Ee, Teni Shippai? Seikou?

4 stories Minori, to different worlds

アラーナ、実里との3Pを終えたあと、翌朝最初に目覚めたのは陽一だった。

リビングに充満するなんとも言えぬ匂いと、相変わらず抱き合って眠る二人の美女にムラムラと来たが、そこはグッとこらえて1人でシャワーを浴びた。

陽一がシャワーからあがると、アラーナと実里も起きていた。

(あ、なんか可愛いかも……)

寝ぼけ眼で身を起こして毛布にくるまっている身を寄せ合う2人の姿に、陽一は思わず頬を緩めてしまった。

「ヨーイチ殿、おはよう」

「おはようございます、陽一さん」

「うん、2人ともおはよう」

「ヨーイチ殿、その……」

アラーナが申し訳なさそうに口を開き、視線を落とす。

実里も同じような表情だった。

2人の視線の先には、ドロドロに汚れたソファとカーペットがあった。

「魔法を使えれば、私が綺麗にするのだが……」

「いいよいいよ。俺のスキルですぐ綺麗に出来るから。だから2人はシャワー浴びておいで」

陽一に促されたアラーナと実里は、ごく自然に2人揃ってバスルームに入っていった。

陽一はその間に、ソファや自分が着ていたガウン、アラーナの下着や実里のルームウェアを【無限収納】へ収納した。

「こりゃ、一旦全部入れたほうがいいな」

カーペットに付いたシミを見て、陽一がひとりごちる。

カーペットだけをサッと収納出来なくもないが、その後敷き直すのが面倒である。

なら、最初からテーブル等の家具類もろとも収納し、配置し直したほうがよさそうであった。

そのようにして、部屋を綺麗にし終えたあと、陽一は2人の着替えを脱衣所に置き、テレビをつけてぼーっとしていた。

トータル30分程度でアラーナと実里がバスルームから出てきた。

「あの、陽一さん……」

実里がドライヤーを手に、伺うような視線を陽一に向けながら、おずおずと歩み寄ってくる。

実里の意図を察した陽一は、彼女の手からドライヤーを受け取ると、ソファに座らせた。

新品のように綺麗になったソファを見て、実里は大きく目を見開いたが、特に何を言うでもなくソファに座る。

「わ、私も……」

2人の様子を見ていたアラーナが、陽一の方に擦り寄ってくる。

「いいよ。隣りに座って」

その言葉に嬉しそうな笑みを浮かべたアラーナは、実里の隣りに座った。

2人は互いに視線を交わした後、嬉しそうに微笑んでいた。

陽一はそんな2人の様子にほっこりしながらも、ドライヤーのスイッチを入れ、アラーナと実里の髪を乾かし始めた。

○●○●

「さて……。じゃあ、実里ちゃんを異世界に連れて行くかどうかだけど――」

シャワーを浴び、髪を乾かした3人はリビングでちょっとした会議を開いていた。

ソファにはアラーナと実里が並んで座り、それに向かい合うような形で陽一がアウトドア用の折りたたみ椅子に座っている。

折りたたみ椅子といっても、肘掛けやカップホルダーの付いたもので、下手な一人がけソファとくらべても遜色ない座り心地である。

陽一は黒地に青のラインが入ったジャージを、アラーナはグレー地にピンクのラインが入ったジャージを着ている。

アラーナが着ているジャージは、陽一が自分用にひと山いくらで買ったセール品の1つであり、メンズの物なので胸のあたりが少しキツそうであった。

実里は以前陽一とともにデパートで購入していた太いボーダーのゆったりとしたルームウェアを着ていた。

「あの……」

実里が遠慮がちに手を挙げる。

「ん? なに、実里ちゃん?」

「その……ちゃん付けは、必要ですか……?」

「はい?」

「アラーナは、呼び捨てなのに……」

実里は俯きがちにそう言いながらも、軽く口をとがらせていた。

「えっと、呼び捨てのほうがいいのかな?」

「ん、別に嫌ならいいですけど……」

実里は口をとがらせたまま陽一から目を逸らした。

「あー、じゃあ……実里……?」

実里が、バッと陽一の方を見る。

「……は、はい」

「おぅ……」

少し照れながらも嬉しそうな実里の笑顔に、陽一は思わず声を漏らしてしまった。

「ふふ……」

アラーナはその様子をニヤニヤと笑みを浮かべながら眺めていた。

「じゃあ、改めて……、実里、を異世界に連れて行くかどうかだけど」

「私は、行きたいです……」

「私としてはミサトの希望を叶えてやりたいな」

「そりゃ俺だって実里ちゃ――いや、実里、の意見を尊重したいけどさ。でもなぁ……」

陽一が実里とアラーナを交互に見る。

実里は不安げな視線を陽一に向け、アラーナはなにやら少し呆れたような表情を浮かべていた。

「ヨーイチ殿が何を心配しているのか知らんが、街中を歩くぐらいなら大した危険はないと思うぞ? 何もいきなりジャナの森へ行って魔物と戦う必要があるわけではないのだし」

「あー、言われてみればそれもそうか」

陽一は自分が初めて異世界を訪れたときのことを基準に考えていたようだった。

そしてアラーナを伴って異世界を訪れたときも、同じくジャナの森へ【帰還】したので、異世界に行くことが、すなわち魔物との戦いやサバイバルを耐え抜くということであると思いこんでしまっていたのだ。

