Elf no Kuni no Kyuutei Madoushi ni Naretanode, Toriaezu Himesama ni Seitekina Itazura wo Shitemimashita
Ma'am, I can't apologize.
半月程前、キースはセイムラッドの宮殿の中を緊張した面持ちで歩いていた。
いつもの下品で助平でどこか卑しい顔ではない。緊張に若干青ざめてすらいる。
それも仕方のない事だと言えよう。
何せ今キースが向かっているのは国王マシュアの元なのである。
今日はナイアのお勉強が無い日だったから、昼を過ぎても部屋でパンツ一丁のまま図書室から無断で持ち出した魔導書を読んでいた。
そんな時いきなり扉がノックされ、開けてみたらそこにはマシュア付の執事長フレイザーが立っていた。
慌てて姿勢を正すキースの前でキッチリ45度お辞儀をするフレイザーは老年のエルフでマシュアの身の回りの世話総てをやっている。
元はマシュアと一緒に旅をしていたらしく、かなりの使い手らしい……とはアイシャの談である。
「父がな、この宮殿でマシュア王を除けば……いや、マシュア王含めても一番“殺し”に長けているのはフレイザー殿だと言っていた」
睦言に聞いた言葉を思い出してゾッとするキースは魔法杖を持っていない事を心底悔やんだ。
これではいざと言う時に何も出来ないではないか!!
色々この宮殿で好き勝手やっているキースには殺されて然るべき理由が山ほどある。
横目でルーに助けを求めてみたら、使い魔はこの前の一件のご機嫌取りに作ってやった動く鼠のオモチャと真剣に戦っていた。
(使えねぇええ!!!くそう!!)
心で叫ぶキースにフレイザーが話しかけて来た。
「魔導師殿、マシュア様がお呼びです。御同道願えますでしょうか?」
巌の間を風が吹き抜ける様な威厳のある低い声だった。
これに「嫌じゃ!」と言える程、キースの心は強くなかった。
「はい。御同道いたします。着替えますので暫くお待ち下さい」
扉を閉めたキースは急いで着替え、服の至る所に小型のマジックアイテムを仕込んだ。
あまり時間をかけても怪しまれると思い、適度な所で扉を開けようとしたがその前に、
「ルー!!」
消音魔道具を発動させ叫ぶ。
「うニャ?」
口に鼠オモチャを咥えたルーがキースに視線を向けた。
「……二時間して戻らなけりゃ逃げろ……いいな」
「ご主人……ベッドの下にある金庫の暗証番号は何番ニャ?」
「死ね!!」
キースは怒鳴って扉を開けた。
廊下ではフレイザーが一ミリも姿勢を崩さずに立っていた。
「お、お待たせしました」
「それでは」
そう言って先導するフレイザーにキースはついて行く。
そんなこんなで冷や汗が全然止まらないキースなのである。
もしかしてナイアに手を出しているのがばれたのか?
その上にロアナにまで手を出しているんがばれたのか??
色々考えが浮かんでいき、そのどれもが死刑に直結している気がしてならない。
正直これが女相手なら何とかなりそうな気もしないでもないでもないが、相手が男の場合キースの口八丁は大抵通用しない。
それは聖堂騎士団に追っ駆け回された過去からも分かっている。
終わったかな?これ終わっちゃったかな?
