I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 05: When I became friends with San Fool

「あ゛~~~~う゛~~~あ゛~~~」

俺は畑の収穫の手伝いでこの間見せた魔法を使いすぎて倒れている。

初めて村の人達に見せたら物凄く驚いてたけど、1日畑5から6面が限界だったが、今日は8面できた。それでも手で刈るよりは早いし効率は良いみたいだった。

もちろん収穫時期は忙しいので学校は休みだ。

なんか精神的に疲れる。これが魔力切れって奴なのかな。魔力の量は決まってるのかが気になる、あとで先生に聞いてみるか。

ゲームじゃないし、敵倒してLv上がって、ステータス増えるとかあまり考えられない。森の浅い所に通ってるけど未だに兎とかの小動物しか見ていない。むしろゴブリンとかクラスメイトに居るし、Lv上げとかもう色々な意味で絶望的。

「ぎゃはははは、お前ん所の息子のおかげで今年は1週間早く終わったぜ!」

「応よ、俺の倅とは思えないくらい優秀だぜ!」

「魔法を農業に使うとか考え付かなかったぜ! だって普通は攻撃だろ?」

「「「ぎゃははははっは」」」

相当飲んでやがる、畜生俺もこっちの世界に来てまだ飲んでないってのによ。あ゛~、まぁ大人達が喜んでるなら良いや。

収穫が終わったのでフィグ先生が村の広場で「明日から学校があると子供たちに伝えて下さい」と何回も大声で言っていた。

まだ気だるさが残る中、いつも通りに待ち合わせ場所に行ったが、かなり待ってもスズランが来ない。仕方ないので迎えに行く事にする。

「いつも悪いわねー、それと収穫の時はありがとね」

と言いながらいつものお茶を用意してるのが解る。実はスズランの両親は寝起きのスズランが怖いのではないか?と思うようになってきたが、俺にはまだ実害が無いから気にしてはい無い。

イチイさんはまだ寝てるみたいだ、昨日父さんと浴びる様に飲んでたからな。

いつもノックは欠かさない。もし起きてて着替え中とかだったら父親譲りの殺気を飛ばされるからだ。流石に怖いし背筋に嫌な汗をかく。寝起きのだらしない恰好は見ても良いのに。着替えは駄目とか良く解らない。

「入るぞー」

いつも通り声をかけるが返事は無い。部屋の中に入り布団は剥がさず両肩を掴んで声を掛けながら揺さぶる。最近起きるまでの時間が30秒くらい伸びている。慣れって恐ろしい。

何か次の手を考えておきたいが布団を剥がすのだけはしたくない、どうしよう。

「んー」

あ、覚醒し始めた。

「おはよう」

「んー」

ここで部屋を出てはいけない。二度寝するからだ。完全に覚醒して起き上がるまでは監視対象だ、上半身を起こすのを手伝っていると、スズランの焦点がだんだん定まってくる。

相変わらず胸元がだぼだぼヨレヨレのシャツを着ていて、起こす時にシャツがだらしなく垂れ下がり胸元が見えそうになるがなるべく見ないようにする。

しかしまったく成長していない。同じクラスの女子は胸がすでに大きい子も居れば膨らみかけの子も居るっていうのに・・・。

リコリスさんはスタイルは良いのにスズランは身長だけしか伸びていない。将来がすでに絶望的なスタイルだ。

別に俺は胸に拘りはあまり無いし、本人が気にしてないならとやかく言うつもりはない。相談されればたぶん幼馴染としてそれに答えるし、クラスの女子に相談している様子も無い。

