Half-elves Fall in Love

Summer Spirit Festival 24

乱交は日も昇りきり、外の片付けの音が聞こえてくる頃合いになってようやく終わった。

そんな時間になってもあんあんと声が響いていたのは止めなくて大丈夫かなと思ったけど、終わってからノールさんに聞くと「精霊祭の翌日の朝にまだ頑張ってるなんて、むしろ仲睦まじくて羨ましいわって言われるものよ」とサラリと流した。

防音の魔法とかで抑えればよかったんじゃないかと思ったけれど、雌奴隷ズも娼婦の皆さんも喘ぎ声を別に隠すつもりはなさそうなので、とりあえず俺は俺で射精に集中させてもらった。

ほとんどみんな魔法は使えるんだから、気になったら自分で魔法唱えるだろうしね。

人数が多かったので二周ぐらいしかできなかったが、それでも40発近く射精したことになる。

実際はもうちょっと少ないかな。ミラ嬢たち三姉妹は結局は二度目の挿入に至らなかったし。

でもさすがにフラフラだ。昼間にステージ裏でヤリまくっていた分と合わせると、数えるのもバカらしい回数の射精をしていた。

「射精量の関係でどうしても憔悴しちゃうわよねえ、こういうビッグイベントの後は」

「たまに自分の体がどうなってるんだろうと思うことはあります」

「今は私のサポートがあるからなんとかもってるけど、まともな人間だったらとっくに赤玉よね☆」

細かくヒルダさんが魔法で調整してくれたおかげで、射精ができなくなるということはなかったが、ある意味そういうブレーキあった方がいいんじゃないかと思う部分もある。

今の俺、なんかこう民話の怪物みたいなことしてるよね。一晩で何十人も孕ませる(かもしれない)とか。

ヒルダさんの腕次第だが、下手したら一日で100人に中出しとかバカみたいな記録も狙えるんじゃないだろうか。

……そんなことして何になるんだ、という部分は置いておくけど。

まあ相手の人数が多いと、さすがに一度に何人も触っているとは言っても個々人の消耗は少ない。雌奴隷や娼婦が二発や三発でグロッキーなんてことはありえない。

……いや、まあアルメイダだとあり得るけど、アルメイダは今は遠く青蛇山脈の向こうだし。

俺はフラフラしてたけど女性陣は「いい朝ねー」なんて言いながら元気に出ていく。

で、俺はおぼつかない足取りを裸エプロンのメイド長さんとメイドさんに支えられ、部屋を出る。

「昨夜は『そういう日』だったからそんな恰好でも良かったっていうけど、さすがにこのまま食堂まで支えてもらうわけにはいかないよね」

数歩歩いたところで俺は彼女らの手を離れて歩こうとするが、メイドさんたちは「お気になさらず」とすぐ支え直す。

「途中にも他のメイドが控えておりますので彼女らに交代いたします」

「ああ、そうなんだ……」

そうしてヨタヨタと歩いていくと、別の部屋の扉がちょっと開いていた。

そういえば脱衣ポーカーってこの建物でやってるって言ってたよな……と思い、その中が気になってしまう。

そんな俺の物欲しそうな顔を汲んでくれたのか、メイド長さんが頷いてその扉に近寄らせてくれて、そして扉の中をそっと覗きこませてくれる。

ほとんど下着か裸のダークエルフ女性たちが、カードと陶ジョッキの散乱するテーブルに突っ伏したり床に転がったりしてみんな眠っていた。

「おお……」

「みなさんほとんど昼まで寝ていますよ。お酒も入っていますからね」

「でも見せてくれてよかったのこれ」

「昨晩の乱交をこのうちの何人かはこっそり覗きに来ていましたので、おあいこでしょう」

マジで。覗かれてたのか俺たち。

「お好みの女性がいらっしゃいますか?」

「それを聞いてどうするのか」

「なんなら起こして空き部屋に連れ込んで口説くという流れもあるのではないかと」

「あんたら使用人(メイド)でこの転がってる人たち主人の家族だよね?」

