「ウォーレン、エルギンの旧友から手紙が届いたぞ」

「確か、冒険者ギルドのギルドマスターをしておいででしたね」

「あぁ。既に知ってる事も多かったが……読んで見ろ」

「私信でしょうに……いいんですか?」

「構わん。感想が聞きたい」

「では、失礼して」

一礼してローバー将軍から手紙を受け取り読み進めていたウォーレン卿であったが、ある件(くだり)で僅かに眉根を寄せる。

「行商人がドラゴンに追いかけられたという話は初耳でしたね」

「ああ、それも面白い内容だったな」

「小麦の話も興味深く読ませてもらいましたが……やはり気になるのはミルド神教の礼拝所の件ですね」

「見習い神官の人相風体の件(くだり)を読んだか?」

「年齢、背格好、髪と目の色、全てが彼(か)の亡命者殿に一致しますね」

「見過ごすわけにはいかんが……誰か人を遣(や)って確認してから報告するか、それとも先に上に報告するか」

ウォーレン卿はしばし考え込んだ後で決断する。

「先に上に話を通しましょう。Ⅹを刺激する可能性のある事を、第一大隊(うち)だけの判断で行なうのは拙(まず)いです」

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「今頃になってその話が出てくるとはの……」

「正直、忘れかけておりましたな……」

軍人たちから報告を受けた国王と宰相は、揃ってうんざりしたような声を出す。

「まだクロと決まったわけじゃありませんがね」

「で、どうするかという話なんですが」

ウォーレン卿の問いかけに、困惑したような表情を示す要人二人。

「放置しておくわけにもいくまいが……」

「ウォーレン卿の言うとおり、徒(いたずら)にⅩを刺激せぬようにせねば……」

「とりあえず、見習い神官って坊やの顔でも拝んどきますか」

「そうじゃな……それくらいなら問題ないであろう」

「それでも一応、私服で行かせた方がよいであろうな」

「では、そのように」

こうしていつもの二人組、ダールとクルシャンクのエルギン派遣が決定した。