Godly shop's cheat fragrance

　夕食は、俺がストレス解消に、自重しないで料理させてもらうことになった。

　今まではＳＨＯＰの力を隠すために、色々と我慢していたのだが、ＳＨＯＰで買える品物が、ほぼ無制限になったことと、秘密を共有出来る人物が増えたことから、おもいっきりやってみたくなったのだ。

　参加しているのは、カルゴ、フリエナ、ルルイル、ヤラライのパパママコンビ。料理長のフーゴ。あとは、いつものメンバー。ファフも匂いに釣られたのか戻ってきた。

　今回アッガイには遠慮してもらった。

　ちゃっかり、ナルニアがチェリナ付きのメイドとして、給仕兼、味見という美味しいポジションを得ていた。

　小さくても女だね。

　品数が多いので、立食ビュッフェ形式にした。

　フーゴ率いる料理人と、次から次へと料理を作り、メイドたちが慌ただしく準備を進めていく。

　日本時代、上司のホームパーティーで、ひたすら料理を作らされる謎のイベントがたびたび開催された。おかげで、大量の料理を素早く作るのは得意だった。上司に無理矢理付き合わされるイベントの中では、料理を持ち帰れるという点で、珍しく嫌いなイベントでは無かった。

　パーティーは参加費も無かったので、俺にとっても助かるイベントだったのだ。

　そういえば、この世界に飛ばされる前は、このパーティー開催回数が多かったような？

　いや、どうでもいいか。

　とにかく、無駄に身についた料理スキルを発揮して、予算に糸目を付けない料理をこれでもかと並べていく。

　一通り料理を作ってみせると、フーゴが奮起して真似していく。

　幸い材料は積み上げてあるので、いくらでも失敗してくれと思ったのだが、流石ヴェリエーロの専属料理長だ。あっと言う間に作り方を飲み込んでいた。

　この辺りはセンスの差かね？

・神戸牛のステーキフォアグラ添え。

　全員が絶賛した、究極の料理だ。

　お代わりがいくらでもあるというのに、殴り合いが始まりそうな勢いで取り合いになっていた。

　特にファフが気に入って、食べる食べる。

　やっぱドラゴンってのは肉大好きなんだな。

・関鯖の握り寿司。

　魚に慣れた人間に大人気。

　個人的にマグロのトロより美味いと思っているので、気に入ってもらえて良かった。

　関鯖以外の寿司も並べたて置いた。

　魚を生で食べるというのに忌避感がある人間も、次第にその味の虜になっていくのは、見ていて気持ちいい。

・飛騨牛カレー。

　見た目から、最初は敬遠する奴も多かったが、誰か一人が美味いと叫ぶと、全員が味見。

　飛騨牛のしっかりした肉の味を残すため、甘めのルーなのが良かったのか、これも大人気だった。

　特に、ナルニアが気に入って、腹がはち切れるまで食べまくっていた。

　そう言えば、ピラタス時代に試しで作ったスープカレーも、メッチャ受けてたよな。

・ノドグロの刺身、焼き物。

　なぜかラライヤを初めとしたエルフに人気だった。

　ノドグロは見た目がグロイ魚なのだが、その味は一級品。食べればわかるその美味さって奴だな。

・ふぐ刺し、ふぐ唐、てっちり鍋。

　ＳＨＯＰで毒部分を除いたものが売っていたので、使ってみた。

　唐揚げは正義。

・タラバガニの刺身、しゃぶしゃぶ、蟹焼き、茹で蟹。

　蟹は時々揚がるらしく、テッサ陣にはそこまで受けなかったが、食べたことの無い人には好評だった。

　笑ってしまったのは、蟹の身をほじくり返す時は、全員が黙々と集中し、静かになってしまったことだ。

　どの世界でも共通なんだな。

　ファフだけが、殻ごとばりばりと食べていたが。

・ウニたっぷりのスパゲッティー。

　どこの誰が最初に考えたのかは知らないが、スパとウニを組み合わせた奴は天才だな！

　俺の好物だったので、作ってみたのだが、チェリナの兄貴がやたらに嵌まって食べまくっていた。

　あ。お兄様いたのね……。相変わらずステルスだな。

・イベリコ豚のしゃぶしゃぶ。

　くっくっく。

　昔、魚の美味さを広めるために、鯛しゃぶを作ったことがあったが、本来の肉しゃぶリベンジである！

　牛はすでにメニューに組み込んでるので、豚で作ってみた。

