Elf no Kuni no Kyuutei Madoushi ni Naretanode, Toriaezu Himesama ni Seitekina Itazura wo Shitemimashita
Female knights, take countermeasures.
「よく来てくれた」
マシュアの声に固まっていた三人の呪縛が解けた。
ゆっくりと執務室の中に入り、マシュアが座っている椅子の前へと歩いて行く。
だが三人とも視線はレオノラに向いたままだった。
レオノラはそれに軽く微笑んで答える。
その表情は明らかにキースへと向かっていた。
ナイアはキースの手を握りたくて仕方なかったが、父親がいる手前それも出来ない。
だから不安感がずっと心に燻ったままマシュアの前に立った。
ナイア、キース、アイシャが揃って立つと、マシュアは頷いてから話を始める。
「わざわざすまんな。来て貰ったのは他でもない、キースに頼みがあるのだ」
「おれ……私にですか?」
「ああ。実はこの度な、レオノラ公女が我が国に留学をしてくる事になったのだ」
その言葉に三人の口がぽかんと開く。
説明を始めようとするマシュアに後ろの椅子に座っていたレオノラが、
「お話し途中で口を挟んで申し訳ありませんマシュア王。ですがその説明はわたくしが行っても宜しいでしょうか?」
実に礼儀正しく丁寧なレオノラの言葉にマシュアは微笑んで頷いた。
レオノラはその頷きに立ち上がって三人の傍へやって来ると微笑みながら説明を始めた。
「わたくし前々から魔法を今よりもっと上達したいと願っておりましたの。ですがわたくしの国には魔術理論を体系づけて教えれる様な練達がいないのですわ」
眉根を寄せたレオノラは、ふぅと溜息をついてから、困った表情を見せた。
「そこで此方の国の魔導師様をわたくしの専属魔導師としてお招きしようとしたのですが、それも断られてしまい、ほとほと困っておりましたの」
何が困っていただ。とアイシャとキースは心で突っ込む。
特にアイシャは、この猫被りの嘘つき女め!とこめかみの辺りがピクピクしている。
そんなアイシャに構わずレオノラは平然と続けた。
「困り果てたわたくしは色々考え、そして思いついたのですわ。来て下されないのなら、わたくしが学びに来ればいいのですわと」
キースを見つめてレオノラは優しく微笑む。
「わたくしがセイムラッドに赴き、此方の国に留学しながら魔導師様に魔法を教わる。それなら何の問題もありませんでしょう?」
にこやかなレオノラの台詞。これこそ彼女が用意したプランBである。
【咎人の釘】を用いた作戦は端から成功率が低いとは思っていた。
何故なら心優しいキースの事だ。幾らレオノラと結婚する為とは言え無関係な真祖を殺すのには躊躇してしまうだろう。
特に今世界にいる数少ない真祖は殆どが無害な眠れる獅子である。
きっと優しくて紳士で高潔なキースならレオノラに「そんなこと俺には出来ません」と言うだろうと思っていた。
恋の盲目加減もここまでくれば拍手ものである。
だから用意したのがプランB、名付けて「禁断の関係、結ばれてはいけない二人の間に出来てしまった愛の結晶」大作戦である。
簡単に説明すると、一年間お勉強の名目でヤリまくって子供作っちゃえばお父様もお母様も反対は出来ないだろうと言う酷い作戦である。
とてもじゃないが一国の公女が考えて良いような上品な作戦ではない。
しかし、どう足掻いてもヒト種と貴種エルフの結婚が許されない今の現状ではそれしかないのだ。
その事をキースとアイシャは何となく理解していた。
だからキースは冷や汗を垂らし、アイシャは手首の痣に魔力を込める。
そして三人の中で唯一理由を知らないナイアは、
(レオノラちゃん……またキース様を奪いにきたんだ!)
