I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 13: The first time you hunted a demon

今日は討伐訓練の日だ、討伐訓練の日だけは昼食を持参する事に成ってるが「別に具とか良いから黒パンに干し肉だけで良いよ」と母さんに無理やりそのメニューにしてもらった。

サンドイッチとかおにぎりとかでも良いけどそれを入れる容器が無い、包む物も無い。せいぜい大きい葉に包んで布袋か革袋か木箱程度だ、ラップが恋しいです。

そんな物に具入りサンドイッチが入ってても傷みそうだし。米に至ってはまだ見た事が無い、蕎麦の実は有るけど製粉してクレープにするかガレットにするかポリッジにするかだ、ピッツォッケリは美味かった、けど汁の入った蕎麦が食べたい。

鈴蘭の髪飾りを贈ってから寝坊の回数は確実に減ったがまだ14日だ、7日に2~3回は寝坊する。

ちなみにスズランは今日も寝坊でした。髪飾りを贈った次の日の早起き出来たお前はどうした?

「おはようございます、ちょっと起こしてきますね」

「いつも悪いわねー」

と何時ものやり取りをしつつ何時もの手順を踏み起しに行く。髪飾りは小物入れに入ってるのか目に見える所には無い。

「今日は外に討伐実習なんですって? 魔物のゴブリンだから簡単に行くと思うけど気を付けてねー」

「引率の先生も居るので大丈夫だと思いますが、クラスメイトに魔族の方のゴブリンが居るのでちょっと倒せるか心配です、そいつとは仲が良いんですよ」

「何言ってやがる、魔物のゴブリンなんてのは魔族のゴブリンからしてみたら下着しか付けてねぇ刃物持った頭悪ぃ狂人みたいなもんだって言ってたぜ? そんなもん気にしねぇで頭かち割ってやれ」

「まぁ、そいつに聞いてから倒してみますよ」

とイチイさんから檄を入れられる。

「そうそう、あの子ねカーム君から髪飾り貰ってから少し見た目に気を遣う様になったのよ、本当嬉しいわー、ありがとね」

「いえ、まぁ・・・色々有ったんでお返ししただけですよ」

と返したら物凄く睨まれた、誰にとはあえて言うまい。

「で、お前の獲物は何なんだ?」と少し不機嫌に言う。

「玄関の外に立てかけてありますが、スコップとバールです、あと小さいナイフですね」

と真顔で言ったらすごい笑われた、何かおかしい所有ったか?第一次、第二次世界大戦で大活躍して、前世では今でも使われてる万能武器なのに。

「ヘイルはなんて言ってたよ?」

「まぁがんばれ。としか・・・」

「だろうな」

微妙なやり取りをしたがスコップを武器として使う事はこっちには無いみたいだ。

他愛ないやり取りをしていたらスズランがやってきた、髪に寝癖は付いて無いし髪飾りはついている。

「行こう」

短く言ってきたがその台詞は待ち合わせ時間に遅れないで来てから言って欲しいです。

学校に着いたら着いたで質問責めの嵐ですよ!なんでスコップなんだ?って。笑う女性陣も居れば男らしく笑うサイクロプスのグラナーデさん。今に見てろよ!どれだけスコップが有能か見せてやる。

教室に入ってきたモーア先生も絶句していた。やっと出てきた言葉が「お前の敵は畑にでも居るのか?」と。そしてまた湧き上がる笑い声。

「村と町をつなぐ街道を歩いて3時間位の所が丁度中間地点でその辺の討伐は面倒だ、と言う事で放置されてる魔物も多い。強くて熊、弱くてゴブリン程度だ、極稀に魔法を使う奴が出て来るが、個体ならそれほど脅威でもない、回復のポーションは少し多めに持つから安心しろ、それに簡易的な休憩所も有って見晴らしも良いから警戒してれば不意打ちを食らう事は無い。