そんな風に思っていると、フレイザーがある部屋に通してくれた。
そこはキースも知らない部屋で、小さい講堂ほどの大きさのある部屋だった。
広いその部屋の真ん中に立っているのはマシュアで、その手には何と片刃の短槍が握られている。
あ、これダメな奴だ……。姫様、アイシャ、ベルナ、ロアナ……バイバイ。
心で別れの挨拶をするキースだったが、
「マシュア様、魔導師殿をお連れ致しました」
「ああ、ご苦労だな。すぐ終わるから待っていてくれ」
マシュアはそう言うと魔力を周りに流した。すると部屋の四隅から人型の木偶がやってくる。
「も……もくじんけ」
「パペットマンで御座います」
フレイザーがそう言うのと同時にパペットマン達が手に手に武器を持ちマシュアに襲い掛かって来た。
その攻撃をマシュアは難なく総て避けると、短槍を自分の首や腕、肩を軸にして回転させながら攻撃してゆく。
時には穂先で、時には石突で、薙ぎ払い穿ち叩きつけてすべてのパペットマンを破壊するのにかかったのは5分以下だった。
あまりにも華麗で素早くそして恐るべきその体術にキースは言葉を失った。
あれだけやって汗一つかかないマシュアは、周りを一瞥してからナイアと同じ人懐っこい笑顔をキースに向けた。
「すまんな。若い時の癖でたまに身体を動かさんと気分が悪くなるんだ」
若い時の癖って……このエルフ……そう思ったキースは、恐る恐る問いかけてみた。
「お……王様はお若い時にどのような旅をなさっていたのですか?」
「ん?いや大した事はしていない。昔少しな、自分の事を大君主だとか抜かすアホを殴ってやっただけだ」
「……だい……くんしゅ」
倒れそうになったのをキースは何とか堪えた。大君主と言うのは、大君主ダムアス=キノスの事だろう。
今から300年以上昔に北方を支配していた闇の眷属の王である。
あまりにも残虐非道であった為に人間を含む各種族の連合軍に滅ぼされたと言うが、その時の遠征で生き残ったのは連合軍8万の内なんと12人だけであった。
その内の1人がなんと目の前のマシュアだと言うのだ。
子供の頃、祖母ちゃんが寝物語に聞かせてくれた話の登場人物が目の前にいるだなんて。
「おいおい、そんな化け物でも見る様な顔をするな。それを言うならそなたの隣にいるフレイザーもそうだし、ナイアに仕えてくれているアイシャの父もそうだぞ?」
「ゲッ!!」
なんと言う事でしょう。
12人の生き残りの内2人に囲まれ、そしてその12人の内の娘2人をコマしてしまった訳だ。
(……ば……バチとか当たんないよな)
当たるといいのにね。
固まるキースにマシュアは「それは兎も角」と言ってから話題を切り出した。
「魔導師よ、今日呼んだのは他でもないそなたに頼みがあってな」
いつまでもフリーズしたままと言う訳にはいかないキースは、乾いた口で「はい」と呟いた。
それを聞いたマシュアは軽く頷いて、
「実はナイアが初めて対外公務で旅をする事になってな」
「旅……ですか?」
「ああ、とはいっても馬車で半日程度の、ほらそなたにご執心なレオノラ殿がいるあのアルマス公国なのだが」
キースはおっぱい姫を思い浮かべた。
さすがにこの緊張下で勃起はしなかったが。
「そうでございますか。姫様ならばきっと立派にご公務を遂行なされる事でしょう」
「そうであればいいと儂も思うよ。あ~~、それで頼みなのだがな、そなたにその旅の供に着いて欲しいのだ」
「おれ……わたくしがで御座いますか?」
「ああ」
この事にキースは少なからず驚いた。
宮廷魔導師は本来宮殿に入り浸る職の筈である。それが外交公務について行くなど聞いた事もない。
その驚きをマシュアも察したのだろう。
「いや、儂はなアイシャと侍女の一人だけでも良いと言ったのだが……ミアがどうしてもと」
とか何とか言いながらも実はマシュアの方が心配は大きいのではあるが。
でも素直にそんな事を言うのが照れ臭いのか、
「もし何かあったらどうするのですと、お前……朝から晩まで言われてみろ……どうもバジリスクを退けたそなたを我が細君は相当買っているようでな」
そんな風に言ってしまうのだ。それにキースが頭を下げた。
「あ、有り難き幸せに存じます」
「それでどうだ。行ってくれるか?」
問いかけるマシュアにキースは考えた。
旅。ナイアとアイシャ、そしてレオノラ。
断る理由がないではないか!!
