Gear Drive

① Yo HTOM

 ふっくっくっくっくっく……。

 いぇーい……!!

 きたぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!

 見つけれるモンならなァ……?

 見つけてみやがれぇ、こんちくしょおおお────!!!

『────"王絶(オウゼツ)":正常に発動を確認。

 ────第三者からの知覚機能が:

 ────全てにおいてカットされます。』

 きゃ────はっはっはっはっは……!!!

 どぉおおお────じゃ────い!!!!!

 ムテキ、ムテキですよ。はんっ。

 今の私に……隠れんぼで勝てると思うなよ???

『C7:ドンが……、荒ぶっておられるにゃん……!』

『C2:ヒトから見えなくなったからって、テンションあがり過ぎみゃァ……』

『『 きっひひ! 見えなくなったってのは、正確じゃないけどね〜〜♪ 正しくは、"感じているけど意識できない"だよっ! 』』

 なんとでもいいなさいな!

 今の私なら、裸で徘徊しても大丈夫よ!!

 ほぉれ!! そこの騎士さんも素通りじゃい!!

 マイスナも見えてないわね……これはキテるっっ!!

「──よっしゃあ!!」

「おおおおおお!」

『>>>ちょ、調子にのるんじゃねぇええ──!!! ほらぁ!!! ピンク術式、建物おおってってるぞ!! さっさと図書館の棟に入れってぇぇ──!!!』

「にょ、にょきっとなぁ──!!!」

「くゆくゆ! くゆくゆ!!」

 なぬっ!?

 ────やっべ、マジじゃん!!?

(マイスナ走るよ!!!)

(おりゃ────!!!)

 ドっ、ズザザザザザザザザザザ────!!!!!

 建物の中に滑りこんだ!!

『>>>バッ……ふたりでスライディングしてんじゃねぇええ──!!! 熱血サッカー漫画かッッ!!! あほ、あほ……芝生が削れたらバレるだろうがぁああ……!!』

「ちょっと先輩が何言ってるかわかんないわ」

「これ見えてない? 見えてない?」

〘#……急ぐのだ。あの術式に触れたら、不味いのであろう?〙

「──うおっと!!」

 すぐそばにある入り口を、

 ピンクの光のカーテンのようなものが、

 スラァ……と塞いでしまった!

 ゥ"ゥ"ウ"ヴヴヴン、とギルドカードが震える!

 うえぇっ……!?

「「い……っ!?///」」

 ちょ、おいコっ……待てィ……っ!

 Q.ギルドカードは、どこにしまってあるでしょ〜〜?

   ヒント:乳

『────接近すると:反応するようですね。

 ────カネトの予想は正しいのでしょう。

 ────あの防犯術式に直接捕捉されると:

 ────ギルドカードに:

 ────何らかの記載がされる可能性:大。』

「ちょ……、こんな長時間、

 震えられて、タマるかァぁぁ……!!///」

「は、はやく離れよ、アンティ……!

 ぴ、ピンポイント過ぎます……!///」

 色んな意味で接近するとヤバいわっ!!?

 おいあの変態ぃい、何故こんな位置に、

 ギルドカードポケット作りやがったぁぁぁぁぁあああ!!!

「ぶあっ、くしょ──いッッ!!

 であ──るぅぅぅう……!

 はて……せくすぃーなうわさ話であろうかな……?」

「いや、服着ろよ、アブノのダンナ……。バカじゃねーの?」

「?? 着ているではないか?」

「……それ、剃ってんだよな?」

『>>>もう、こうなったらはやく行っちまえ!! 階段しかないんだろう!?』

「い、言われなくてもぉおお──!!」

「ぬぁ──待ってぇぇえ──!!」

 キンキンキンキンキン……!!!

 ギンギンギンギンギン……!!!

〘#……これは……本当に知覚されないのか?〙

〘------多分;大丈夫のん☆

 ------曲がりなりにも神のスキルのん☆〙

『『 あ、ひっど。そゆこと言っちゃう? 』』

〘#……いや……だが、効果範囲外まで響いていたら、だな……?〙

「そ、そんなに足音、うるさくないもん!!」

「えいや──────!!!」

 きんぎんきんぎんきんぎんきんぎん!!!!!