「とりあえず宿屋に飛べば問題ないか。うん」

陽一は独り言のようにつぶやき、何度か頷くと、実里の方へと視線を向けた。

「じゃあ、朝ごはん食べたら異世界に行こうか」

その言葉に、実里の表情がぱぁっと明るくなる。

「はい……!!」

そして実里は笑顔で頷いた。

(ああ、この娘はこんな笑顔も出来るんだなぁ)

と、陽一は心の中でつぶやきながら、自分も微笑んでいることに気付いた。

○●○●

朝食は【無限収納】に保管していたサンドイッチで簡単に済ませ、各々身支度を整えた。

「ヨーイチ殿の服や防具も用意しなくてはならんなぁ」

陽一は南の街で購入した少しおとなし目のカジュアルな服装であり、ギリギリ異世界に馴染める格好である。

一応ローブを羽織ってごまかしているので、目立つと言うほどではない。

アラーナは鎧を陽一に預け、装飾のない七分袖のシャツにタイトなズボンという出で立ちだった。

「ミサトは……、まぁ問題ないかな」

実里は白いシャツにグレーの膝下丈のスカートを履き、薄手のカーディガンを羽織っていた。

「よし、じゃあ異世界に行くよ?」

アラーナは余裕の笑みをたたえていたが、実里は少し緊張しているようだった。

「大丈夫。一瞬で飛べるから」

陽一は不安げな様子を実里をなだめた。

実里は相変わらず緊張した面持ちだったが、陽一の言葉を受けて無言で頷いた。

陽一は改めて自分の左右に立つアラーナと実里を交互に見た後、腕を回して二人の腰を抱いた。

そして、異世界の宿屋『辺境のふるさと』を目指して【帰還】を発動した。

現代風のそこそこおしゃれで広いマンションから、突然古びた木造の狭い部屋に、景色が変わる。

「あ……え……?」

特に視界が暗転するようなこともなく、浮遊感のようなものを得ることもなく、一瞬でただ景色が変わったことに、実里はまず呆気にとられた。

「ようこそ異世界へ。っていっても、部屋の中じゃ実感ないかな?」

そう言って陽一は実里に視線を向けた。

「ん? 実里……?」

最初は驚いたような表情の実里だったが、やがてその顔から血の気が失せていくように見えた。

そして徐々に実里の息が荒くなっていく。

「あれ? 実里、どうしたの?」

実里は自身の胸に手を当て、呼吸を整えようとしたが、どんどん息が荒くなり表情が苦悶に歪んでいく。

「はぁ……はぁ……、うっ……」

そして実里は口元を押さえ、軽く身をかがめた。

「ミサト、トイレはそこだ」

「ごめ……ありがと……」

アラーナがトイレを指すと、実里は少しふらつきながらトイレへ駆け込み、嘔吐を始めた。

「え? 何……?」

実里の突然の体調不良におろおろとする陽一に対し、アラーナは落ち着いた様子だった。

「魔力酔いだな」

「魔力酔い?」

「ああ。魔力が原因で起こる体調不良の総称だ」

「魔力が原因の……?」

「多いのは、一気に魔力を消費したときに起こることかな。あとは、強い魔物の魔力に当てられた場合であるとか、魔力溜まりという極端に魔力濃度が高まる場所が時々あるのだが、そういう所に足を踏み入れると魔力酔いを起こすこともある」

心配そうな表情の陽一を安心させるように、アラーナは微笑む。

「ミサトの場合は魔力の全くない場所から、普通に魔力の満ちているこちらへ来たことが原因で起こったものだろう。心配せずとも、少し休めばすぐに回復する」

アラーナがそう言い終えた後、すぐにトイレを流す音が響いた。

そして、少しふらつきながらも顔色が良くなった実里がトイレから出てきた。

「実里、大丈夫!?」

陽一は実里に駆け寄り、優しく背中をさすった。

「はい、大丈夫です。ごめんなさい、心配かけて……」

呼吸の乱れが治まった実里が、改めて不思議そうに陽一の方を見た。

「あの、陽一さんは、平気なんですか?」

「いや、平気というかなんというか……」

「ふっふっ。ヨーイチ殿は魔力を一切感じることがないそうだ」

「え……?」

実里の陽一を見る目がわずかに見開かれる。

「うーん、実はそうなんだ……。っていうか、魔力ってどんな感じ?」

「どう、と言われても、言葉ではなんとも。とにかく、その……”ある”としか……」

実里は自分の周りを示すよう手を広げた。

「今も感じるわけ?」

「はい。これが魔力というのなら、感じてます」

陽一は何かを確認するようにあたりを見回すが、そんなことをしたところで魔力を感知することは出来なかった。

「なぁ、ヨーイチ殿」

「ん?」

「ミサトはこの空間にある魔力を感じることが出来るのだよなあ?」

「そうみたいだね」

「うん。たぶんこれが、魔力なんだと思う」

ミサトはか細いながらも確信を持った様子でそう呟いた。

「であればだ。ミサトは魔法を使えるのではないか?」

「「え……?」」

アラーナの言葉に、陽一と実里は大きく目を瞠った。