「勿論で御座います!この身がお役にたつのならば何なりとも」
「そう言ってくれて助かる。これでミアも安心するだろう」
実は一番危ない人物をお供につけてしまったと気付かないパパとママだった。
§§§
そんなこんなで、キースは今アルマス公国の宮殿に居る。
何故か着いて来てしまった薄情な猫はガールフレンドとのデートを今から楽しみにしていた。
そんなルーの隣で、晩餐会の時に作って貰った導服を着たキースは、髪を後ろに撫でつけナイアについてパーティーに出る為部屋を出た。
ナイアの部屋にノックをして入ると、正式の騎士服を着たアイシャとクローネに髪を整えられてるドレス姿のナイアがいた。
「キース様!」
振り返ろうとするナイアを「いけません!」とクローネが窘めた。
「はうう」と髪を梳かれるナイアを見ながらアイシャに近寄ったキースは、
「凄いカッコいいですよ。襲っちゃいたいくらいです」
ボソリとナイアとクローネに聞こえない位の声でアイシャに呟いた。
真っ赤になったアイシャは俯いて、
「き、キースも格好良い……ぞ」
此方も聞こえない位に小さな声でそう言ってくる。
そんな二人の元に髪を整え終わったナイアが駆け寄って来た。
「キース様!キース様キース様!!やっぱりお似合いです!!かっこいいですっ!」
まるで物語の中の登場人物を間近で見た様な燥ぎっぷりでキースを褒めるナイアはまたその手を握ってくる。
よほどキースから手を離したくないらしい。
「姫様もお美しいです。あ、それはいつもですね」
「ひう……そう言うのダメです……」
白い膚を真っ赤にしてもじもじするナイアはそれでもキースの手を離さなかった。
羨ましそうにそれを見つめるアイシャの視線を感じつつ、キースとナイアは迎えの者が来るまで部屋で手を繋ぎ談笑していた。
迎えが来たのはそれから三十分後で、それに先導されてキースとナイア、そしてアイシャはパーティ会場へと向かう。
ちなみにクローネは途中まで同道し、各国の王族が連れて来た従者達の控えの間で待機している。
パーティー会場の大広間はセイムラッドよりは小さいが、その分歴史の古さが感じられ重厚な感じがする。
アルマスは国の成り立ちとしてはセイムラッドよりも古い国なのだ。
立食式のパーティー会場には右を見ても左を見てもエルフばかりである。
エルフ領の王族だけが呼ばれるパーティーなので仕方のない事だが、そんな中で黒目黒髪のヒト種であるキースが一人混ざると、異様な感じがする。
しかし、その視線はすぐに隣にいるナイアへと向かい、皆揃ってこの小さなお姫様の元へと集まってくる。
初めての対外公務ですねとか、次は我が国へとか、色々矢継ぎ早に言われ、ナイアは「あわわ」とちょっと混乱していた。
それを守るべきアイシャは、各国の若い王族や護衛騎士に囲まれ、こっちも「あわわ」となっている。こう見えてアイシャさんモテモテなのである。
一人、無視される有難味を感じているキースは、料理が置いてあるテーブルに向かい酒と料理を鱈腹食べ始めた。
こんな機会でしか飲めない様な極上の蜂蜜酒やローストドラゴン肉が美味過ぎて、
「これ包んで貰えます?」
ついそんな事まで頼んでしまう。
そうしているとラッパの音がして、見るとアルマスの公主ディオンが妻と娘、そして護衛騎士を従えて会場に入ってきた。
会場が水をうった様に静寂に包まれる。
それを確かめるみたいに会場を一瞥したディオンは、
「皆様、よくぞ参られた。このディオン心より感謝申し上げる」
ディオンは見た目40そこそこの背の高いエルフだった。
貴種エルフ独特の色の白さや髪の輝きはあるが、それ以上に厳つい雰囲気がある。
そのディオンは会場にいるエルフ達に一通り感謝の言葉を述べると、
「それでは、我らがエルフ領の今後益々の発展と安寧を祈って、乾杯!!」
酒杯を掲げた。
それに会場中が返すが、その時もキースはもぐもぐと欠食児童の様にひたすら食事を貪っていた。
王の話が終わり、会場中に賑やかな雰囲気が戻るとまたすぐにナイアとアイシャの周りには人だかりが出来た。
その中には冗談めかしてではあるが見合い話まで持ち込む輩までいる。
これが普通ならば、まず間違いなくレオノラが邪魔に入って雰囲気を偉い事にしていただろうが、今日は違った。
レオノラはさっきから――会場に入ってからずっと、この場で唯一の黒づくめの男キースを視線で追い続けていた。
キースがする仕草の一つ一つを見つめ、そして話しかけたくて堪らなかった。
何を言おう?何て言えばキースは許してくれるだろうか?
