今まで見た事も無い程に真面目な顔で、自分に求婚をしてくるキースをアイシャは固まったまま見上げた。
その言葉はそれ程までに衝撃的で、アイシャを混乱させるものだった。
「結婚」それはアイシャが自分でキースに埋め込んだ設定だ。
だから、その言葉が出てくるのも不思議な話ではない。
しかし、アイシャは、まさかすぐにこんな状況で、それもあんな言葉と一緒にとは思わなかった。
「護衛騎士を辞めて欲しい」
アイシャにとっては一番恐ろしい言葉だった。
前なら、例え誰と一緒になったとしてもそれだけは絶対に出来ないと思っていた。
自分はどんな事が有ろうとナイアの為に生きて死ぬのだとそう決めていた。
なのに、近頃では、キースがもしそれを望んだら、キースがこの国を出て行くと言ったら。
護衛騎士を辞めてしまうかもしれない自分がいる事にアイシャは気付いてた。
でもそれは決して考えてはいけない事だった。
亡き父に言われた。
「一命を賭してお仕えするのが護衛騎士の役目だ。もし心に迷いが生じれば、それは護衛対象の命に係わる事になる。いいか、アイシャ。もしお前にナイア様よりも優先する相手が出来たなら、その時はすぐに護衛騎士を辞めなさい。それはお前の為ではないナイア様の為だ。いいな」
と云う言葉が、何度も蘇えって来る。
あの時は、決意を胸に、
「絶対に有り得ません!どの様な事があっても私にはナイア様が一番です!!」
言い切る事が出来たが、今は分からない。
分からないのだ。
アイシャは、だからその事を考えない様にした。
見て見ぬふりをする事に決めたのだ。それなのに。
「……アイシャ……いやか……俺と」
悲しげな顔になるキースにアイシャは反射的に「違う!」と叫びそうになった。
結婚したい。キースの赤ちゃんを産みたい。そう答えたかった。
けど、そう答えたら、それは護衛騎士を辞めると言う事にもなってしまう。
アイシャの心の奥で、「そう言えばいい」と誰かが囁いた。
これは所詮魔法で作られたキースなんだ。そう答えてしまっても時間が来れば大人のキースになる。
少年だからあんな事を言うんだ。大人に戻ればそんな事きっと言わない。だから今は頷いてやれ。
この愛しい恋人との時間をもっと楽しむ為、相手を喜ばせてもっと可愛がって貰う為に。
うんと言えばいい。
「……で……きない」
快楽とは違う涙に瞳を潤ませて、アイシャは首を横に小さく振った。
騎士として生きた30年が彼女の意思を支えていた。
「そ……う……」
彼女の返事に言葉を詰まらせるキースだったが、その中身は、
(へぇ、結構強情だね……さっすが俺のアイシャ。そうじゃなきゃ面白くない)
などと思っているまさにゴミ屑の様な男である。
キースは腰をぴったりと密着させて、アイシャにもっと自分を感じさせると、
「俺じゃ……ダメって事?」
子宮口に問いかける様にペニスの先端で突きながら声をかけた。
女として弱い部分を擦られてかけられた質問にアイシャは鳥肌を立てて答える。
「ちがう……わたし、キースのこと……あいしてる……けっこんしたい……でも」
「じゃあ、なんで?……なんでだよ……俺ちゃんと立派な魔導師になるよ。それでアイシャを」
「ううっ……わたし、騎士だから……騎士を辞めるんなんて……」
すすり泣くアイシャに、キースのおちんぽは膣内で更に硬くなった。
やっぱりアイシャはこの表情の時が一番エロいと思うのだ。
ついついニヤけてしまいそうになるのを堪えてキースは真面目な表情を保つと、
「俺より、騎士である事の方が大事って……そう言う意味?」
アイシャをとことん苛める言葉をかける。
それに対して褐色の女騎士はまるで少女の様にぐすぐすとしゃくりを上げた。
「ちが……う……うぐっ……ちがうけど、わかんないんだ……わたし、どうすればいいか」
今まで分かり易い生き方をしてきたアイシャである。
いつも明確に生きる道が見えていた。
剣の道に生まれ、父に教えを受け、騎士となり、ナイアを守って生きて来た。
けれど、キースが現れてからそれが全部狂ってしまった。
真っ直ぐしか歩いて来なかったアイシャには、曲がって枝分かれする道の歩き方が分からないのだ。
そうして泣き崩れるアイシャの膣は彼女の心と同調する様にきゅんきゅんと締まって纏わりつく。
蕩け顔で腰を動かしてしまいそうになったキースである。
(我慢だぞ!!もうちょっとの辛抱だオレ!!)