　牛しゃぶより、豚しゃぶの方が好きなだけだが。

　これも全員に受けたので、あとでアッガイやエルフたちにも振る舞ってやろう。材料は現地の物にしてな。

・エルフの最高級ワイン。

　チェリナの父親、カルゴが感涙していた。

　商人にとって、エルフの最高級ワインは憧れの品らしい。

　酔っ払いながら「早く！　早く孫の顔を見せてくれえぇ！」とチェリナのお腹にほおずりしていたのは、微笑ましい風景といえるのだろうか？

・日本産、高級ウィスキー。

　うん。わかってたけどさ、ハッグとファフがアホみたいに消費してくんだよ。

　予算に余裕はあるが、いくらなんでも飲み過ぎだ！

　途中から制限したら、二人とも絶望の表情を浮かべていた。知るか！

・食後のチョコレートケーキ。

　エルフ産の最高級カカオと、ＳＨＯＰ全開で作り上げたケーキは、女性陣に絶大なる支持を得た。

　実はピラタス時代にケーキを作った事があるのだが、今回作ったのはそれを遙かに上回る美味しさなのだ。

　そりゃあ、喜ぶだろう。

　料理を運んでいたメイドさんたちが、その時ばかりは味見をさせてくださいと懇願してきたほどだ。

　前、試食してもらったのを覚えているのだろう。その時も大変な惨事になっていた。

　料理人とメイドさんたちの分は、ちゃんと余分に作ってあるから、そんな血走った目で迫ってこないで！

　他にも大量の料理を並べてやったが、概ね好評だった。

　それにしても、みんな食べたなぁ。

「お兄ちゃん……やっぱり好き」

「はいはい。お前が好きなのは俺じゃ無くて、俺が作る料理だろ？」

「ナルニアさん。呼び方」

「あ！　ごめんなさい！　チェリナ様！　失礼いたしました。アキラ様」

「うーん。アキラ様かぁ……」

「慣れてください」

　ナルニアに若旦那様とか呼ばれるよりはマシか。

　チェリナのお付きメイド見習いなら、致し方ないところか。

「チェリナ、俺は歓迎なんだが、ナルニアだけ特別扱いで良かったのか？」

「ナルニアさんは休日扱いですし、他のメイドからも妹のように可愛がられているので問題ありませんよ」

「ならいいんだ」

　俺の言いたいことを即座に理解するチェリナ。

　いじめられてないならそれでいい。

　休日扱いでも、それなりに仕事をさせていたのは、その辺の考慮もあったのだろう。

　立食パーティーが終わった後、カルゴお義父さんと話し合う。

「すでにアトランディアで何をするかの説明はしてますが、本当にやってかまいませんね？」

「ああ、かまわない」

「失敗したら、世界最大の国家での商売を諦める可能性が高いですが」

「元々、遠すぎて手が出せない地域だったからね」

「シフトルームが完成したんです。実質的には近所になりますよ」

「わかっている。だが、親としての感情だけでなく、商人としての魂も、アキラ君を応援したがっている」

「かなり、無茶をする予定ですよ？」

「ああ。好きにやりなさい」

「ありがとうございます」

「最初に話を聞いた時は、驚いたがね」

「それはそうでしょう」

「なんといっても、アトランディアに支店を建設する際、商業ギルドに加盟しないなんてね」

「常識から逸脱していますよね」

「ああ。……だが魅力的だ。壊してきなさい。常識を」

　そう。

　アトランディアにヴェリエーロ商会を作る予定なのだが、その時、商業ギルドに加盟しない事に決めていた。

　アッガイと、アトランディアの法に詳しい部下、チェリナとラライラと、徹底的に調べ上げたが、商売する際に、商業ギルドに加盟の義務は無かったのだ。

　もちろんデメリットが多々あるのだが、その辺もほぼ、解決済みだ。

　商業ギルドに入ることで得るメリットは、他の商会との繋ぎ、原材料や流通の利用。両替、金銭の借り受け、闇組織に襲われにくい、などなど。

　逆に言えば、ギルドに加入せずに商売すれば、これらの件が全て逆に働く。商業ギルドは全力で潰しにくるだろう。

　だが、それすらも利用させてもらうつもりなのだ。

　気にくわないものは、全部ぶっつぶす。

　そう、心に決めて、俺たちは、こうして経済自由都市国家テッサをあとにした。