

ところで他の貴族家は大丈夫なのか? ゼマティス家や辺境伯家でさえこれほど苦戦してるのに。捕らえた男女エルフが軒並み正門や玄関を破壊して回ってたわけだしな。こんな奴らでもエルフの長老並みの魔力か。

待てよ?

それならこいつらを餓死させるのはもったいないか? 私の奴隷として使ってやるべきか?

よし、そうしよう。明日、母上に相談だな。明日ならまだ生きてるだろうし。