『C4:うるさいにゃー 』

『C3:シーニャ!? しっ……!!』

「にょ、にょわー……、にょおぉ……きっとなー」

「く、くゆぅ……?」

『>>>うさ丸の耳にダメージ入るくらいはウルサイって……。いいかぃ!? そのスキルは強力だけど、きみらに接触されたら恐らくバレる!! ぜったいに触られるなよ!?』

「わ、わかってるわよ! うさ丸!? 我慢なさい! 男の子でしょっ!」

「アンティ! 誰が来たかも!?」

「マジで!?」

『────正面に:中規模パーティが接近。

 ────数:27。

 ────騎士警備:及び神官と判定。

 ────騎士:18。神官:9。』

 ちぇ。

 一応、息を殺す。

 マイスナと有線接続。

(よけるよ)

(あいさー)

『>>>ちょ……!?』

〘#……突っ込む気か!?〙

 大丈夫よ。

 優秀な先輩たちから、

 身体あけわたして、

 伝授つかまつってますから、ね──っ!!

(よっと……!)

(でやぁ……!)

 マイスナが前へ踏み出し、

 私が後へ続く。

 もちろん、手は繋いだまま。

 私のもうひとつの金のグローブには、

 ご先祖兼、神様が宿りし、異形の魔刃────。

(イリィィ……!!)

(!? その掛け声、なに!?)

 キィん──!!

  ぎィン──!!!

 グォオオン……!!!

 ちーっと、

 どうかと思う最愛の人の気合い声と共に、

 私たちの身体は、互いにふりこ(・・・)となる。

『>>>ど、同時に跳んで、どうすんの!?』

「「 ──こーするの・・・! 」」

 簡単なコト──。

 私にぶつかりそうならマイスナが引いて(・・・)、

 マイスナにぶつかりそうなら、私が引く(・・)。

 はーい。シンプルー。

 よっ、とっ、はっ。

 ぐるんぐるーん。

 ほぃ────着地。

 ────きぎん。

「「どやぁー」」

『>>>……………、………………曲芸だ……』

 し、失礼ねぇ。

 これ、先輩から学んだ身体感覚なんだけど?

