Hisshou Dungeon Unei Houhou

Horizon 751: Welcome to the New World

お出迎え 新大陸

Side:ユキ

ざわざわ……ワイワイ……。

まだ朝だというのに、大会議場の一般入場口にはすでに人が並んでいた。

「徹夜は禁止って言ってあったよな?」

『深夜の報告はなかったですから、早朝からだと思います』

流石にほかの一般客との不公平さが出てくるので、トーリに確認を取ったのだが、実は合法だった。

『今まで何度かこういうイベントで、前例ありましたからね。ほら、年始の福袋とか』

「あー」

『あの時以来、指定時間前に並んでも見回りの警察が排除しますから。それにいうこと聞かないなら、逮捕ですし』

年始の福袋を始めてから、徹夜で並ぶ連中が出始めて、そういう対応を取ったんだよな。

というか、ある意味俺の為だったんだがな。

世のお父さんや彼氏が奥さんや彼女の為に、ただ立たされるという悪夢を避けるために、とった手段だった。

「しかし、そうなると、この人の列は朝の解禁から一気に並んだってことか」

『はい。そう聞いています。福袋レベルだって』

「そうか。ありがとう。そっちの仕事も頑張ってくれ」

『はい。ユキさんも頑張ってください』

俺はそう言って、トーリとの連絡を終えて、再び列を見る。

現在の時刻は朝8時。大陸間交流会議開催宣言と挨拶は11時の予定で、入場開始は9時からなのだが……見る限り、最後尾は……どこだ?

