Godly shop's cheat fragrance

Chapter 3 Prologue

 馬車の車列が延々と続く。

 亀にも抜かされそうなゆっくりとした速度だった。

 時々、何の荷物も持たない獣人が、全速力で駆け抜けていく。きっと伝令か何かだろう。

 どこまでも続く荒野だが、所々に点在する低木と、前後に続く車列が不毛の地で無いことを教え、旅人たちの心を多少なりとも癒やしてくれる。

 もっともこの速度に業を煮やしている商人は多いだろうが。

 空が夕暮れに染まる頃になると、ほとんどの馬車は街道の脇にスペースを見つけて野宿の準備を始める。本来ならとっくに独立都市セビテスに入国出来ているはずなので、彼らの深いため息も理解出来るというものだ。

 そんな陰鬱とした彼らを強烈な明かりが照らす。

 何事かと光源を観察すれば、見たことも無い白い馬車が馬もいないのに街道を進んでいるではないか。さらに馬車の頭から出ている光は「照明」の空理具ですら出せない強烈な明かりであり、炎の明るさでもない。

 旅人たちは口をあんぐりと開けたまま、ゆっくりと走り去る謎の白馬車が地平に消えるまで見送っていた。

 どうやらこの先の都市国家セビテスで面白い事が始まる予感で、彼らを笑顔に変えていた。