 木ぃ、ピョンピョンするの上手でしょうがぁ。

『>>>しまった……この子ら、多分天才だった……』

〘#……回避のためとはいえ……淑女が、あのように股を開くのは、どうかと思うのだが……〙

「先生のえっち」

「! ぷっ、き、きひひひ……」

 思わず、笑ってまうやろ。

 通路を進み、階段を登る。 

〘#……そ、そのような事は、初めて言われたな……〙

〘------ドンマイなのんっ☆

 ------あれのん……☆ 若さゆえのん……っ☆(ぽん)〙

〘#……う、うむ? あ、あぁ……〙

『>>>とりあえずー、人に、当たるなよー。剣、はなすなよー。頑張れよー』

『『 私のこと、一生はなさないでねっ♡ 』』

『────むっ……。』

『>>>──!? な、なんで、ぼくを振り返るんだよ! きみがどう見ても、ぼくの一番近くにいるじゃん!』

『────つーん。』

『>>>いやいやいやいやいやいや』

『『 けらけらけらけら! クラウン、かっわいー! はぁ……♡ カップルいじるの、オモシロイ……うひゃひゃ♡ 』』

 みんなテンションがやべぇ。

 あんた、神で私の御先祖でしょうに……。

 私と同じような声で恥ずかしい行いはやめぇさ。

 "斬王心絶"のシゼっちゃんったらさぁ。

「……斬絶……。

 見える範囲で斬撃の長さを指定できる抜刀術。

 ……王絶……。

 未接触の相手に、自分自身を無知覚にさせる。

 ……心絶……。

 周囲の人間の、最も重要な目的を忘れさせる。

 ねぇ、シゼツ……。

 ──"反絶"は、どんな能力なの??」

『────!。』

『>>>……!』

 走りながら、聞いてみた。

『『 ──ん!? きひひ♪ やだなぁー! アンティが創ったチカラじゃーん♪ 』』

「え、いや、そなの?」

『『 そうだよぅ! 私の元々の最終スキルって、"殺した者を永久に隷属アンデッドにするチカラ"だったもん 』』

『────な。』

『>>>お、おま……!?』

「……"死絶"、の事ね?」

『『 ピンポーン♪♪ 』』

 ピンポーン、じゃねぇぞ全く……。

 なんだ、ピンポーンって……。

「……私と会ったから、"死絶"が、"反絶"になった。そゆことよね? ねぇ……教えてよシゼツ。どんなチカラなの?」

『『 きひひ♪ 大丈夫……! アンティたちに相応しい、ステキなチカラだよ……っ♪ 』』

「いや、そーゆーの、いいからさぁ……」

「……? ??」

 ほれ見ぃ、マイスナも首ひねってんじゃないのよ。

 こんな爆走しながら首ひねっても可愛いのよ。

 どんだけ可愛いのよ指からビーム出るけど。

〘#……ふぅ。どうやら警備の者は全員、外に出払ってしまったようだ……。先程の集団の後に、遭遇する者たちが居らぬしな……〙

『>>>やれやれ、そうだといいんですが……。このまま上がれば、あの図書館だろう? 一泊したとして、明日の朝に無事にお城から出られるのかどうか……』

「不安なコト言うの禁止」

「アンティのテキは蒸発させる」

「はい、アウトぉー。後でオシオーキ」

「なっ、なぐさみものっ!? わくわくぅ♪」

「わっ、ワクワクしないのッ!! ばかぁー!!」

〘#……仲睦まじいのは良いのだがな──……見よ。次の通路がひらけているぞ……?〙

(あ……)

(ほんとだ……)

 先生の気遣い溢れる窘(たしな)め。

 ちょいと恥ずかしく思いながら、冷静になる。

 ナルホド、ここは……。

 通路の途中で膨らんだ場所、ってな感じだ。

 ドーム状の、小さな空間。

 少し、床が丸く、えぐれている。

 不思議な受け皿のような床の中央。

 自然と、目が行く。

『────中央に:何か設置されています。』

 台座、よね……?

 四角い物がある。

(なんだろ?)

(さぁ?)

 台の上。

 調子にのり、

 ──触ったのがいけなかった。

 ────Pe、BONっ☆

────────────────────

         ▽

   ▽▽▽ Wake Up ▽▽▽

────────────────────

(……ぬなっ!?)

(なんか出たよっ!)

 と、思った時には、もう遅い──……!

────────────────────

 ──Awakening.

 ────Death & fire/OverLady.

────────────────────

『『 ──あっっ!? ダメッ……!!!! 』』

────────────────────

 ──Update:file-

 ──Now-Loading::::::/|

 [■■■■■■■■■■■■■■  ]

────────────────────

 カッッ──────!!!!!!!

(──いいッッ!?)

(──にぁッッ!!)

 ────すっげぇ、光────。

『────ば:バイザー構成。』

 ヴォヴォヴォヴォ・・・!!

 視覚保護が展開された。

 仮面の目の穴に、光を遮るメガネができる。

「な、に……?」

「まぶしい……!」

 ガチャン……と音がして。

 辛うじて、その変形しだした箱(・・・・・・・)から、

 浮きあがる文字を読みとれた。

────────────────────

     ◢ complete! ◣

 D:System No.000028

 type:timer

 Server:TUESDAY│

 ─ ─ ─ ─ ─ ─

──────────────────── 

「──これ──ッッ!?」

 ──── じ か ん ば こ だ !!!!!

 ──ウィ、ウィィイイインン・・・!

 半透明の歯車と鎖が、展開していってる……!?

 まるで、生き物みたいに……!!

『────で:デバイスの起動を確認……。』

『>>>何に反応したッッ──……!? この光量は……まずいぞっつ!?』

『『『 わ、わ、わたしだわ……!! 』』』

 外はもう夜になっている。

 この部屋の光は、そこの窓から、

 派手に暗闇に伸びてるはずだ。

 灯台、元、明るし……逃げるが負け?

「や、やばい……!!」

「どうしよう……!?」

 思わず、窓に向かって後ずさる……!!

〘#──窓からは逃げるな!! 例の術式に覆われているなら、ギルドカードに記録が残るやもしれん!!〙

〘------ぬぁー;やらかしよったのんなぁー☪︎.*・゜〙

「あわわあわわわ……どうしたらっ!?」

「光がっ……!!」

 私とソックリな慌て方で、

 刃の御先祖様が仰られる。

『『 あわわ、あわわ、私の名前で初期作動しちゃった! どうして!? 私、なにもしてないよ!? 』』

 "じかん箱"って、一部の神官さんしか起動できない術式なのにっ……!?