目の前で自分の言葉に悩み泣く可憐なエルフがいて、思う言葉がこれである。
本当にルーの弱さが悔やまれる。
呼吸を整え、ピストンを始めたくなる心を落ち着けて、キースはアイシャを抱き締めた。
繋がったまま、身体を更に密着させて、泣き続けるアイシャを優しく包み込む。
「ごめん、アイシャ……泣かせるつもりは無かったんだ……喜んで貰えるかなって、馬鹿だよな俺」
「きーす……きーすぅ!ううぁあ……や、やさしくしちゃだめだぁ……どうしていいかもっとわかんなくなるよぉ」
結婚したいと云う設定を埋め込んだのは自分だ。
そう思い込んでいるアイシャには、優しいキースの言葉が尚更につらかった。
自分が望む言葉をかけて貰って、こんな風にキースを困らせてしまっている。それがとても辛いのだ。
そして辛くなればなる程、今この瞬間だけでもキースのお嫁さんになりたい、護衛騎士は辞めると言いそうになる。
一度言ってしまえば取り返しのつかない言葉が口を割いて出そうになってしまう。
アイシャは唇を噛んで、その言葉が出てくるのを必死で防いでいた。
そんなアイシャに、キースは問いかける。
「おれと……結婚したいって気持ちは……あるの?」
小さく何度も頷く事でアイシャはそれに応えた。
「……でも、騎士である事も捨てれない?」
「ううぅ……どうしたら……どうしたらいいんだぁ……ああ……」
苦悩するアイシャにキースは悪い笑みを一瞬だけ浮かべると、身体を起こした。
起きた時にはもう顔は真面目な表情に戻っている。
「わかったよアイシャ……わかった……俺が、答えを作るよ」
「……え?」
言葉の意味が分からないまま、キースを涙目で見つめるアイシャは、自分の下腹部に彼の右手がそっと乗せられるのを感じた。
丁度二人が結合している部分の少し上。そこは子宮だった。
「排卵誘発魔法……かけるよ。それで、赤ちゃん作ろう」
短くて長い沈黙が訪れた。
キースの言葉を脳内で反芻したアイシャが、意味を理解した時、
「や……だめ……だめだキース!やめて!!やめてくれ!!」
身を捩って逃れようとした。
しかし、キースがそれを左手でアイシャの脚を捕まえる。
前にキースが冗談で言っていた排卵誘発魔法。あれを本気でかけようとしている。
そう思ったアイシャは、必死になってキースに願った。
「キース!!お願いだ!!やめてくれ!そんな……そんなぁっ!!」
「止めないよ!アイシャは俺の赤ちゃんを産むんだ!!それで、俺と結婚するんだ!!もう、悩む事なんてないんだ!!」
若さゆえの暴走を演出するキースである。
自分で言っていて笑いそうになる。何故なら勿論、そんな魔法をかける気なんて毛頭無いからだ。
それを知らないアイシャは首を横にぶんぶんと激しく振って、
「ダメなんだ!!キース聞いてくれ!!だって、お前はこれが覚めちゃったら……あああっ!!」
キースが魔力を手に集めてそれをアイシャに送り出す。
ただ魔力を流しているだけなのだが、その部分がほっこり温かくなるので、やられている方としては何か魔法をかけられている気になる。
アイシャはパニックになった。本当にこのままでは妊娠してしまう。
しかも、状況は最悪だ。キースは今、魔法にかかってアイシャと結婚したいと思い込んでいるのだ。
これが覚めて普通のキースに戻って、結婚なんて望んでないと言われたら……。
冗談で赤ちゃんが欲しいとは言われたし、恋人だとも言われたが、結婚の話は一度も出ていない。
そんな中で赤ちゃんなんて出来てしまったら、キースに言われる言葉が恐ろしくて、アイシャは鳥肌を立てた。
ナイアの護衛騎士であるアイシャが、未婚で、しかもハーフエルフを孕んだなんて事になれば。
「ああああ!!キース!!やめてぇええ!!これが終わったらお前はきっと……きっとぉ!!!」
「俺がきっとなんだよ……一時の気の迷いだとでも言うのか!?違うからな!!俺は!!俺はアイシャを本気で愛してる!!アイシャと、アイシャとの子供を!!一生守るから!!」
聞きたかった言葉だった。言って貰いたかった言葉だった。
この状況の中で、明確に示されたアイシャが最も求める道だった。
混乱の只中に居るアイシャには、その言葉に縋るしかなかった。