ばっちり状況を完全把握していた。
渡さない。渡すもんか!とは思うのだが、
「お父様からマシュア王にお願いして頂いたら、快く構わないと言う返事を頂けましたので、早速参った次第なのですわ」
問題は父であるマシュアが全面的にそれを認めてしまっている事なのだ。
キースを雇っているのはこの国であり、いわばマシュア個人である。
宮廷要職の採用権は最終的にその国の王が決める事だからだ。
それ故に、ナイアが嫌だ駄目だと言ったところでマシュアが可であると決めてしまっている以上どうにもならない。
そんな事位は世間知らずのナイアにでも分かる事だった。
「と言うわけなのだ。どうだろうかキースよ。レオノラ公女にも魔法の授業をして貰えぬだろうか?」
問われてはいるが、はっきり言って拒否権の無い問いかけである。
国王であるマシュアが容認してしまっている以上、キースに拒否権は存在しない。
あるのは、「はい」か「イエス」か「了解しました」の返答だけである。
キースが溜息をついて返事をしようとすると、ナイアが見えない様に服の袖を掴んで来た。
それは行かないで、はいって言わないでと言う思いが込められていた。
キースにもその事は痛い程伝わって来たが、
「……分かりました。姫様のお勉強を優先と言う事で宜しければ」
最大級の落としどころを言葉にしてマシュアに返事をする。
マシュアはそれに微笑んで頷き「頼んだぞ」と言ってきた。
レオノラも作戦の第一段階が済んだ事にニコニコとしている。
アイシャはこれでキースとレオノラが誰にも邪魔されない時間を過ごしてしまうと泣きそうな顔で怒っていた。
ナイアは絶望に死んでしまいそうだった。
§§§
それからの話し合いで、レオノラへの授業は週に1、2回、ナイアの授業が無い日にと云う事になった。
レオノラが留学する期間は一年間で、その間は旧サルバ侯爵邸を改修し住むらしい。
宮殿からそう離れていない場所なので、歩いて通う事が出来る。
説明を受けている間も楽しそうなのはレオノラだけで、ナイアもアイシャも凄く複雑な表情をしていた。
色々な事が頭を駆け巡っているのだろう。
キースとレオノラの実情を知っているアイシャと知らないナイアだが、結局はレオノラがキースを奪うと言う考えは一緒である。
それを何とか阻止しなければと思うのだが、どうして良いか分からない。
だから「むーん」とした顔をして事の成り行きを黙って聞いて見ているだけだった。
話が終わるとレオノラはわざとらしくキースの手を握り、自分の豊満な胸に押しつける。
「これから宜しくお願いしますわ、魔導師様……手取り足取り、総てを教えて下さいませ」
媚びた声で頼み込んでくる。そのくせ言い終わるとアイシャを見つめニヤリと微笑む。
既にレオノラの中では敵はナイアではなくアイシャとして認定されてしまっているらしい。
挑発を受けた魔剣士アイシャは今にも魔剣召喚を行いそうな勢いだったが、キースが首を振ってそれを防いだ。
「ナイアも同年齢の友達が引っ越してきて、良かったな」
何も知らないマシュアの台詞がやけに色んな人物の心をささくれさせた。
執務室から退出し、廊下を歩くナイア、アイシャ、キースは終始無言だった。
ナイアもアイシャもキースに話しかけたかったが、それぞれがいるのでそうも出来ない。
だから黙ったままキースが廊下の途中で分かれて自室に戻るのを黙って見ているしかなかった。
自室に戻りベッドに寝転がったキースは盛大に溜息をつく。
困った事になったと思う。
レオノラがこの一年で既成事実を作ろうとしているのは火を見るよりも明らかだ。
なら手を出さなければいいと思うかもしれないが、そんな事は不可能だとキースが一番理解している。
きっと毎回毎回レオノラのデカパイを押しつけられたり見せつけられたりしたら心より先に肉体が反応してしまう。
レオノラに摺り寄られ、股間を触られ耳を舐められ、デカパイでパフパフされたら理性なんか嵐の中の蝋燭の火である。
つまりすぐ消え去ってしまう。
「ああああ!!強靭な理性が欲しい!!おっぱいの誘惑にも名器の誘惑にも負けないオリハルコンの様に強靭な理性がぁ!!!」
布の服より脆い防御性しかない理性を持つ人間が戯言を言っている。
それを聞いていたルーが後ろ足で耳をカイカイしながら呟いた。
「ご主人の理性と掛けて幻竜王の埋蔵金と解くニャ」
「……その心は何だ」
「はなっからそんなモノ存在しないニャ」
「弦楽器にすんぞクソ猫」
だが間違いなくルーの言う事は尤もである。そんな事キースが一番良く分かっている。
このまま流されて人の親になってしまうのか?そしてアイシャに殺されるのか?
