I am The Black Tea Specialist Cheat of The Chivalric Order!

Mr. Fire Dragon, it's tea time, four.

きっと、何か火竜にダメージを与えてくれるだろう。

そう期待するものの、説明ができないので、驚いているふりをすることにした。

「何だこれは。お前が呼んだのか? ユラ」

団長様には疑惑の眼差しを向けられてしまったけれど、必死に首を横に振る。

「呼んでません、呼んでませんよ!」

これは本当です。だっていつ出てくるのかもわからなかったもの。

考えてみれば、クー・シーの時にも出現しなかったし。ダンジョンの時はソラが呼んだので、私は関係ないわけだし。

……もしかすると、クー・シーの時にもどこかでは戦っていたのかな?

とにかく私の真に迫った否定に、団長様もさすがにそれは違うと信じてくれたようだ。

「しかし精霊の言っていることがおかしい。精霊が自ら戦うなんてことは……」

と言っている間に、精霊達は戦闘準備を進めていった。

「はいバフー」

「飛べるようになった!」

「炎耐性ついたー。でも不安」

「じゃあ精霊の盾―……」

と言いながら、なぜかうさぎさん達が一斉に私を振り返った。え、まさか私にかけろということですか!?

「いいですよね? 団長様。よくわかんないですが」

「精霊のやることだからな……」

団長様がうなずいたのを待って、私はぽちぽちボタンを押して精霊の盾をかけていく。

魔法がかかったエフェクトが他の人に見えても、全部精霊さんのせいってことにできるので大丈夫だろう。

ただし精霊に精霊の盾という状況なので、精霊の数がぼわっと一気に増えた。

総勢12×5=60人の精霊が竜の背中に密集して、何が何やら……。

ただし精霊は楽しそうだ。

「わーい守ってねー♪」

「防御するよー♪」

なんて声が聞こえるし、お互いに手を叩き合っている。すごくほのぼの。

「しかし一気に12……いや17人分の魔法を……いやいや、元々非常識なことをする人間だからな……魔力量もおかしいわけだが」

団長様がぶつぶつと言っているのが聞こえる。

そこは魔女特典らしいので、団長様には慣れていただくしかないかと思います。

そして準備が整ったのか、一斉に手に持った剣や杖を振り上げた。

「じゃあ戦闘開始―!」

「いええええええぃ!」

「ひゃっはー」

「わーい」

ぽろぽろと落下して火竜に向かって行く。

私と団長様は、それを見守るしかない。

「戦闘ということは、あれは火竜を攻撃する……のだろうな」

ぼうぜんとした様子の団長様に、私はうなずいた。

「だと思います。たぶん放置していたら……火竜のあの防御を崩してくれるのではないでしょうか。その隙に誰かが一撃を与えたらいいのではないかな、と」

「……これはどういう状況なのか、つかめないが。とにかく利用させてもらおう」

団長様はそういう方向に、自分を納得させたようだ。私もそうしてくださった方がいいと思います。

団長様が、少し待てという合図を騎士さん達に送っている間、私はステータス画面で精霊達の会話を追って、状況を追跡する。

《火竜:なんで精霊がああああっ!? 魔女か、またあの魔女の仕業か!》

《氷の精霊:えーい》

《氷の精霊:この壁かったーい》

《氷の精霊:熱いの嫌だけど、精霊の盾あって良かった》

《火竜:くそっ、魔女なんぞにあやつられおって、全滅させてくれるわ!》

《氷の精霊:あ、火竜の火の粉にあたるなよー》

《氷の精霊:ブレスのダメージ倍増のやつだ!》

意思疎通ができな火竜と精霊の発言の羅列を見ていると、なんたるカオス……という感想が心に浮かぶ。

精霊が見えないと、火竜が一人でうねうね暴れて火の粉をパッと体からまき散らし、明後日の方向にブレスを吹いているようにしか見えない。

ただ火竜の周囲でエフェクトがまたたくので、何かが周囲にいるらしいということだけはわかる。

団長は先に、騎士達の動きを制する指示を出し、騎士達は眼下と団長の方をひっきりなしに確認している。ので、たぶん騎士さんはみんな困惑していると思う。

やがて精霊達の与えるダメージが、基準値まで達したようだ。

シャン、と小さな鈴をいくつも鳴らすような音とともに、火竜の防御壁がくずれた。

団長様は手を振り下ろす。

騎士さん達も、団長様の竜も一気に降下した。

火竜もその動きに気づく。

《火竜:くそっ、全員燃え落ちてしまえ!》

火竜が首を巡らせながらブレスを吐く。

私や団長様が乗った竜は大丈夫。精霊の盾の魔法をかけた騎士さん達も問題ないだろうけれど、他の人が!

私は思わずフレイさん達を見るけれど、フレイさんの前にはちょうどウサギ姿の氷の精霊がいた。

精霊にかけた魔法の分で、フレイさんも無事。

他の人達も、火竜の側にいた精霊達の魔法でブレスが弾かれた陰に位置していたおかげで、ブレスが直撃することはなかった。

そしてフレイさんの剣が、火竜の胴に浅く傷をつくり、騎士さん達が翼に傷をつけていく。

ダメージを与えたのが見えたところで、団長様はすぐに上昇。私を連れて、自分まで攻撃をする必要はないと判断したのだろう。

《火竜:くそっ。魔女めええええ! 腹立たしい!》

火竜さんが、轟音みたいな吠え声を上げた直後だった。

接近した騎士さんが、預けていた水筒を火竜の口に投げ込んでくれた。

《火竜:ん?》

間違いなく水筒が火竜さんの口の中に入った! お召し上がりいただきました!