しいて言うなら・・・

たぶん洗濯板と言う表現がよく似合う。

あばらが出てないならアイロン台だな。

シャツが捲れて見えたヘソと、ずれ落ちた短パンから見えた鼠蹊部?まぁ股関節の付け根くらいまでしか見た事が無いから解らんが・・・。んっんーそれはともかく・・・

「起きたか? 俺は向こうで待ってるからな」

「・・・んー」

居間でお茶をもらい飲んでいると。

「あの魔法は先生に習ったの?」

と聞かれたので

「習ったと言うよりは考え出しました。先生がイメージで出して下さいって言っていたので物凄く薄く鋭い風の刃をイメージして出しましたね」

「魔法を攻撃以外に使う考えさえ無かったのよねー。また来年もお願いね」

と、少しからかうようにお願いされてしまったので「もちろんですよ」と答えるしかなかった。

まぁそのまま対象に向ければ多分切り裂くと思うけどね、当てられればの話だけど。

それから少しして、スズランがボサボサの髪を一切気にする事無くやってきた。

「行ける」

と弱々しくいつも通り言ってくる。すごくサラサラしてて艶の有る黒い髪なのにもったいない、と思いつつ昼ちょっと前には自然に直ってるから不思議だ。

そして久しぶりに学校に来たらクラスの全員から感謝された。

ビルケ先生を初め他の先生達にも褒められ感謝された。

理由は「楽が出来たから」ただそれだけでだった。

授業の合間の小休止中に俺が勝手に「三馬鹿」と呼んでるまとめ役から珍しく声を掛けられた。

「なんだい、ヴルスト、君から声をかけて来るなんて珍しいじゃないか」

「まぁ・・・な。俺ら魔法があまり得意じゃ無ぇからよ、少し教えてほしんだよ、先生に聞いても『想像力です、イメージしなさい』としか言ってくれねぇしよ」

「あー、うん。なんとなく言いそうだね、先生なら」

「それによ、俺はカームみたいに使える属性多くないから、カームを参考にしたいんだ」

「良いよ、放課後家に帰ってメシ食ったら村の広場に集まろう。そうしたら俺が良く特訓しに行ってる森に案内するよ」

「お前特訓とかしてたのかよ、じゃぁ家に帰ったら村の広場だな!」

そう言うといつもつるんでる仲間の下に戻って行き「教えてくれるってよ!」とか言って騒いでいる。俺の言った事もちゃんと伝えてね?

ヴルストはゴブリンで魔物のイメージとは違い意外に話せる奴だ、背も低くないし、短絡的でもない。三馬鹿の中ではリーダーっぽい事しているが面倒見が良いだけの良い奴だと思ってる。

他にもオークのシンケン。コボルトのシュペックも居る。

このオークだが、エルフとのハーフで母親似で顔が整っていてかなり清潔だ。イメージとは違うが、オークとエルフのハーフと言う事はエルフを凌辱して孕ませた子。ってイメージしか出てこないが父親も魔物のオークとは違い紳士的だ。収穫を手伝っていた時なんか魔法を使いまくってる俺の事を気遣ってくれた位だ、こっちの世界の美女と野獣を地で行ってる夫婦。魔物と魔族の違いって明確だね!まさに生命の神秘!

コボルトのシュペックだが、ゴールデンレトリバーそっくりだ。クラスの男女問わず誰とでも仲が良く、タレ耳で髪の毛とかサラサラで憎めない、正直言ってモフモフしたい。無人島買って王国を作った人みたいに「あ゛~よしよしよしよしよし!」とかやりたい。まぁ失礼だからやらないけど。

男とか女とか関係なく可愛いと思ってしまう。ほぼ人族のメイド服を着た用務員さんのトリャープカさんなんか、獲物を見つけた肉食獣みたいな目をする時が良く有る、自覚は無いけど年上に好まれるタイプだ。ちなみに頭の上と横に耳が有る。

ちなみにトリャープカさんはキキーモラらしいです。

話を聞いていたのかスズランが何か目で訴えてるが、男同士の遊びに女の子はちょっとね?だってクラスの好きな子とかの話が出るかもしれないじゃん?

まぁこの埋め合わせは何かでするとしますか。

食事を済ませ「森でクラスの友達と遊んでくる」と言うと

「あらー珍しいわね、あまり深くに入っちゃ駄目よ?」

と注意だけされた。まぁ頭ごなしに「駄目」って言われないだけましですけどね。

村の広場に行くと既に全員がそろっていて意外にビックリした、時間の概念が無いからこその早めの行動って事か?それとも待ちきれなかったのか?まぁそれは良いとして。

「じゃぁ行こう。村の南の森だから歩いて太陽が少し傾く位だからそんなにはかからないよ」

体感で大体15分だ。村の端から森が見えるくらいだしな。村から真っ直ぐ歩きほぼ毎日通ってる道だから獣道みたいになってて雑草も生えてないし邪魔な枝は折ってある。森に入って5分くらいでいつも毒を飲む時に使ってる小川の流れる場所に着いた。