そればかりが頭の中で渦巻いているので、皆が自分に注目していないとか、ナイアばかりに客が集まっているとかは正直どうでも良かった。
いつもはパーティーを下手をすればぶち壊す勢いの娘がそんな様子なので、父ディオンと母クリスタは驚きの表情でレオノラを見つめていた。
父と母にそんな視線を向けられているとは知らないレオノラは、キースがテラスへと向かったのを見てチャンスは今しかないと思った。
見るとナイアは他国の王族達に囲まれて動けなさそうだ。これなら邪魔されない!!
意を決して、レオノラは父に、
「お父様、すみませんが少し風に当たって参りますわ」
そう言い残してテラスへと向かった。当然ついて来ようとするドナを「貴女は此処に居なさい!」と命じて足早に向かう。
テラスではキースが月を見上げて儚げな顔をしていた。
何を考えているのだろうか?もしかして自分の事だろうか?
淡い思いに胸を高鳴らせ、声をかけようとするレオノラだったが、この時キースが実際に考えていたのは、
(やっべ……食い過ぎた……吐きそ……)
とかいう事だった。いきなり胃に物を入れ過ぎて、ちょっと逆流しそうだったのだ。
外気に当たってそれを鎮めている所をレオノラが見て勘違いしているのである。
話しかけれずにいるレオノラの気配を、暫くしてようやく気付いたキースが振り返った。
青い月光の下で、テラスに立つキースとレオノラ。夢に見た光景と同じだと云う事に、レオノラは泣きそうになった。
「レオノラ様……」
夢で見ていた様な呼び捨てではなく、様付で呼ばれるが、どれでも嬉しいレオノラである。
だから、何かを話して……キースと少しでも話をして……キースに謝らなければいけないのに、
「……あ、あら、魔導師ではありませんの。もう二度と顔を見せないと言っておきながら、こうして国にまでやって来るとは、情けの無い男ですわね!」
口を突いて出てくるのはそんな言葉だった。
(え?なに?わたくし、何言ってるんですの?あ、謝らなきゃ!謝らなきゃいけなのですわよ!?なのに!!)
胸がドキドキとして、瞼の奥から涙が浮かびそうになる。
それなのに態度は居丈高に胸を張って、キースを見下ろしている。
そんな自分が訳が分からなくて、そして厭で厭で堪らず、思わず叫びだしたくなるレオノラだった。
キースはそんなレオノラを見て、儚げだった表情を更に哀しげにさせて、
「そうですね……もう二度となんて言っておきながら……情けないですね」
そう言って苦笑した。
「この国に姫様が来ると知った時、どうしても着いて行きたいと言う気持ちを止められなかった……本当に俺は、情けない男です」
来たかった。この国に来たかった。それはつまりレオノラに逢いたかった。そう言う事ではないのか。
口をパクパクとさせたレオノラは、今にも「キース!」と叫んで抱き付きたかった。しかし、それでもやっぱり、
「ふ、ふん!自分の口から言った事もろくに守れない男、わたくしは逢いたいとはこれっぽっちも思いませんけれど」
(やめなさい……やめなさい!そうじゃありませんでしょう!謝って、ごめんなさいって言って、それで……それで)
心の声と口から出る言葉が全く相反したものとなってしまう。
目にうっすら涙さえ浮かべてそれでも素直になれないレオノラは、何だかもう死にたくなった。
レオノラのそんな様子を分かった上で、敢えてそのままキースは話を進めた。
「申し訳……ありません。これ……これだけお渡しできればもう二度と……本当に」
キースは転移魔法で鞄の中から本を呼び出した。
それは前にレオノラが忘れて行った「世界の残酷処刑法」だった。
近寄ってきたキースがその本を差し出すと、レオノラはそれを受け取れなかった。
受け取ってしまえば本当にキースと最後になってしまう様な気がしたからだ。
だから手を出せずにいるレオノラの後ろから、
「キース様!!」
ナイアの声がかかった。
キースとレオノラの視線がそちらへと向かう。その時にキースは本をもう一度転移魔法で鞄に戻した。
アイシャを連れ駆け寄って来るナイアは、レオノラの横を通り過ぎると、キースの腕にしがみついた。
そしてレオノラを精一杯のキツい涙目で睨むが、それは子犬の威嚇の様でまるで怖くもない。
