Eternal Log

(d) Lesson 18: Moving on.

 その夜、俺は一人で状況を整理してみた。

 まず、ドラゴン。

 いったいなんであの場に急に現れたのか。

 これは『エターナル・ログ』の知識を辿っても答えは出なかった。

 まぁこれに関しては、原因が分からない以上警戒しないといけない。

 次に『エターナル・ログ』に関して。

 俺は『エターナル・ログ』の発動で知識や能力を継承した。

 でも、実際使いこなせるかは分からない。

 あの時だって偶然『覚醒』したから溢れ出る魔力を応用して力押しで勝てたけど。

 このあたりは訓練で身体に慣れさすしかない。

 そう考えると闘技大会に出て力試ししてみるのも悪くない。

 次に今の状況だ。

 なんだか流れに身を任せるうちにアースハイト王家に身を寄せるようになってしまった。

 まぁこれは仕方ないとして、今後どうするか?

 ドラゴンみたいな脅威に対して訓練をする。

 それは大事だと思うけどタダで居候させてもらうのも悪い。

 『エターナル・ログ』で手に入れた知識の中に『機械』っていうものがあった。

 この時代にはないものだと思うけどあれを提供したらどうだろうか?

 でも、この時代にはないものだけに影響力も大きい。

 この辺は誰かに相談しながら進めないといけないかな。

 「ふぅ〜……」

 ついこの間までちょっと周りと違うだけだと思ってたけどまさか自分が過去から未来に送られてさらに古代人種と呼ばれる種族だとは……。

 何かこの前までの自分とは別人になった気分だ。

 トントン。

 扉をノックする音がする。

 すると、シャーリーが入ってきた。

 「シャーリー……どうしたの?」

 「あ、あの昼はちゃんとお礼が言えなかったから……助けてくれてありがとうございます!」

 そう言うとシャーリーは頭を下げた。

 「いやいや、大した事してないから」

 この台詞今日で何度言っただろうか。

 「でも、ハル君がいなかったら私は死んでたと思う。私だけじゃなくてこの国のたくさんの人も」

 確かにあのドラゴンなら一つの国くらい簡単に滅ぼせそうだ。

 でも、それを倒した俺って……。

 「シャーリー……俺っていったい何者なんだろうな?」

 不意に口から出た言葉。

 俺は一日中周りから感謝される度に考えた。

 俺の生い立ちと力について。

 俺はずっと自分から目を背けていたのかもしれない。

 ちょっと周りと違うだけ。

 ちょっと周りが理解してくれないだけ。

 本当は小さい時から分かっていたのだと思う。

 自分の存在と力が異質だという事に。

 ただ、それを認めるのが怖かった。

 でも、今となっては自分が周りと異なる存在というのがハッキリした。

 さらに周りから見たら俺の力はとてつもない脅威だろう。

 俺はいったい何者なんだろう。

 「シャーリー……俺は自分が怖いんだ。過去から未来にきた古代人種。そして『エターナル・ログ』で得た力。俺は周りとは違う……そんな自分の存在って何なんだろうって」

 俺は胸につかえていた事を言葉にした。

 シャーリーは黙って聞いてくれた。

 「ハル君……ハル君はハル君だよ?私の魔法の先生で優しくて私の事を助けてくれたヒーロー。だから、ハル君の過去に何があっても、今、何が起きたとしてもハル君はハル君だよ?」

 シャーリーは真剣な目で言った。

 シャーリーの言葉が俺の胸に響いた。

 正直泣きそうなくらいだ。

 「そうだ。ハル。おまえが何者かなんて今更考える必要はない。おまえがそんなシリアスになっている方が別人みたいだ」

 「ロイ!?」

 声のする方を見ると、ドアの横の壁にもたれかかり腕を組んでいるロイがいる。

 てか、いつからそこにいたんだよ!?

 「ハルは自分が一番強いと思ってるみたいだけどまだ剣術では俺に勝ってないからな?」

 なんだかんだロイも慰めてくれてるみたいだ。

 でも、出来たら空気もよんで欲しいけど。

 俺は確かに周りとは違う存在かもしれない。

 でも、そんな俺を受け入れてくれる人達もいる。

『俺は俺らしく』

 考えても俺が違う存在になれる訳でもない。

 俺は俺なりに生きて行くしかないのだろう。

 あぁ、何か少し気分が楽になった。

 「二人ともありがとう」

 俺は素直に二人に感謝した。

 俺は俺。

 自分らしく、悔いのないように生きていこう。

 『父さん、母さん、俺は父さんと母さんが俺や世界を守ろうとしたように俺の力は正しい事に使うよ。

 そして、二人が助けてくれた命を大事にして幸せな人生を送るよ』

 俺は過去と現在を受け入れて未来へ向かう決心をした。