 いや、てか……"デバイス"……!?

 アナライズカードで、出来てるから……!?

〘------ふたり共;

 ------シゼツを解除し;逃げなさい-☪︎.*・゜〙

「「……えッッ……!?」」

 多数の顔を持つ、月の精霊王。

 ヒューガさんの喋り方で、静かに響いた。

「で、でも……!?」

「だって、それじゃ、"王絶(おうぜつ)"、がッ……!?」

〘------シゼツを解除しなければ;

 ------その光は収まりません!!☪︎.*・゜

 ------急ぎなさい!!☪︎.*・゜

 ------漏れる光を見た人々が;

 ------駆けつけてきますよ!!☪︎.*・゜〙

 ローザったらぁ……!?

 き、急に大人びた声にならないでよぉ……!

 ひとが……来る!?

 だ、だからこそ、"王絶"を解除したら、

 マズいんじゃあ……!?

『────アンティ。

 ────ローザの言う通りのようです。

 ────やむをえません。』

『>>>思考を加速する。こんな時の迷いは、シャレになんないよ?』

 ──強制的に、"反射速度(クロックダウン)"が発動される。

 ────時は、重くなる。

 ……。

────────────────────

 D:System No.000028

 type:timer

    ▼

 type:Maintenance

 Server:TUESDAY│

 ─ ─ ─ ─ ─ ─

────────────────────

 ガチャ、コ……!

(( ……!? ))

────────────────────

 D:System No.000028

 type:Maintenance

 メンテナンスモードです。 

 誤字があれば/入力してください。

[              ]

     ▼ ▼ ▼

[              ]

 ※すべて置換されます

────────────────────

 ……!?

 これ、は……!?

〘------な;何をしているのです!☪︎.*・゜

 ------人がきます!!☪︎.*・゜

 ------シゼツ! 今はお引きなさい!!!☪︎.*・゜〙

『『 う、うんっっ……!! 』』

 パ、キン……!!!

【 ・・・──面倒事、やのぅ……!! 】

< ・・・──大変、やねぇ……!! >

{{ ・・・──ちょっと、大丈夫なの!? }}

 乳装甲から三つの歯車が飛び出し、

 魔刃シゼツが、霧散する。

 歯車を格納すると同時に、動き出す。

「に、にげよう!」

「う、うえに図書館があるんだよね!?」

 ──きんきんきん、ぎんぎんぎん──!!

『>>>ば、バカっ……! 足音を隠せっ!! 浮かした歯車の上を行くとか……!』

『────アンティ。

 ────震音を多数感知しました。

 ────下の階段からの反応と断定。

 ────100人単位です。』

 や、やべぇ……!

「上に……!!」

「う、うん……!!」

〘#……ローザ、彼女たちの靴底にスライムジェムを充填するのだ。歯車を取り込み、浮力を成す。〙

〘------わかりました☪︎.*・゜

 ------音は私が殺します☪︎.*・゜〙

 走り出す──。

 慣れないデバイスが足を包み、

 音はでなくとも、気が焦る──。

「はっ、はっ、」

「はっ、はっ、」

 ──この上だ。

 ──とにかく、 

 ──あの、図書館に入ってしまえば──……!

『────アンティ。

 ────上方の階層より:震音探知。

 ────50人単位です。

 ────尚:増加中。』

「──わ、脇道を探す。」

「──こっ……この道、天井が低い……!」

 やべえやべえやべえ。

「クラウン、シゼツの再起動は可能?」

『────不可能判定。

 ────しばらくクールタイムが発生する模様。』

 泣きそうかな?

 足音がガチャガチャ、聞こえてきた。

「──そ、そこの道に入るしかない!」

「うん!!」

『>>>ま、まて!! そっちに行っても──!?』

 脇に逸れる廊下に入った瞬間、

 後ろから、声がした。

「いたかー!!」

「なんで、光ったんだー!?」

「すごい光だったぞー!!」

 きっつい。

『────行き止まりです。』

 んなこた、わかってんのよぉ……。

 でっかい鏡がある、ドン突きだ……。

「あ、アナライズカードで、壁に擬態する」

『>>>……』

「アンティ……!」

 天井を見る。

 ここは低くて、上に張り付いて隠れるのは無理。

『────最大加速による逃走を提案。

 ────"反射速度(クロックダウン)"と"力量加圧(パワーアシスト)"をチャージ。』

『>>>待て……この通路は狭いんだよ……相手、轢き殺すぞ……』

 ない。

 それは、無い。

 あれ……?