むしろそこに行くまでの道のりを警戒していた方が良いくらいだ。説明は以上だ。何か質問の有る奴は手を上げろ。特にないなら出発だ。目標は一人1匹だ」

クラス全員に渡るくらいいるのかよ。

殆どが普段着だが、革製の局部を守る軽装をしてる奴も居る、まぁ特に何も言われてないからいいか、「常に備えよ」精神はいいよ、俺は攻撃手段で頭が一杯だったからね。あと父さんの装備は体に合わなかったし。ちなみに俺はいつも通り麻のズボンに麻のシャツだ。

「さて、先頭だが、シンケン、お前がやれ、目が良いからな。二番目はシュペックだお前は鼻が良い。一人で両方出来る奴がいれば良いんだがそれぞれ役割をもって分担するのも悪い事じゃ無い、覚えておけ。俺は最後尾を歩くから何かあったら知らせろ、出発だ。」

俺は革の背嚢にぼろい毛布と弁当と針と糸と麻紐と水袋と塩と砂糖と林檎を入れバールを左腰に挿しスコップを両手で構える様にもって歩く。

毛布は小休止や大休止用、針と糸はソーイングセットみたいなもんだ、最悪切り傷が酷い時の応急処置だ、水と塩と砂糖と林檎は経口補水液用だ。ちなみに回復魔法を覚えてる事はまだ誰にも言っていない。

言ったらけが人が俺の所に押し寄せる可能性も出て来る。しかもまだ大怪我を治したことが無いので不安ってのも有る、もう少し自分で実績を重ねてからが良いと思ったからだ。

ちなみに村で回復魔法が使えるのは薬学に少し詳しい粗末な病院の先生1人だけだ。

ちなみになんでそんなに荷物が多いんだ?と言われたがどう返して良いか解らなかったので「なんとなく」と言っておいた。

先生が「簡易休憩所まで半分だ、そろそろ休憩にする。」と言ったので、口の中に塩と砂糖を含み水で流しこむ。ぼろい毛布を草の上に敷き背嚢を置いて足を高くして寝転がる。

「ほう、カームはある意味正しい休息の取り方だ、だが少し大げさではないか?」

と警戒中の先生に突っ込まれるが休む時は休む、コレが大切です。

休憩も終わり30分ほど歩いた歩道脇に、背の高い草が多い場所でシュペックが盾を構え手を頭の高さまで上げ指を4本伸ばす、先頭のシンケンがシュペックの裏に下がり弓に弦を張り矢を番える。二人とも何時もの調子では無く真剣だ、その行為をみて全員が警戒態勢に入り魔法組も集中し、先生も鞘から剣を抜く。

シンケンの矢が草むらに放たれ「ギャ!」と短い叫び声が聞こえた瞬間に草むらから1m位の醜い大人みたいな魔物が3体現れる。ゴブリンだ。

距離は20m、ゴブリンは短い脚で全力で走って来る。

盾持ちが直ぐ様前に飛び出し剣や槍を構える。

ゴブリンの持っている武器は粗悪な木の棒だがそれなりに太く、振り回せばそれなりに効果が出ると思われる大きさだ。俺もスコップを構え盾組の様子を見つつ飛び出す積りではいるが、盾に簡単に弾かれ斬られるか突かれるかですぐに戦闘が終わる。あっけないと思うが被害が無いに越したことはない。

「よくやったお前ら、特にシュペックとシンケンは斥侯としては今の所問題は無い、盾持ちもすぐに前に出たのは良い判断だ。比較的弱いゴブリンだったが冒険者の装備を持っている奴も居るので軽視しない事だ。休憩所までもう少しだ。それまで気を抜くんじゃないぞ」

と言いながら討伐部位の鼻を削いでいく。

俺は武器を構えただけで終わりました。はい。戦わないって素晴らしいですね。できる事なら平和に過ごしたいって言うのは元日本人の性なんですかね?

