そして、1週間が経過。

ようやく一軒家の鍵を建物斡旋所から受け取った。

メイヤ邸から私物を馬車で運び込む。

スノー&クリスが買った家具類も運び込まれたので、事前に決めていた場所にさっくり設置した。

3人共肉体強化術が使えるため、クリス1人でも大型ソファーなどを運べたり出来る。

作業が早く進んで便利この上ない。

午前中で荷物を片付け終えると、昼食は軽く済ませる。

午後一杯使って、パーティーの準備に取り掛かった。

メイン料理担当はスノー。

クリスは料理経験がないため、オレと一緒にデザートを担当する。

彼女達に評判がよかった『プリン』と『ミル・クレープ』を作る予定だ。

料理を作り終え、一段落付き休んでいるとメイヤが尋ねて来る。

彼女は予告通り、酒精を持ってやって来た。

最初は手ぶらで来るよう話していたのだが、メイヤ自身引越祝い的な物を渡したかったらしい。そこで飲み物を頼んだ。

折角だから、景気付けに酒精を持ってくると彼女が予告した。

テーブルにはスノーが作った料理が並ぶ。

シチューにサンドイッチ、サラダ、肉料理など。

デザートには冷蔵庫にしまっている『プリン』と『ミル・クレープ』が待ち構えている。

オレ達はメイヤが持ってきた酒精――果実酒の栓を開け乾杯した。

スノー&メイヤは酒精体験済み。

オレ&クリスは初めてだったので、メイヤは甘口の果実酒を持参してきた。

美味しい酒精を飲みながら、愛妻の手料理を口にする。

楽しい会話を交わし、気付けば時間も大分経っていた。

メイヤが席を立ち帰宅すると言う。

「何言ってんだよ。今日は泊まって行くんじゃないのか? そのつもりで客室にメイヤ用のベッドメイキングも済ませてあるのに」

「お心遣いありがとうございますわ。けれど、今日は引っ越し初日。わたくしも流石にそこまで野暮ではありませんもの」

「?」

彼女の言わんとする意味が分からず首を捻ってしまう。

3人でメイヤを見送った後、彼女の言葉の意味に気が付いた。

(そ、そうか! 今夜は自宅に自分達しかいないんじゃないか!)

結婚を口にしてスノーは約6年、クリスは数ヶ月。

だが、ずっとエッチなことはしてこなかった。

理由として他人の家だったり、嫁の実家だったり、旅移動の安宿だったりしたからだ。

さすがに互いの初めてがそれでは嫌過ぎる。

しかしここは我が家! 何をしても許されるし、邪魔者はいない!

本当に今更ながらスノーの分別、自立という言葉の意味を理解する。

確かにメイヤがお金持ちだからと言って、衣食住をおんぶに抱っこはやり過ぎだった。今ようやく反省する。

「それじゃわたしとクリスちゃんは簡単に片付けた後、お風呂入ってくるね」

『スノーお姉ちゃん、一緒に体を洗っこしましょう』

「うん! 楽しみだね」

2人は仲睦まじくテーブルを片付け、お風呂へと向かう。

お風呂と言っても、金属製のかなり大きな器にお湯が入っていて、お湯を浴び体をタオルで拭くというものだ。

メイヤ邸のお風呂とは天と地ほど違う。

(まぁゆっくり湯船に浸かりたかったら、メイヤの屋敷に行けばいいだけだし)

オレ達なら彼女の屋敷はフリーパスで出入り出来る。

スノー&クリスがお風呂に入っている間、オレは落ち着かなくソファーが置いてある居間をうろうろと歩き回っていた。

(この場合、ベッドに行って準備しておいた方がいいのだろうか? 大体、コンドームとかこの世界にあるのか? 見た覚えは無いぞ……いや、そういう関係の道具に触れる機会が今まで無かっただけで、もしかしたら存在するのかもしれない! だとしたら男として、彼女達の代わりに買っておくべきだった!)

まさか今、夜中に家を飛び出して閉まっている道具屋の扉を叩く訳にはいかない。

第一道具屋に置いてあるのかも分からないのに。

(大体、今日初めてするとしてスノーとクリス一緒にするのか? いや、でも今夜はスノーだけ、クリスは明日じゃ色々角が立つだろうし……。だったら、2人を寝室と客室に分けてそれぞれオレが出向くとか? だが、1人だけ客室で待たせて、その間に1人と初めてを経験するなんて逆に気まずいだろ……ッ!)

