Gun-ota ga Mahou Sekai ni Tensei Shitara, Gendai Heiki de Guntai Harem o Tsukucchaimashita!?
Military Ota 7 Volume Launch Celebrate Update SS Barney's Clerical Handling
わたしは魔人種族、3つ眼族、魔術師B級のバーニー・ブルームフィールドです。
わたしの幼馴染みで親友のクリスちゃんが、旦那様のリュートさんが立ち上げた軍団(レギオン)、PEACEMAKERに入団しました。
そのため魔人大陸にある魔術師学校を卒業したわたし達――ケンタウロス族のカレンちゃん、ラミア族のミューアちゃんと一緒に『せっかくだから』とクリスちゃんがいる軍団(レギオン)に入団する決意をしました。
入団試験は大変でした無事に入ることができました。
そして今、わたしはPEACEMAKERの事務仕事の一切を担当しています。
実家が両替業を営んでいたので数字には強く、体を動かすより机に向かってカリカリとペンを動かすのが合っているので仕事自体に苦労を感じません。
問題があるとすれば――
「一枚、二枚、三枚、四枚、五枚……一枚足りない!」
わたしは思わず声をあげてしまいます。
現在、事務室で一人、机に向かい領収書と格闘していました。
ルナちゃんから貰った兵器研究・開発に使用した金額と、領収書の総計が違います。たぶんルナちゃんの提出忘れです。
「後で研究室に行って出してもらわないと。ついでにもう少し研究費を抑えられないか訊いてみよ……」
わたしは領収書の束から顔を上げ、椅子の背もたれに体を預けて目頭を指でもみます。
現在、PEACEMAKER(ピース・メーカー)の主な現金収入は以下の通りです。
●ココリ街治安維持金(街の税金から支払われている)
●リュートさんが権利を持つリバーシ、他玩具の純利益の一部
●リュートさん達のグッズ代金
●勇者印利用料
●冒険者斡旋組合(ギルド)からクエスト報酬
『リバーシ、他玩具の純利益の一部』は本当の意味では、リュートさん個人のお金ですが、本人から活動資金として使ってもいいと許可を頂いています。
こうしてみると現金収入が多くあるように見えますが……PEACEMAKER(ピース・メーカー)も新規団員を約100人も採用し規模が大きくなったりして、実は意外と出て行くお金も多いのです。
たとえば――
●各団員達の装備品、衣食住、訓練費、給金など
●装備一式の維持費&消耗品(飛行船や大型兵器の維持費も含む)
●冒険者斡旋組合(ギルド)に納める軍団税
●研究・開発費
●特別資金、外交費
――などなど。
最後の『特別資金、外交費』は、ミューアちゃんが使用する資金です。
外交の基本は『抱かせて、食べさせて、ばらまく』が基本。
表沙汰にできない情報取得、人手使用のための費用など――帳簿上に残せないお金というのも存在します。
だからミューアちゃんに関しては、彼女が請求する分だけ資金をまわしていたりします。
それなりにお金は出ていくけど、この程度で皆の安全に繋がる情報が手に入るのなら安いモノです。
それにミューアちゃんなら性格上、資金を横領するため虚偽の報告をするタイプじゃないから安心できるし。
他にもお金がかかるのはやはり、最初の方で言っていた『研究・開発費』です。
かなり特殊な魔物の素材――ゴムという素材代わりの『毛無熊』、無煙火薬の代用品研究素材として『火炎龍の延髄』、魔術液体金属に代わる素材の研究・開発代金etc、言い出したら切りがないです。
さらに軍団(レギオン)大々祭(だいだいさい)以降、団長であるリュートさんが、『多脚戦車?』という兵器を開発するということで、資金をさらに投入。多々出費が嵩んでいます。
さらに――団員が増えたことで将来的に、わたしは知らないけど昔の純潔乙女騎士団のようにココリ街以外にも支部を建てたいという話が上がっています。
簡単に言うけど、支部を建てるのもただじゃないんですよ?