休憩所と言う、少し大きい東屋までに襲撃は一回だけだったが昼まであと1時間は有る。

「ここに荷物を置き各自2人1組か3人1組で周りを探索して来い。なるべく盾持ちと後衛に分かれろ、盾の無い前衛はそこに入れ。」

と言われスズランが俺の所に来るが「スズラン、お前は前衛だ、すぐにカームの所に行くな、カームも盾無し前衛だ、今回は諦めろ」と言われしょんぼりしている。

「昼飯なら一緒に食ってやるからがっかりすなよ」と言ったら喜んでいたので一安心だ。

と言う訳で盾を持ったクチナシさんと組む事に成った、主に俺が魔法も使えるからと言う事だ。さっき先生が言った「盾無し前衛」はどこ行った、速攻行方不明だぞ!

「じゃあ皆が居ない方に適当に回るね」と控えめに言ってくるが大盾持ちと対面すると威圧感が凄い、実際に対峙した場合どうやって崩すかを考えると魔法に頼りたくなるほど体が見えない、しかも右手側の上が円形に欠けておりそこから槍が突き出せるようになってる。確実に軍隊の前衛仕込みって雰囲気が出ている。

「じゃぁ裏に居るから左手側に回られたらこっちで対処するし集団で来られたら魔法も使うから」

一応即席の対処法を言っておく、これが無いと前衛を巻き込む場合が有るからね。

30分ほど警戒しながらウロウロして2体ほど出てきたがいずれも単騎でクチナシさんが盾で弾いて串刺しだったので「カーム君もどう?」と言われ前衛をやらされた。極力戦闘は避けたかったんだけどね。

槍を持つ様にスコップを持ち、歩く事5分、少し短い草の中にゴブリンの頭を発見した、動かない所を見ると隠れてる積りなんだろうがばっちり見えている。

まだ黒曜石のナイフは皆には見せていないので、腰からナイフを抜き、体が有ると思われる所に狙いを定める、頭を狙うより面積の多い体を狙った方が確実だ、「当てられないなら撃つな」そんなセリフをFPS仲間から聞いた事が有ったので確実に当てられる場所を選んだ。

投擲後「ガッ!」と短い叫びが聞こえたのですぐに距離を詰めスコップを左から頭にフルスイングしてスコップを90度回し吹き飛んで転がってるゴブリンの首を狙って振り下ろす。

やると決めたら躊躇しない。死なない努力をする。と決めていたので特に気分が悪くなるとかは無く、こっちに来る時に一応覚悟はしていたのだが人に近い見た目の魔物でも殺せば一応精神的に来る物は来る。

意外にあっけない。やっぱり体格差が一番の原因かもしれない、筋力もリーチも段違いすぎる、俺達とは大違いだ。まぁ今後も害獣駆除と思って割り切ろう。

「そろそろ昼だから戻ろう」と言うと「良く解るね、お腹の空き具合で解るのかなー?」とニヤニヤしているが太陽の位置で大体解るとは言わなかった。

「お前らは3体か、まぁまぁだな、それと武器についてる血は飯前に洗っておけ」

と言って討伐部位を渡しておく、そして少し離れた所で血を魔法で出した水で洗い流しボロ布で拭いておく。

東屋で毛布を敷き座ってるとぞろぞろと皆が戻って来る、怪我は今の所無いみたいだ。

スズランは朝の約束をしっかり覚えていて俺の横を陣取っている。しかも干し肉を2枚奪われた。林檎は死守する必要すらなかった。野菜や果物もちゃんと食べてください。

食事中に「スズランちゃんが槍を横に振ってゴブリンの頭吹き飛ばしてた時はすごかったねー」とか裏の方で聞こえて色々突っ込みたがったが疲れそうなので止めておいた。

あとメイスとかウォーハンマーとかウォーピックの方が似合うんじゃね?と思ったがこっちも止めておいた。

昼食後は俺の組はゴブリンに会う事無く終わった、他の組も午後は全体的に少なかったらしい。先生曰く「これ位やって見つけられないなら平気だろう」と言って今日の所は引き上げる事に成った。

帰りにゴブリンが出る事もなく帰れた。ちなみに今日の討伐報酬は学校の管理費になるそうです。