何故なら、子宮の温かさが限界にまで広がり、自分は今間違いなく孕む状態にあると感じたから。
そして、今のキースを拒む事なんて出来ない。
拒絶して、魔法が覚めた時、キースに「俺の事、愛してなかったんだな」と言われるだけは絶対に厭だったから。
だからアイシャは賭けた。この魔法が覚めても、キースが自分と、その子供を愛してくれる事を。
「……やくそくだぞ……きーす、やくそくだ……わ、わたしをはなさないでくれ」
「離さないよ……離すもんか!!だから言ってくれ……護衛騎士を辞めて、俺の赤ちゃんを産むって」
アイシャの抵抗が止んだ。その代りに求める様に腕が伸びる。
「産むぞ……キースの赤ちゃん……それで……ううっ……ううぁ……きし、やめる」
「あああ!!アイシャあああ!!」
伸びて来た手を握って、待ちに待ったキースはピストンを始める。
腰が待ち侘びていたのを晴らすかのようにガンガンとアイシャへ向けて突き出される。
(待たせやがってぇ!このこのっ!!魔力送っただけですっかり孕みまんこになってるくせにぃ!!)
騙されてすっかり受精状態になってしまった膣から子宮への道筋、そこを思いきり責め抜かれアイシャは悲鳴を上げた。
「うぁあああっ!!ううううぐうぅうう!!キース!き……ひぎゅうううっ!!あああっ!!きゃあうっ!!」
繋がったまま肉棒を感じ続けた膣肉は、感度を昂ぶらせ、削られるのを今か今かと待ち侘びていた。
そこに降りきった子宮が孕む準備が出来たと知らせ、その肉棒から子種を絞り出せと命じてしまう。
アイシャの膣内は完全に射精専用の雌器官と化してキースのおちんぽをトロ肉で絡め取る。
「んぁあああ!!きゃうう、うきゃあああ!!へんだ!!へんだぁ!!わ、わたしのなか!いつもより!!すごくなってるぅうう!!!ひゃああああっ!!」
膣のうねりと、降りきった子宮を突き上げられる内臓刺激、そしてまんこ全体がいつもよりも敏感に刺激を受けとめている。
それを持ち主であるアイシャ本人が感じない訳が無い。
排卵したと信じ込み、受精すると思い込んで、それを受け入れたアイシャの性器は今まで以上の快楽器官へと変容していた。
「うっ!!ああ、なかすごっ!!おおお!!絡み付きがっ!……うぉおおお!!」
粘性の高い愛液がピストンで泡立った白い淫水。それがおちんぽへ膣襞によって容赦なく塗りたくられる。
膣がおちんぽを扱くと云うよりも搾りとる様なきつい絡みつきを見せている。
その中を奥に向けて掻き進めるのは顔が歪む程に素晴らしい気持ち良さだった。
「アイシャ!!すごいよアイシャ!!アイシャのおまんこ、こんなに精子を求めてくれてるなんて!!!ああああっ!!」
本当に若い童貞小僧みたいになって腰をただ動かしそうになったキースは、必死に踏ん張ってそれに耐え、握ったアイシャの手に力を込める。
それに応える様にアイシャも手を握り、キースの腰に脚を回した。
苦痛一歩手前まで歪んで、歯を噛みしめるその表情にキースの嗜虐心は満たされる。
「アイシャ!アイシャの中、孕もうとしてる!!俺の精液吸い出そうとしてる!!気持ち良すぎるよ!!」
孕もうとしているのはアイシャであると云う様な物言いで、キースは報告した。
「あぎゅうう!!うあ!うあああっ!!こわいぃ!!こわいよキース!わたしのからだ!!んんんんっ!!んんぁああっ!!へんになってるぅうう!!ひぎゅうう!!」
「変じゃないよ!!変じゃない!!孕みまんこだ!!俺だけの子作りまんこになってるんだよ!!!ほらぁっ!!」
「うぎゅうう!!おくぅうう!!ないぞうおしゃれてるぅううう!!うみゃあああ!!きーしゅ!!だしゅけでぇ!!ごわいのに!!きもぢいがとまんにゃいぃいいいいいっ!!うぎょおおおっ!!!」
ピストンに合わせて揺れる乳房の頂点が、傍目に見ても分かるほど硬く勃起している。
褐色の膚に浮かせた汗をシーツにしみこませて、キースの言う孕みまんこになったアイシャは泣いたまま顔を蕩かせた。
「うびゃううううっ!!きもちいぃいい!!んあぁあぁあああ!!わたし!こんなのだめにゃのにぃいい!!だめにゃのにきもちくてぇええ!!!もっとほしいってなっちゃうぅっ!!!きーしゅううう!!!」