「最後尾はあそこですね」

リーアに言われてその方向を見ると、人が綺麗に正方形にならんで座っている場所がある。

「ユキさんはこういう光景はみませんか?」

「……ああ、あまり見ないな」

どっかのワールドシリーズとかクライマックスシリーズ、それか夏冬の有明かよ。

ただの大陸間交流会議開催宣言と挨拶にこれだけ人が集まるのが俺には不思議でならん。

家で寝てろよ。

「ともかく、中に入らないと始まりませんし、行きましょう」

とりあえず、リーアに後押しされて、気が引けてきた俺は裏口、要人が入る方から大会議場へ入って行くのであった。

「さて、会議場の準備はどうだ?」

「大体昨日で準備は終わっていますから、あとは最終確認ってところですね」

俺はさっそく会場の様子を見て回る。

あくまでも開催国はウィードになるので、俺が控室でのんびりというわけにはいかないのだ。

セラリアも今頃はスピーチの準備や、ドレスを着るのに忙しいだろう。

女性は大変だ。

「スラきちさんたちの部隊は?」

「既に配置済みだぜ」

そう言って、天井からぼとっと落ちてきたのは、我がウィード最強のスライム、スラきちさん。

本日は大会議場の隠密警備についてもらっている。

スライム系は魔力に応じて体積、つまり体の大きさを変えられるので、何かトラブルがあった際は防壁として機能してもらう予定だ。

無論、魔術もそれなりに使えるので、救護も兼ねている。まあ、一応救護室はあるが、スラきちさんたちだけで済むだろう。

というか、救護室に連れていくなら、俺たちの所にくるか、嫁さんのルルア、義理の妹のエルジュがいる病院行きのほうが確実だよな。

まあ、とはいえ、そこまで手が回らんとか、搬送が追い付かないとか、そう言う不測の事態の可能性もあるからな。

そういうことで救護室を用意している。無論、病院から医者、回復魔術師、看護婦を3セット連れて来ているので、一般客の体調不良は対応してもらえるだろう。

緊急搬送の部隊も用意しているし、抜かりはない。

「となると、後は軽食と飲み物の方か」

「そちらの搬入はこれからだ。ラッツの姐さんが持ってくるんじゃないか?」

「どうだろうな。朝、店でトラブルがあったみたいだからな」

売れすぎで困ることもあるんだよなー。

「ま、ラッツの姐さんじゃなくても、誰かが持ってくるだろうさ」

「そうだな」

ラッツが動けないからと言って、大陸間交流会議が止まることはない。

そういうことを考えて、お互いがフォローできる体制を作っているからな。

「何か問題とかはないか? 監視している各国方も含めてな」

「特に妙な動きはないな。ああ、カグラ嬢ちゃんたちが相変わらずいじめられているな」

「そこは良くないが、今はいい。ちゃんと手を打ってある」

「みたいだな。文句を言われても鬱屈している様子はなくなったからな」

どうやら、カグラたちも復讐心を糧に気力を取り戻しているようで何よりだ。

「あ、そういえば、大将がこっちに到着した時に、ローデイ王が捕まったみたいだぞ」

「あっそ」

あの放蕩王のことはもはやどうでもいい。

必要な時には出てくるからな。

3日前に来た時から、ウィードの商業地区で食べ歩き、遊び歩きで、行方不明を繰り返しサマンサがひーひー言って何度も探しに行ってたからな。

場所はコールで確認しているから、直ぐに見つけられるんだけどな。

「とりあえず、急を要する問題はこっちにはなさそうだな」

「あとは、やってみてだ」

「そうなるな。じゃ、俺は要人の迎え入れを開始するように通達する。警備頼む」

「おう、任せておけ。これから本番だからな」

俺たちは管理室へ戻って、連絡を始める。

「セラリア? こっちの準備はできたから、要人の迎え入れを開始するぞ?」

『あら? もうそんな時間? はぁ、まだドレスへの着替えが終わってないんだけど……』

「別にセラリアも入場には間に合うだろう? 事前挨拶は既に済ませているんだし、ドレスの着替え頑張れ」

『はぁ。動き辛いからゴテゴテしたのは嫌いなのよねー。とはいえ仕方ないか……』

どっかの紅白○合戦みたいに、物凄いドレスでもないから我慢してくれ。

セラリアの動きやすいって言うと、下手するとジャージとか着るからな。

まあ、そこら辺は、ちゃんと教育されていたのか、ドレスは難なく着こなすのが幸いだよな。

文句は言いつつも、こういう教養とか立ち居振る舞いはしっかりしている。

頼りになる嫁さんだ。だからこそ、ウィードの女王を任せられたんだがな。

『と、わかったわ。各国の大会議場への迎え入れを開始して』

「了解。各国に通達する」

ということで、各国の外交官へ通達をして、即時みんな動きだす。

「さ、俺たちは迎え入れるために、一旦入口へ行くぞ」

「「「はい」」」

そういうことで、俺たちは要人専用入口へ向かい、今回大陸間交流会議に参加する要人たちを待つことになる。

要人たちが泊まっているホテルからは専用バスがでるので、足が無いということはおこらない。

一応、各大陸ごとに宿泊施設はわけた。文化の違いからくるトラブルを避けるためというのが表向きな理由だが、一番の理由は食文化の違いもあるからだ。

もし、同じホテルに全員泊めると、ホテルや旅館が最低3種類の食事の対応に追われることになるという、俺たちの懸念から来る事情の方が大きかったが、実際はウィードの食事を気に入ってくれたので助かった。

そんなことを考えている内に、まずは最初に出発した新大陸のバスが到着する。

迎え入れの順番は、新大陸、ロガリ大陸、イフ大陸となっている。

理由はただ単純に人数、参加国の多さの問題だ。

新大陸の参加国は、ハイデン、フィンダール、ハイレ教の2か国と1教。

ロガリ大陸は、ロシュール、ガルツ、リテア、ルーメル、ラストの5か国。

イフ大陸は、ジルバ、エナーリア、エクス、ローデイ、アグウスト、ホワイトフォレストの6か国。

参加国が多ければ多いほど、バス移動とは言っても集まるのにも、確認にも時間がかかるというわけだ。

まあ、他にもタイキ君のランクス、ポープリのランサー魔術学府、ヒフィーのヒフィー神聖国、ミヤビのハイエルフの国と小国も参加しているが、そこはあとのバスになっている。

と、そんなことを考えている内にバスから、新大陸のメンバーがまずは降りてくる。

「ユキ。連れてきたわ!!」

「ユキ先生―!! 私たちがんばりましたよー!!」

「先輩。もっと静かにしないと、また五月蠅いですよ?」

随分鬱憤が溜まっているんだろうな。

俺の顔を見た瞬間、復讐のことを思い出したんだろう。

テンションが上がってしまったようだ。

だが、今はまだその時じゃない。もうちょっと我慢するようにと言おうとすると、降りてきたキャリー姫が先に口を開く。

「ソロの言う通りです。また、嫌みなことを言われますよ」

「別に構いません。もう、許すつもりはありませんから」

「そうです。証拠をバンバン集めて一気にやってもらいますから」

「先輩……」

「はぁ。仕方ありませんね。流石に今回は私も許し難いと思っているところですし、ですが、大陸間交流会議が台無しになるようなことは絶対にやめてください。ハイデンの立場がなくなります」

「「「はい」」」

流石にカグラたちも大陸間交流会議をぶち壊すほど、いじめてきた連中を挑発するつもりはないようだ。

「とりあえず。元気そうでよかった。最悪、こっちで引き取ろうかと思っていたところだしな」

「「「え?」」」

俺の言葉にカグラたちは驚く。

まあ、当然だよな。

だが、俺がカグラたちをかくまうことで、3人が大事なのだというアピールもできるわけだ。

ハイデンにとってもこの3人を排斥することは悪手でしかないと理解もできるだろう。

「そこまで3人のことを考えていただき、感謝いたします。そして、今日はよろしくお願いいたします」

「だな。俺たちもよろしくお願いするぞ」

「ああ。世話になる。ユキ殿」

いつの間にか、キャリー姫の後ろにハイデン王とフィンダール王が揃っていた。

護衛の騎士はいるのだが、こういうのはいいのだろうか?

あ、無論送迎バスは国ごとに分けている。

ということは、下りて仲良くこっちに歩いてきたってことか。

まあ、どっちが先かなんていいだしたらキリがないからな。お互い歩調を合わせているんだろう。

「はい。両陛下も姫様も、この度はこの大陸間交流会議に参加していただき誠にありがとうございます。と、硬い挨拶はこれで終わりとして、控室に案内するから、そこでのんびりしててくれ。注意事項は守ってな」

「わかっている」

「わざわざ、騒ぎを起こしてにらまれるつもりはない。が、ハイデンは大丈夫なのか?」

「……微妙だが、勝手に動いたら斬るといってあるから、内々に処理できるだろう」

「大丈夫です。どうせ、カグラたちをいじめてうっぷんを晴らす程度でしょうし、ウィードのことを小ばかにいていた分、大人くなるはずです。ユキ殿たちにいい顔をしようとして」

そんな会話をしながら、まずは新大陸組をご案内する。

「……ねぇ。ミコス。私たちって、あのまま気落ちしてた方がよかったのかしら?」

「……ユキ先生に匿ってもらえるなら、それがよかったけど。まあ、一時的なものになりそうだし微妙だよね。でも、悩むねー」

「……エオイド君やアマンダと自由に会えるっていいですよ」

後ろではカグラたちがそんな夢の話をしている。

気落ちしていたら、そんなこと考える余裕はないと思うがな。

まあ、それだけ回復したと思えばいいか。

俺はそんな感じで、新大陸国家の案内を終えて、次の案内へと移る。

はぁ、早く終わらねーかな。