 つん、だ……?

「…………」

「…………」

 鏡を、見る。

 いやーな顔してる、2人が映っていた。

 マヌケめ。

 油断してるから、そうなる。

 張り詰めた、泣きそうな顔、しやがって。

 ドドドドドドドドド……!!!!!

「どうだー!!」

「こっちも、いま着いたとこだー!!」

「誰にも会ってねぇぞー!!」

「……、……」

「……、……」

 きん……、ぎん……。

 でっかい豪華そうな鏡を背に、

 ふにゃって、持たれかかった……。

「おこられ、るかなぁ……」

「……殺しちゃ、ダメ?」

「……ダメ。ごめんね……?」

「んーん……」

 こりゃ、ダメだ……。

 手を、繋ぐ。

 やっちまったなぁ……。

     ──もうすぐ、

    ──その角を、

   ──たくさん、

  ──曲がって、

 ──きた。

 ドドドド、ドドドドドド──・・・!!!

 ガチャン、ガチャン、ガチャン──・・・!!!

 ──おなか痛い。

 ──バッ!!!

 …………ドタドタ、ガチャ……。

 ……ドス、ドス……。

「ここ……いきどまり、だよな……?」

「……ありゃ、誰もいねぇな……」

「あれっ……!? な、なんだ、鏡か……」

「はは、自分の顔見て、驚いちまった」

「……先ほどの光は、なんだったのでしょうか?」

「それがよ……"じかん箱"がひとつ、起動してたらしいぜ?」

「……!? 私たちの誰か、でしょうか!?」

「い、いや! 神官さん達を疑ってはいねぇ! いねぇが……」

「外の反応は、消えているらしい……誤作動か? 妙な事が続くぜ……」

「あ、あの……その、起動した"じかん箱"の部屋に行っても?」

「おい! この大人数はまずいぜ!! 何人か持ち場に戻そう!!」

「そ、そうだな……おおい! 後ろのメンツ! わりぃ、バックしてくれないか……!?」

「なんだなんだ、空振りか……?」

「まいったな……疲れちまったぜ……」

 ぞろ……ぞろぞろ……、

 カタカタ……、ガシャ、ガシャ……、

 ざわ……ざわ……。

 ────、

 ……。

 ──────────────────

「 」

「 」

「 …… 」

 鏡の、中にいる。

 いきなり後ろから、引っ張りこまれた。

 いや…………これ、"鏡"、じゃ……?

「……、」

「……、」

「──……」

 抱きしめられていた。

 そっと。

 優しく。

 強く。

 私たちを、大きな鏡の向こう側に連れ込んだ人は。

 ミスリルの仮面を付けた、女の人。

 ────四つ目の、ミスリル銀の、仮面を。

「──……」

「……」

「……」

 口を抑えられている。

 左右の手で、ひとりずつ。

 細い、華奢な手だ。

 ふわりと抱きしめられているだけなのに、

 何故か……抵抗できない何かがあった。

「──…… 」

「」

「」

 騎士と神官たちの足音が、

 完全に消えてから、しばらく経って──。

 ふ……と、私の口の左手と、

 マイスナの口の、右手が離れる。

 ゆっくり腕が解かれたけど、

 私たちは、その仮面を見ながら、

 動けなかった──。

「バカを、したわね」

「……」

「……」

 マザー・レイズは、歩き出す。

 鏡の奥の、隠された通路へ。

 カツーン、

  カツーン、

   カツーン……。

 少し、ふりむいて。

  「なにをしてるの」

     カツーン、

      カツーン、

       カツーン──……。

「……、……」

「……、……」

 ついて行くしか、にゃい……。

 大司教の後を、

 義賊と狂銀の格好で、

 トボトボ歩く。

「あ、アンティぃ……」

「……ああぁ、ぅぅ……」

 生きて、帰れるかな。