ソファーに座ったり、歩き回って悶々と悩んでいると2人がお風呂から上がってくる。

「リュートくんお待たせ、お風呂あがったよ」

スノーは白、クリスがピンク色のパジャマを着て居間に顔を出す。

新居記念に2人はお揃いで色違いのパジャマを揃えたのだ。

彼女達はまるで姉妹のように仲が良い。

『先に寝室で休ませてもらいますね』

「……了解。僕も風呂から上がったら行くよ」

2人の態度で察する。

今夜、エッチは無いだろう。

2人一緒でベッドに向かってるし、態度も淡泊だ。

期待していた落差、準備不足だったため中止になった安堵感などが複雑に絡み合う。

風呂場へ入る。

お湯はスノーが入れ直してくれていた。

大きな器には並々と湯気が昇るお湯が入っている。

オレは桶で体を2、3度濡らし、タオルと石鹸で体を洗う。

頭も流してから、器のお湯を空にして壁に立てかけた。

風呂から上がり、タオルで体の水滴を拭う。

スノーとクリスが準備してくれていた、お揃いのパジャマに袖を通す。

風呂場の魔術で灯すランプを消し、2階の寝室へと上がる。

メイヤ邸では各部屋1人ずつ割り当てられていた。

ブラッド家でもだ。

たまにメイヤ邸で3人一緒に寝たりした。

その時は手を出すことも出来ず、自重した辛い記憶しかない。

(自宅だけどエッチなことは無いだろうから、またあの苦しみを味わうのか……)

やや重い足取りで、オレは寝室の扉を開く。

だが、寝室はランプも灯さず暗いままだった。

もう2人とも眠ってしまったのだろうか?

「? スノー、クリス? 寝室の明かりまで消して、もう寝ちゃったのか?」

「大丈夫、まだ起きてるよ。早く、扉閉めてこっちに来て」

スノーの返答&指示に疑問を抱きながらも従う。

扉を閉めると完全に暗くなる。

思わず目に魔力を集中。

夜目を強化した。

「!?」

寝室には天蓋付きの大型ベッドが置かれている。

大人が5人ぐらい寝てもまだ余裕がある大きさだ。

スノーとクリスが気に入り、満場一致で買ったベッド。恐らく、買った家具の中で一番高いんじゃないだろうか?

そのベッドに2人の少女達が肩を寄せ合い『ぺたり』と座り待っていた。

しかも2人は先程のパジャマではなく、上はネグリジェに下は紐で左右を止めるタイプの下着を履いている。

スノーが白で、クリスがピンク。

先程のパジャマと同じデザイン、色違いの姿だ。

2人は下着以外身に付けず、清潔なシーツの上に座ってオレが風呂から上がるのを待っていたらしい。

思わず夜目を強化してしまう。

スノーはいつものポニーテールを解き、銀髪を背に流している。いつものネグリジェより白い肌を湯上がりではない理由でほんのり赤く染め、ベッドの上からオレを見詰めている。いつもの歳の割りに子供っぽい彼女が、今は瞳を潤ませ女の顔をしていた。ネグリジェを下から押し上げる胸は、いつも衣服から見るより大きい。Fはあるんじゃないのか?

そんな美味しそうな果実を、スノーは恥ずかしがりながらも隠そうとはしない。

一方、クリスはやはり隣に座るスノーと比べると体型が幼い。胸も薄く、太股も細い。

青い果実のクリスだが、その表情は色気に満ちている。いつもの無垢な微笑みを不安と期待に満ちた目で、オレを待っている。彼女の体を包むピンクのネグリジェ、左右を紐で止める下着――一見、彼女に不釣り合いだと思うかもしれない。しかし逆にその不釣り合いな下着が、幼い肢体にある禁断、魔性度合いを加速度的に増加させるのだ。

そんなとてつもない美少女、しかもタイプの違う2人が同時に自分を求めてくる。

「スノー、クリス……」

甘い夢を視る夢遊病患者のようにふらふらと彼女達に歩み寄った。

ベッドに辿り着くと、2人はコロンと寝ころび、恥ずかしそうにおねだりしてくる。

「わたしを美味しく食べて欲しいワン」

『お兄ちゃんにいっぱい愛されたいです』

スノーが昔、怒っていた犬語で話し、クリスがモジモジと細い太股を擦り合わせる。

理性の鎖が引き千切れるのは当然だ。

オレは前世を合わせたら単純計算で魂年齢41歳。

2人同時に嫁達との初夜を迎えた。