「精力絶倫のお客様と独り身を嘆く彼女らの間では、必ずしも害のある提案というわけではないと思いまして……」

「カルロスさんに聞かれたらクビにされるよ!?」

あと、俺今まさにヤリ過ぎでふらふらになっているというのを忘れないでほしい。

建物を出たところで別のメイドさんたち(ちゃんと服着用)に俺のエスコートを引き継ぎ、彼女らは部屋の片付けに戻っていった。

そして食堂につくとカルロスさんとアシュトン大臣が若干やつれた顔で食事していた。

「おはようございます」

「やあおはようヒューマン」

「……なんぢゃ、雌奴隷などと言い張って女をしこたま囲ってその体たらくか。手に余っておるようぢゃの。情けない」

「20人相手はさすがにキツかったです」

「……!」

「ぶほっ」

20人という数字を聞いて、カルロスさんは耳を疑う顔で俺を二度見し、アシュトン大臣はむせた。

「まさかコスモス君たちも全部相手にしたのかい!?」

「そうでないと収まりがつかない企画だったんで……」

結局「勝負」というのは途中から誰も気にしておらず、盛大な乱交楽しかったねーで済まされていたけれど。

当の雌奴隷たちやコスモス本舗の娼婦たちはみんな仲良く食堂の奥の方で朝ごはんをいただいている。

「よくそれで平然と……ま、まあ腐れヒューマンの無節操下半身ならおかしくはないかもしれないな」

「若い人間族の性欲は想像を絶するのう……滅ぼした方がいいのではないか」

なんか不穏なことを真顔で言っているアシュトン大臣だったが、いつの間にか寄ってきていた女性たちに後ろから肩に手を置かれてビクッとする。

「性欲が続くならいいんじゃないのかしら。ウチの旦那様はツバつけるだけつけてすぐヘコたれてしまうし」

「婚儀を挙げた妻の求めを袖にするくせに、独占欲だけ強い誰かよりは、よほど誠実と思う」

「いや待て。体調というのもあるぢゃろう。それにワシはこれで結構忙しくてな、お前たちの求めるタイミングに体力が残っておるとは必ずしも」

「そんな言い訳がすらすら出るくせに、年甲斐もなく若い妻をどんどん迎えるから子供たちの目が冷たいのですよ」

「むぐぐ……ど、どんどんとは言うが、百年に一度くらいしか結婚しておらんぢゃろ……」

「充分過ぎます。900歳も下の女まで娶っておいて抱かぬ言い訳ばかりとは見苦しい。それでいて商売女にはすぐ手を付けて」

アシュトン大臣も苦しい立場のようだ。

カルロスさんも弁護はしないところを見るに、あまり正当な言い訳ができる話でもないっぽいな。

そして糾弾していた大臣の奥様方は、それから一転、俺に色っぽい視線を向ける。

「それにしても……一晩で20人も相手にするなんて。聞けばそれも二周したとか」

「体力もそうだけれど、その果てしない肉欲はタルク向きかもしれない」

「ウチの旦那様が腑抜けたことばかり言うようなら、私もこちらの彼に乗り換えてしまおうかしら」

うちの雌奴隷たちみたいな小娘ではないけれど、ダークエルフなので十分に若く魅力的な女性たちが、俺をうっとり見つめて舌なめずりする。ちょっと胸が高鳴る。

大臣への当てつけなのはわかってるけどさ。

で、当然大臣は慌てる。

「ま、待たんか! そんなのは許さんぞ!」

「ヘタレで子作りもおろそかな旦那様ではねぇ」

「オーガたちはいつでも、より強い者、魅力的な者が意中の相手を奪い取るという。タルクはオーガとダークエルフの分け持つ都市、彼らに倣(なら)うべき部分もある」

「奴らの真似しとったら立ち行かんわ! オーガの力とダークエルフの知性でタルクは持つのじゃろうが!」

「知性を標榜するなら責任はしっかり果たしませんとね♪」

「……うぅ」

イジメられてる。よわい。

「こんな風に妻が多いとにっちもさっちもいかない。だから僕はナンシーだけにしているんだ。腐れヒューマン、いずれ君も後悔するぞ……そういつまでも、若さゆえのアドバンテージで女性を抑えてはいられないぞ」