「ここが俺の訓練してる場所だよ」

よく使ってるので利便性は上がっている。履いている靴が濡れないように小川には大き目の石が動かないように置いてある。

太い枝を3本使ってA型フレームを2個作りその間に枝を縛りつけ蔓を巻き付け簡易的な長椅子兼ベッド。

投擲訓練用の10m20m30m用の目安の丸石。

毒草で変な色に変色した平たい石と手の平サイズの丸石。

魔法を使うために土魔法で整地し固めた3×3×0.2mのステージ。

「すげぇなここ、結構手が入って快適だ」

「本当だねぇ」

「すごいすごい!」

見た目はほぼ大人に近いのに精神年齢が追いついていない。これが魔族か・・・それとも男だから本当に精神年齢が低いのか解らない。

「まだ火を使う予定はないから石や丸太を使った台とか反射板や、動かせる風避けはまだ作ってないけどね」

「常に備えよ、備えないのは愚かである」と言うサバイバルやボーイスカウトの信念に惹かれ、知識は重くない財産と言う事で、生前で覚えた知識と長期休暇を使ってさりげなく体験していた事を今フルに活用している。ちなみにサバゲも嗜んでいたりする。

このA型長椅子に屋根を付ければ寝泊りも可能だ、問題は今の自分では狩りが出来ずに、食料は野草か野鳥の卵か果物か蛇や蛙だけになる。動物性タンパクが欲しい・・・肉だ肉!

魔法を使えば簡単に出来ると思うけど、なんか違う気がして使用していないし、魔法に頼らず自分の技術だけでどうにかしたいと言うプライドも有った。

大型野生生物を狩ると言う事は、長期休暇を利用しても、出来る気がしなかったからね、そのあたりは圧倒的に経験が無いのでどうしようない。

「さて、魔法の練習でもしようか。まずはイメージしやすい水から行こう。水魔法が得意な奴居るか?」

全員が首を横に振る。

「じゃぁ簡単だ、そこの小川に行って手で水を掬ってこようか」

全員が顔を洗う様に手に水を掬う。

「はい、これをイメージしてみよう。まずは本当に簡単な事からだ、水で顔を洗うように水を手に溜めるイメージ」

全員が手の平の水を捨て目をつぶりんーんー唸っている。手の平に水が溜まってるようにイメージしているのだろうか。その時シンケンが歓喜の声を上げる。

「おぉ、手の平が冷たい、水が手の平に湧いてくる!」

流石エルフとのハーフ、魔法の適性は意外に強そうだ。

次はシュペック。

「本当だ、水が出てきた」

尻尾が千切れそうな勢いで振っている、君は喜怒哀楽が解りやすいね、めっちゃモフモフしたいし頭も撫でたい衝動に駆られるが我慢だ。

最後はヴルストだ。種族的に魔法は厳しいのか?と思ったが。

「これが魔法か! これか!」

と興奮気味にはしゃいでいる。本当に嬉しかったのだろう。まぁ次は火か光かな。そうすればはぐれても光が有って水が有って物が焼け、これで最低限生きていけるようになるな。

「マジありがとう、俺は一生魔法が使えないと思ってたけど、どうにかなったぜ」

「君がクラスメイトで良かったよ、できれば友達になってほしいと思ってる」

「ありがとう!」

三者三様のお礼をされて少し嬉しい。

「これで皆安全な真水が飲めるな、生水は危険だからねー、そこの綺麗な小川も沸騰させたいくらいだから」

帰りながら皆に何属性が使えるか聞いたら

「全部使えない、親が使えないし純粋なゴブリンだから使えると思ってなかった」

「火と風だね、風の方が得意かな」

「土だよ!」

ゴブリンは本当に魔法が使えない者が多いんだなー。

エルフは風と土ってイメージなんだよね、森に住んでるし、オークは火が使いやすいのかな?

コボルトは個人的なイメージ通り土が得意らしい。

これが素直な感想だ、そろそろこっちに来て5年半になるがまだまだ知らない事ばかりだ。

あとこの三馬鹿は俺の事を友達だと思ってくれたみたいだ、だから俺も「あぁ! 俺達は友達だ!」と返しておいた。

なんとなくこいつらとは腐れ縁になりそうだ。