怖い。怖いけど、明日早速あるレオノラのお勉強で、彼女に手を出さない自身が無い。
「……これは俺に対する神が与えたもうた試練だ……ああ!神よ!何故あなたはこうも私を試されるのか!!」
馬鹿な台詞を芝居がかって言うキースにつきあいきれず、ルーは欠伸をすると窓から出て行った。
「馬鹿に付き合ってると脳味噌腐るニャ……耳から出ちゃうニャ!」
「でねーよ!!ちょ、待て駄猫!!おい!!」
主人の引き留めも聞かず使い魔は平然と出て行った。
相談相手のいなくなった部屋で、キースは一人これからの事を考え続けた。
避妊魔法はどうだろうか?あれはでも女性側に絶対バレるしな……。
じゃあ、性欲を抑える魔法は?あれは反動でちんこ勃起しなくなる可能性があるし……。
ちんこに薄く張っておける避妊具を作る!!いや、パイズリされたりフェラされたら終わりだ……。
どうしようかどうしようか……。
晩飯も食べずに迷い続けて、キースはそのまま眠ってしまった。
昨夜の疲れと昼間のナイアとの疲れが出て来てしまったのだ。
グーグー眠るキースが目を覚ましたのは身体に重みを感じたからである。
何じゃ!?と目を覚ますと渋い顔をしたアイシャが身体の上に座っていた。
「え?うぇ!?あ、アイシャ!?な、何して……」
するとアイシャが「騒ぐな」と言って唇を塞いできた。
熱烈なキスの中で昨日の事が思い出される。
これはまた搾り取られるパターンのヤツだ!!
そう思い慌てて魔血石を探ると、指に指輪の感触が無い。
戸惑うキースにアイシャが唇を離し声をかけてくる。
「探し物はこれか?」
アイシャが指で摘まんだ魔血石のリングを見せつける。
「あ!ちょ、返して下さい!!」
その言葉にアイシャは手を高く上げて反抗する。決して渡す気はないと態度で示すのだ。
「あの後な、色々考えたんだ。ベルナとも相談した……それで決めたぞ」
アイシャは今まで見た事もないような笑みを浮かべてキースにもう一度覆い被さった。
「ウシ乳女との授業がある前の日は、私かベルナが次の日一滴も出なくなるまで搾り取ってやる……そうすればあの女の計画なんかおじゃんだ」
その為に魔血石を奪い取ったアイシャである。こうすれば活性化をかける事は出来なくなる。
レオノラが考えた恐ろしい作戦に対抗するべくアイシャがとったのは悪魔の作戦である。
「ま、待って下さい!!昨日の今日ですよ!?アイシャだってまだ体力が!!」
「心配するなぁ……私は中に3発しか受けてないから……体力だってまだ余裕だぞ?それに……キースに抱いて貰うんだ、壊されたって平気だ」
媚びているのにどこか狂気を孕んでいる。
ヤバい、アイシャが病んじゃった……。そう思った時には後の祭りである。
しなやかな指の動きでズボンの股間部をすーりすりされて唇を舐められる。
軍服姿のままなので、一日の汗の匂いがキースの鼻を襲った。これもアイシャの計略である。
匂いフェチのキースをこうして無理矢理興奮状態へと持ち込もうと言うのだ。
いけない!これも罠だ!!これこそ罠だ!!乗っかったら明日エラい目にあうぞ!!
心が必死の警報を鳴らし続ける。
アイシャの舌にも、指の動きにも、負けるな俺!!で反応を抑え込んでいたキースだった。
しかし、キースがそうやって耐えれば耐える程、
(この!そんなに私じゃなくてあのクソ女を抱きたいのかぁ!!馬鹿キース!!アホキースぅ!!)
やけになったアイシャの攻撃は苛烈さを増してゆく。
指は亀頭にあたる部分を重点的に撫で、唇はペチャペチャと舐められる。
とてもじゃないがあの高潔でプライドの塊みたいなアイシャの行動とは思えなかった。
張り合う女とはかくも恐ろしいモノなのである。
それでもやっぱり我慢していたキースだったのだが、
「……私な……キースの事を思って下着が濡れっぱなしなんだぞ?……魔導師様、どうぞこのイヤらしい雌騎士にお仕置きして下さい」
半年の付き合いでキースのツボを心得た的確なおねだりにはやっぱり勝てなかった。
「……アイシャぁぁああ!!このぉ!イヤらしい雌騎士めぇ!!褐色の肌と甘い匂いで俺を!!俺を惑わせやがってぇええ!!」
「きゃあ!き、キースぅ!!そうだぞ、わたしはイヤらしいんだ!そんな風にしたのはキースなんだぁ!!責任を……んぁああ!!」
身体を入れ替え、キースが上になって軍服のアイシャを襲い始める。
今日のポイント。
やっぱりキースくんに理性なんてものは存在しないのである。