腰に巻き付いたアイシャの脚に力が増した。
それだけではない。アイシャの方からも腰がぐねぐねと動いて、もっと自分とキースの距離を近づけようとする。
その動きがおちんぽに角度をつけてアイシャの膣攻撃に色んなバリエーションを与える。
「はうっ!!!あううううっ!!んきゅううあああああ!!あ、あ、あおおお!!!きーしゅ!!らめになっちゃうぅ!!これらめになっちゃうやつだぞぉ!!んおおおおっ!!」
しかし、それはキースにしても同じで、雁首の擦れが急に亀頭先端になったり、そうかと思えば肉竿側面を擦られたりと色んな方向からの膣襞刺激に、流石に耐える事が出来なくなってきた。
金玉がぐんぐんせり上がり、白濁のマグマが棒の根元に渦巻いているのが分かるのだ。
「あ、アイシャ!!奥に出したい!絶対受精させたいからっ!!!」
そう言うと、キースはアイシャの手を離して、身体を前に倒して覆い被さり種付けプレスの体勢になった。
アイシャの腰の位置を持ち上げて変え、子宮までを血管浮きまくりの破裂直前おちんぽから一直線にすると、ひたすら激しく攻撃する。
だが腕はアイシャを抱き締め、唇は重ね合せるのを忘れない。
「ぷちゅれちゅ、んちゅぷ!ちゅうれろ……れるちゅ、んちゅうう!」
舌を舐めて、そこから唇、頬、耳朶まで舌を這わせたキースに、アイシャの顔は涎塗れになった。
耳朶を甘噛みしたキースは、そのままそっと、
「赤ちゃん欲しいってもっと言って?俺の赤ちゃん欲しいって。俺のザーメンで受精したいって。お願いアイシャ、はむちゅ」
囁いてまた耳を舐め続ける。
ヒト種よりもずっと敏感な尖った耳をてろてろと舐められて、アイシャは膣を凶暴に責められるのと、優しい抱擁と耳舐めに頭を霞ませた。
「んぐ!!!んぎゅううう!!やっ!!!あああ、うあああ!!あかちゃんんん!!きーしゅのあかちゃんっ!!じゅせーしゅる!!ほしぃいからぁ!!ああ、だから!!きーしゅもわたしをはなすなぁっ!!うううああああっ!!」
アイシャが身体全体でキースにしがみ付いた。
しがみ付いたまま、
「んぐうううっ!!!いぃいいいっ!!うああああ、らめらぁあああ!!イくの!!がまんできないぃいいい!!!んおうううううっ!!!イうぎぃいっ!!」
大きく吠え声を上げて絶頂を迎えた。
果てるのを知らせる痙攣膣内を遠慮なく掻き毟るキースも、その凶悪な締め付けに、
「ふぐぃいい!!おおおおっ!!!で……っくぅうう!!ああああ!!!この射精はっ!!!ヤバいってぇええ!!こおおおっ!!」
アイシャに全体重をかけながら開いた赤ちゃん部屋に向けて雄の種を植え付けた。
どびゅば!!どびゅううう!!と音が聞こえそうなほど一度に大量の塊を発射して、キースはその射精快感に鳥肌を立てた。
一方、熱い塊を子宮に受けたアイシャは、自分のしでかした事に吐き気さえ感じながら、
「あ……あぁあ……しゅごいりょうらぞ……ぜ、ぜったいれきちゃう……ふぅうっ……あかちゃんがぁ……あああ」
絶望感と共に、何故かほのかに望んでいた事が叶う喜びも湧いてきて、どちらか判別の付かないままキースに抱き付いて泣いていた。
しかし、それでいじめを止める様なキースではない。
若いおちんぽがまだ勃起したままである事を確認すると、覆い被さったままの状態で身体を揺すり始めた。
それがピストンの予備動作だと分かったアイシャは、自分の上に居る男に呂律の回らない口で問いかけた。
「きーしゅ……らに?らにしゅるんだぁ……?」
「決まってるだろ?一度じゃ足りないかもしれないから、このままもう一回……出すんだよ。精液……アイシャの中、気持ちいからさ、いけるよ」
「あ、ああ、しょんな……やめへ……い、いまので、わたしぃ」
「俺とアイシャの子供、どんなハーフエルフになるかな?アイシャに似てるといいな、そしたらきっと可愛いよ」
わざと現実味を持たせるような事を言って絶望感を煽る。
イったばかりの膣肉が、アイシャの心に反応して震えるのがキースには分かった。
(おおお!!ぴくぴくしとる!!射精直後の亀頭にこれはキクーーーっ!!孕みまんこ最高っ!!)