そりゃ今、波に乗っているPEACEMAKER(ピース・メーカー)の下部軍団であれば大抵の街や領地から諸手をあげて喜ばれるでしょう。
でも入ったその日にお金がすぐもらえるわけじゃないのです!
建物だって最初は賃貸でお金がかかります。
椅子、机、ソファー、調理器具、カップ、家具一式etc――物を揃えるのもお金がかかります。
さらに支部へ向かう団員達も霞を食べて生きるわけではありません。
さらにさらに各周辺の挨拶回り、交際費、移動費、維持費だってかかります。
『人数が増えたから支部を建てる』と言われても、そう簡単じゃないのです!
でも将来的に、どう考えてもココリ街だけで増える団員達を食べさせてたり、維持していくことはできません。
だから『支部費』というものを作り、毎月一定金額プールしています。
他にもいざと言うときのための資金を溜め込んでいます。
「はぁ、どうしてお金が増えるとその分、出て行くお金も増えるんだろう」
わたしは思わず溜息をつきます。
収入が増えると、なぜか出費も増えるのです。
あははは、考えると頭が痛くなってきます。どうしてなんでしょうね?
「さて、いい加減、お仕事しないと!」
わたしは改めて気合いを入れ直し、仕事に取り掛かります。
時折愚痴を言うことはありますが、こうしてカリカリと机に向かいペンを動かすのは性に合っています。
途中、一枚の書類が紛れ込んでいました。
「これは……『ウォッシュトイレ新・販売計画書』? ああ、リュートさんのか」
どうやら我が軍団の団長であるリュートさんが書いた企画書のようです。
軽く目を通すと、『ウォッシュトイレ』が今後どれだけ売れるのか予想数が書かれていました。
十分利益が見込めるので、資金が欲しいという内容の企画書ですね。
「大々祭(だいだいさい)で一台売れたからって、こんな倍々どころか、天文学的数売れるわけないよ……。リュートさんは優秀な人なのに、どうしてトイレが絡むとアレになるのかな……」
わたしは呆れながら没の棚に企画書を放り入れます。
時間を無駄にしてしまいました。
仕事を続けます。
――再び、手が止まりました。
「これって……メイヤさんが連れてきた演奏者さん達の出演料だよね? なんでこんなに安いんだろう?」
大々祭(だいだいさい)で人質を取り立て籠もった犯人達。
彼らから人質を救い出すため、ステージでガンプレイをする予定だったPEACEMAKER(ピース・メーカー)でしたが、急遽音楽演奏に切り替えました。
大砲の音に合わせて建物に突入し、一気呵成に攻めて犯人達を取り押さえるという作戦です。
その際、メイヤさんのツテで急遽、演奏者さん達がステージに立ったのですが、その際の出演料が異様に安いのです。
「実家でもパーティーとかで演奏をお願いする時があったけど、それの半分以下? でも即興で最後の大砲に合わせる音楽を演奏できるあのレベルのトッププロ集団ならもっといくよね。だとすると通常の十分の一以下ってことかな?」
おおよその概算を弾き出します。
異常に安い金額。
安すぎて『経費削減できて嬉しい!』より、怖いという気持ちが先立ちます。
これ本当に大丈夫なのかな……。
先程のリュートさんの企画書とはまた違った頭痛を覚えました。
そんな風に疑心暗鬼に陥りながらも、領収書&書類整理を終えます。
リュートさんのチェックと確認サインなどもありますが、基本的にはこれでお終いです。
「ふあぁ~今月もこのペースならなんとか予定の枠内に収まりそうだよ」