「いや、まぁ……確かにウチの雌奴隷たちが好き勝手言い始めたら俺ではどうしようもないですが」

そもそも抑えてるつもりもないんだけどなー。雌奴隷たちはみんないい子だ。

と、そこで奥からナンシーさんが戻ってきて(雌奴隷ズの話に混ざっていたらしい)、カルロスさんに反論する。

「彼は義父上(ちちうえ)とは違うよ、カルロス。なんといってもディアーネがいる」

「ディアーネがなんだっていうんだい?」

「統率力に優れた子だ。見たところ、ドラゴンたちから北の氏族長に至るまで、ディアーネを軽んじている者はいない。あれほど一途で献身的な子が睨みを利かせれば、アンディ君が困るということもないだろう」

「うぬぬ」

「やはりズルいなこのヒューマン……」

大臣もカルロスさんも、ディアーネさんがお気に入りなだけにその評価は高く、ナンシーさんの推測に異を唱えられない。

実際ディアーネさんがいなかったらこんなハーレム状態には決してなってなかっただろうな。

セレンも、当初想定していたアップルとの二股はともかく、それ以外の相手までセーフの範囲を広げたのはディアーネさんと張り合った時期のおかげだろうし。

「やはりこのヒューマンを倒すにはなんとかしてディアーネを引き離さないと……いやしかしそれが一番の難題で……」

「のうカルロス。こういうのはどうぢゃ。幻影術でこやつの偽物を作ってなんとかして株を下げる……」

「ドラゴン相手にですか。非現実的では」

「お前は戦略というものが分かっておらんのう。直接見える範囲ではなく、本人のいない時期、いない場所で少しずつぢゃな」

ナンシーさんと大臣の奥方連合が呆れ顔で二人の頭を叩く。結構重い音がして二人は朝食に顔を突っ込んで動かなくなった。

「……ところで俺も朝食いただいていいですか」

「ああ。済まない。長話させてしまったね。すぐに用意を」

近くのメイドさんにナンシーさんが指示を出そうとすると、顔面パン屑まみれになったカルロスさんが起き上がってパチンと指を鳴らした。

「そ、それには及ばない。彼のための特別な朝食が用意してある」

運ばれてくる生野菜たっぷりボウル。

ナンシーさんは無言で目を細め、運んできたメイドさんに元来た方を指さす。退場。

「何帰らせてるんだい!?」

「私がいるのに懲りもせず……そんなのを繰り返すお前が本当に賢いのか最近疑っているよ」

「うわーん!」

カルロスさんもよわい。

「朝食をお持ちしました」

そして、ちゃんと着替えてきたらしいメイド長さんがカートで料理を運んでくる。

なんかの生き血らしい液体とか香ばしい肝焼きの山。

「これはこれでイジメじゃないかな」

「ヒルダお嬢様の指示ですので」

うわーん……。

朝食後、バウズに会いに行ったら部屋の前で仁王立ちしていた。

「……何してるのバウズ」

「帰れ」

「え、何で」

「今はユーファに会わせるわけにはいかん」

「いや、ユーファさんに会いに来たってわけでもないんだけど……じゃあバウズ、今後のこと話したいからちょっと来てくれるか?」

「ここを離れるわけにはいかん」

「……なんで」

「いかんといったらいかん。ユーファの腰が立つまでは待て」

……どうやら腰が抜けるようなことをしてしまったらしい。

「精霊祭だからって張り切っちゃったのか……」

「じゃ、邪推だ」

「じゃあヒルダさん呼ぶ? 別の要因で腰が駄目になってたら医者が要るだろう」

「……張り切ったのだ悪いか」

ユーファさんの名誉を守ろうとしてたんだろうけど、バウズの隠し事の下手さ加減はちょっとかわいいといえなくもない。

(続く)