Dungeons for the Devil, Dungeons for the Core (Book Version Title: A Different World Dungeon Made with the Devil)
Chapter 61: Elgin 3. Wangdu Illustria
「ウォーレン、エルギンの旧友から手紙が届いたぞ」
「確か、冒険者ギルドのギルドマスターをしておいででしたね」
「あぁ。既に知ってる事も多かったが……読んで見ろ」
「私信でしょうに……いいんですか?」
「構わん。感想が聞きたい」
「では、失礼して」
一礼してローバー将軍から手紙を受け取り読み進めていたウォーレン卿であったが、ある件(くだり)で僅かに眉根を寄せる。
「行商人がドラゴンに追いかけられたという話は初耳でしたね」
「ああ、それも面白い内容だったな」
「小麦の話も興味深く読ませてもらいましたが……やはり気になるのはミルド神教の礼拝所の件ですね」
「見習い神官の人相風体の件(くだり)を読んだか?」
「年齢、背格好、髪と目の色、全てが彼(か)の亡命者殿に一致しますね」
「見過ごすわけにはいかんが……誰か人を遣(や)って確認してから報告するか、それとも先に上に報告するか」
ウォーレン卿はしばし考え込んだ後で決断する。
「先に上に話を通しましょう。Ⅹを刺激する可能性のある事を、第一大隊(うち)だけの判断で行なうのは拙(まず)いです」
・・・・・・・・
「今頃になってその話が出てくるとはの……」
「正直、忘れかけておりましたな……」
軍人たちから報告を受けた国王と宰相は、揃ってうんざりしたような声を出す。
「まだクロと決まったわけじゃありませんがね」
「で、どうするかという話なんですが」
ウォーレン卿の問いかけに、困惑したような表情を示す要人二人。
「放置しておくわけにもいくまいが……」
「ウォーレン卿の言うとおり、徒(いたずら)にⅩを刺激せぬようにせねば……」
「とりあえず、見習い神官って坊やの顔でも拝んどきますか」
「そうじゃな……それくらいなら問題ないであろう」
「それでも一応、私服で行かせた方がよいであろうな」
「では、そのように」
こうしていつもの二人組、ダールとクルシャンクのエルギン派遣が決定した。