わたしは肩のこりをほぐしながら、安堵の溜息をつきます。
戦闘とは違う自分の頑張りと調整が上手く行く感覚は、事務仕事でしか味わえないものだと思います。
コンコン。
扉からノック音。
返事をすると、クリスちゃん、ミューアちゃん、カレンちゃんが顔を出します。
『バニちゃん、お仕事どうですか? 終わっているなら晩ご飯一緒に食べよう』
「うん、ちょうど終わったところだから大丈夫」
「ならタイミングがよかったな。腹も減ったし早速食堂へと行こう!」
「あっ、ちょっと待ってカレンちゃん」
わたしは領収書の一枚を取り出し、カレンちゃんへと笑顔で差し出します。
「この飲食代は経費じゃ落ちないよ。だから返すね」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 新規に入団した団員達との交流を深めるために使ったんだ! 十分経費の範疇だろ――」
「駄目だよ」
にこにこ。
笑顔を崩さず断言します。
ここで手を弛めてはいけません。
「い、いや、しかしだな」
「駄目だよ」
「だが――」
「駄目だよ」
最終的にカレンちゃんが折れます。
領収書を受け取りながら涙目で『次の給金まで外で飲み食いできん……』と呟きます。
カレンちゃんはすぐに部下達にごちそうする癖を直した方が良いと思う。
「それじゃ話も終わったみたいだし、食堂へといこうかしら」
区切りのいい所でミューアちゃんが告げます。
そしてわたし達は食堂へと向かいました。
珍しく幼馴染み4人だけで夕食を摂ります。
普段は皆それぞれ忙しくて時間が合わなかったり、他の子達も一緒に混ざって食べたりします。
なので軍団に入ってから『4人だけで食事』というのは稀だったりします。
今日の仕事を終え、空っぽのお腹に温かなシチューが流れ込むと普段以上に美味しく感じます。
また幼馴染み4人で仕事の話や休日の過ごし方、今後の予定などを話しながら食べるとさらにご飯が美味しくなりました。
楽しく食事をしていると――
「バーニーちゃん、ちょうどよかったよ」
「スノーさん?」
リュートさんの奥さんの一人、白狼族のスノー・ガンスミスさんが装備を装着したまま食堂に姿を現します。
今日は確かスノーさんの指揮する分隊が実戦訓練として冒険者斡旋組合(ギルド)にクエストを受けに行っていたはず。
彼女は一枚の封筒を取り出すと差し出してきました。
「これ、受付嬢さんにお願いされてバーニーちゃんにって」
「ありがとうございます。すみません、わざわざ」
「平気だよぉ。むしろ食堂を通りかかったら、バーニーちゃんの匂いがしたから。事務室まで行かずにすんでよかったぐらいだよ。それじゃわたし着替えてくるからまた後でね」
クリスちゃん達にも手を振り、スノーさんが食堂を後にします。
クリスちゃんは可愛いけど、だけどスノーさんも滅茶苦茶可愛い! さらに胸も大きくて、運動神経もよく、魔術師Aマイナス級の実力者。
色々凄すぎてコンプレックスすら抱く余地がないよ。
「バニ、どうかしたか?」
「あっ、ううん、なんでもないよ。ちょっと封筒を確認するね」
カレンちゃんに声を掛けられ、話題を逸らすため封筒を開けます。
でもこうして他団員がクエスト後に帰宅するからといって封筒を預かるのは珍しい。
普通は月ごとに纏めて受け取るか、緊急性の高いのは冒険者斡旋組合(ギルド)員が持ってくるはずなんだけど……。
封筒を開き、手紙に書かれている内容を確認します。
「――はぁぁぁぁぁッ!?」
思わず食堂にいるのも忘れてわたしは絶叫してしまいました!