レオノラを睨んだナイアはすぐに視線をキースに向けると、
「は、離れたらダメです!わたくしのお傍にいてくれないと……」
「す、すみません……外の空気が吸いたくて」
「それよりあっちに行きましょう!他国の方々にキース様をご紹介したいのです!」
「ええ……わかりました」
テラスから去って行こうとするキースに何も言えないレオノラは、顔を歪めて泣きそうになった。
(……わたくしが……いちばん死刑に相応しいですわ)
心でそう呟くと、すれ違い様にキースが、
「夜中に本をお返しに伺いますね」
誰にも聞こえない程の声でそうレオノラに囁いた。
はっとレオノラが顔を上げると、キースは既にナイアに連れられ会場へと入って行った。
一人テラスでレオノラは、与えられた最後のチャンスに唇を噛んだ。
§§§
アルマスの迎賓館は宮殿のすぐ隣に作られている。
パーティーが終わり、そこに戻ったナイアとアイシャ、そしてクローネは用意された部屋で着替えを行っていた。
部屋は、居室と主寝室、そして使用人用の小部屋と言う作りである。
ナイアは勿論主寝室を使い、クローネは小部屋に簡易ベッドで、アイシャは護衛の性質上居室に簡易ベッドでと云う事になる。
キースは一国の役職付き魔導師であるし男なので、ナイアの部屋よりは劣るが一室別に用意されていた。
お風呂に入って髪を乾かしたナイアと、その間に身体をお湯につけたタオルで拭いたアイシャが寝間着に着替えそれぞれのベッドに入った。
クローネは明日の用意を済ませて、ナイアの残り湯で軽く身体を洗ってから与えられた小部屋に入った。
既に時刻は深夜である。
酒を一口も口にしなかったアイシャは、レイピアとククリナイフを抱きかかえて熟睡しないよう気をつけて眠っていた。
もし暗殺者などがやってきたらすぐに対応出来る様にする為である。
シンとした薄明かりを灯した部屋で、アイシャが目を瞑っていると、ふっと風が吹く音がした。
目を開けてレイピアの柄を握る。起き上がって掛布団を取ろうとすると、
「アイシャ……俺です」
物凄く小声でキースがアイシャのベッドに腰掛けた。
「!?き、……キース、おまえなにして」
思わず大きな声を出しかけたアイシャは、慌てて小声にしてキースに問いかけた。
アイシャの問いかけにニッコリ笑ったキースは、
「何って……夜這いです」
「よば!!……あ、おまえ……」
「騎士服着た格好良いアイシャ見てたらどうしても……ね?いいでしょう?」
ベッドの上に身体を乗せ、アイシャの上に覆い被さろうとする。
それをアイシャは慌てて押さえた。
「ば、ばかもの!何考えてる!すぐ隣の部屋でナイア様が寝ていらっしゃるんだぞ!?そ、それにクローネだって……」
「大丈夫です。アイシャが大きな声出さなきゃバレませんよ」
「そう言う問題じゃ!……そ、それに私は今護衛任務中で……」
「アイシャ」
キースがニヤけ面をやめて真面目な顔になった。その顔にアイシャの声が止まる。
「アイシャはもう俺だけのものなんですよね?……俺は今、すっごくアイシャを欲しがってるの分かるでしょ?」
アイシャの太腿にズボン越しに勃起したキースのおちんぽが擦り当てられる。
唾を飲み込んだアイシャは「でも」と一言言った後、
(ナイア様……マシュア様、ミア様、父上、申し訳ありません……私は……今の私はキースの雌です)
ゆっくりと横になったまま脚をM字に開いて行った。キースを受け入れる体勢になったのだ。
笑ったキースはアイシャの上に覆い被さり、その唇を優しく舐めはじめた。
(姫様が寝ている隣でその護衛騎士を頂く……うほぉ!昂ぶるぅっ!!)
下種な心の声が遠くで野犬を吠えさせた。
§§§
一方、レオノラの部屋では。
「き、きーす!わ、わたくしが悪かったと認めてさしあげますわ!!」
鏡の前でレオノラがひたすら謝る練習をしていた。
「なんですのそれ!!謝ってないですわよ!!馬鹿じゃありませんのわたくし!!」
自分の謝り方に納得いかず、もう一時間近くこんな事を繰り返している。
「……き、キース……わ、わたくしが……その、悪かったと云えなくもないですわね……じゃなくてぇ!!!」
隣の建物で今まさに下種い事をしようとしている男の為に、レオノラはずっと謝罪の練習を続けた。