「えーと、獣人、獣人っと...尻尾って弱点でもあるのね、じゃあ、エルの尻尾は触らないようにしないと!...そういえば、エルは元々隣国出身なのかしら?」

獣人の事を調べながら私はふとそんな事を思った。

「たぶん、そうかと思います。この国は獣人はいるにはいますが、隣国程多くはないですし、闇オークションとなるとこっちで捕まえるよりも隣国で捕まえてこの国で売る方が色々と楽なんだと思います。」

「そ、うよね。ならきっとエルには親がいるはずよね、当たり前だけど。...お父様の事だから探したはずだけど、見つからないのかしら...」

「たぶんですが、エル様自身について聞けない為動けないか、それかエル様の両親には報告済みで何らかの理由で旦那様が保護しているか...では無いでしょうか?」

「そうね、闇オークション自体は片付けたらしいけど、1番の大元はまだ見つけられてないみたいよね。そうなるとまたエルが狙われるかもしれないし、声が戻らないと調べた両親が本物なのかも危ういものね!...でも、いつかエルの声が聞けたら一緒にエルのご両親に会いに行きましょうね。」

エルは私の服の裾をまだ掴んでいて私の目をしっかりと見て頷いてくれた。

「声については、無理にだそうとしなくて良いのよ。ゆっくりで良いの。...でも、どんな声をしているのかしらね?楽しみだわ、その声でお姉様って呼んでくれるのが!」

そんな事を想像しただけで嬉しくて顔が緩んでしまう。

「...ねぇ、エル...その、...そのね、貴方の頭を、撫でても良いかしら?...怖いなら良いの!」

ビクビクしながらエルの顔を覗き込むとコクンと頷き触りやすいように頭をこちらに向けてくれた。

「まぁまぁまぁ!本当に?ありがとう、エル」

ゆっくりとゆっくりと手をエルの頭へと近づけ触れる。私の手に柔らかい感触が一気に広がって来た。

「わぁ...やっぱり、エルの髪の毛は柔らかいのね!フワフワの毛質にマロンのような髪色、そして、真っ黒な耳!本当に素敵ね。本当に羨ましいわ!瞳の色もアレンと同じ青色だし。私は緑の瞳にキツイ目元、髪色はプラチナのようだからキツく見えるのよねぇ」

「いえ!ロゼ様はキツくなんて見えませんよ。光り輝くプラチナの髪にエメラルドのような瞳に見つめられると...心が...」

「そんなに褒めても何も出ないわよ!」

「ロゼ様のお傍にいられるだけで充分です。」

そう言ってくれるのは有難いがアレンの表現は身内贔屓が入りまくっている。

クイクイっと服を引っ張られてエルへと顔を向けると

『ぼくもすき』

と口パクで私に伝えてくれた。

「まぁ!...え、エルが口パクを!そして、好きだなんて」

感極まってエルに抱き着きエルの頬に自分の頬を付けてスリスリしてしまった。だが、そんな事をしても嫌がらずに大人しくしてくれるエルが可愛くてアレンに止められるまで続けたのだった。