「あらあら珍しいわね。バニが人前で大声を出すなんて」
『ば、バニちゃん、手紙にはそれほど重大なことがかかれていたのですか?』
わたしは幼馴染み達に声をかけらえてもすぐには反応できませんでした。
頭が真っ白になり、耳に入らないからです。
じれたのか、カレンちゃんがわたしの手から手紙を取りました。
「なになに……魔術液体金属の購入金額が値上がりするようだな。しかも、今までの二倍に」
『二倍ですか!? 値上がり過ぎではないのですか!』
「なんでも最近、なぜか需要が滅茶苦茶にあがっているらしいぞ。なにかあったのだろうか?」
「ああ」
ミューアちゃんが手を叩きます。
「そういえば大々祭以降、魔王討伐もあって各国が銃器に俄然注目しているらしいわよ。だから、自国でも研究しようと魔術液体金属を我先に買いあさっているって情報があったわね」
『そんなことになっているのですか』
「しかし、リュートならようやく魔術液体金属が注目されて喜んでいるのではないか?」
「それはありそうね。聞いた話じゃリュートさんが子供の頃、魔術液体金属の素晴らしさをエル先生に話したら首を傾げられたって嘆いていたらしいから。本当に注目が集まって喜んでいるかもしれないわね」
『あははは!』と皆が笑う。
「……ところでバニ、一つ尋ねていいか?」
カレンちゃんがわたしに向き直り指摘します。
「オマエ、瞳孔開いてないか?」
あははは、そりゃ開きもするよ。
だってこれから最も消費するだろう魔術液体金属のお値段が二倍になるんだから。
つまり、今までかかっている経費が二倍になるってことだよ?
そりゃ、瞳孔も開くよ!
『あの、バニちゃん、どちらに行くのですか? まだご飯が途中じゃ……』
夕飯の途中。
ふらりと食堂を出ようとするわたしにクリスちゃんがミニ黒板を見せてきます。
そんな幼馴染みにわたしはちゃんと答えてあげました。
「何って、決まってるでしょ? 今から魔術液体金属を購入する各国を潰しに行くんだよ。今までよりお値段を二倍に高騰させているクソったれな各国共を……ッ」
「は、ははは! バニ、冗談が上手いな。ちょっと値段が上がっただけで国を潰すなんて……おい! 食堂に居る全員で取り押さえろ! こいつは本気で他国を潰すつもりだぞ!」
幼馴染みだからこそ分かる本気。
他に食事をしていた団員達は、カレンちゃんの掛け声にすぐに反応できず、狼狽えていました。
唯一、動いたのはクリスちゃん&ミューアちゃんです。
彼女達は真剣な――それこそ暗殺者を目の前にしたような動きで取り押さえにかかります。
あははははははっは! 流石、幼馴染み! こちらの動きを全て察知して潰すなんて!
でも逆を返せばクリスちゃん、カレンちゃん、ミューアちゃんの動きや思考もわたしには丸わかりなんだよ!
「……なんでクリス達はバーニーを相手取って食堂でガチバトルをしてるんだ?」
「あの……バーニーさんいつもと違っておかしくないですか?」
「素晴らしい動きですね。あの相手を知り尽くし、視線とフェイントだけでコンビネーションを潰し、力を削ぐ動き。自分の部下達に見習わせたい近接戦闘技術です」
『リュートお兄ちゃん達! 感心していないでバニちゃんを止めるの手伝って!』
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はい、リュート・ガンスミスです。
あの後、食堂での後日談をお話ししたいと思う。
クリスに請われ、オレとリース、シアは疑問を抱きながらもバーニーを取り押さえようとした。
しかし普段の穏やかな彼女とは違いその動きは解き放たれた野生の獣――いや怪物的動きだった。
近接戦闘を得意とするシアを圧倒し、後半は銃器で武装したオレ、クリス、リースすら翻弄。
途中でスノー、ココノ、他団員達に武装させ飛行船ノア・セカンドを強奪される寸前でなんとか拿捕することに成功した。
いつも心優しく、穏やかな彼女がどうしてあんな風になってしまったのか……。
いや、そう変えてしまったモノの存在は理解している。
『お金』だ。
本当にお金とは恐ろしいものだ。
あそこまで人を変えるのだから……。
ちなみに普段は事務員だが、あまりの戦闘力の高さにシアが『是非、護衛メイドに!』と勧誘しているとかしていないとか……。