ずちゅずちゅと自分の出したザーメンに溢れる膣を掻き乱すキースは、アイシャ虐めを楽しみ続けた。
時間が来るまでずっと。心と身体を虐め続けたのだった。
§§§
眠りから覚めた時、アイシャは何も出来ずキースの腕の中に居た。
若いキースだった。
けれどもう魔法は覚めてしまっているだろう。
起きた時に何と言われるか想像すると、アイシャは怖くて泣きそうになった。
結婚なんてする気はない。あんな設定を埋め込んだアイシャが悪いんだ。
そう言われたら、自分はどうなってしまうだろう。
いや、問題は自分の事じゃない。このお腹にいる筈の子供の事だ。
アイシャは下腹部をそっと撫でながら、
「……だいじょうぶだ……わ、わたしひとりだって……ううっ……だいじょうぶだからな」
いると思い込んでいる受精卵にずっと語りかけた。
すると、その声にキースが目を覚ました。アイシャの顔が固まってしまう。
薄らと目を開けたキースは腕の中のアイシャに笑いかけると、はっとした顔をして起き上がった。
そして褐色の美女を見下ろし、急いで下腹部に手を当てた。
「き、キース?」
突然の行動に戸惑うアイシャに真面目な顔のキースは、じっと黙って手を当てていたが、やがて柔らかくほっとした様に微笑んだ。
「よかった……アイシャ、魔法失敗してます。排卵してません」
「…………え?」
その言葉に、アイシャの思考は停止した。
「アイシャ!大丈夫ですか!?」
「ど……いう、意味だ?」
のろのろと自分も起き上がってアイシャはキースに問いかけた。
「肉体操作の魔法は結構魔力がいるんです。でもこの姿の俺にそこまでの魔力は出せないんですよ……だから若しかしたらって……いや、良かったですね」
途端にアイシャはガクッと崩れ落ちそうになった。キースが慌ててその身体を支えた。
していない。妊娠していない。
「あ……うぁ……」
嬉しい筈なのに、どうしてだか、とてつもない喪失感があって、アイシャは胸を掻き毟られる思いがした。
それがどういう気持ちでどうしてそうなるのか、分かるけど、考えたくなくて、だからアイシャはキースにしがみついて泣いた。
声を殺して泣くアイシャにキースはそっと腕を回すと、優しく語りかける。
「……でも、ちょっと残念ですよね」
「う……ぁ?……え?」
「俺とアイシャの赤ちゃん……見てみたかったです。そしたら……ちゃんと結婚申し込めたのにな」
「う……あ……ああ!あああ!!きーすぅっ!!!きーすぅううう!!ああああっ!!!」
何よりも、どんな言葉よりも求めていた事を言って貰えて、アイシャは喜びに我を失った様に泣き喚いた。
キースはやっぱり自分を大切にして求めてくれていた。それはあんな魔法なんか使わなくたってそうなんだ。
嬉しくて、嬉しくて堪らなくて。アイシャはキースにキスをした。
そのままキースを押し倒して何度も何度も唇を奪った。
「きーす!!きーす!!わたし、おまえさえいればいいぞ!!おまえだけいればいい!!わたしにはおまえだけだぁ!!」
身体の上に乗っかり、必死にしがみ付く褐色のエルフ騎士を下種魔導師はそっと撫でながら、時計を確かめた。
アイシャが部屋に戻るまで、まだ時間はある。
「いっちゃおっかな~」
汗まみれのアイシャの匂いを存分に嗅いで、おちんぽが反応するか確かめた。
「いっちゃお!」
そして今度は、すっかり依存しきったエルフをたっぷり味わう事にした。
猫はまだ目覚めない。