I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 28: When I was working without delay

仕事は問題無く覚え、4日仕事して1日休んでの5日のサイクルを作る事にした。

覚えると言ってもレンガの材料を練るだけなんだけどね。まぁギルド通しての日雇い扱いだからある程度融通が利くのは救いだね。

ほぼ業務開始時間の10分前には現場には入るようにしている、時計の概念が無く大体で始めてしまうので多少の前後が有るためだ。

初日は特に技術が要らない粘土を練らされた、鍬みたいなので水を入れて練る。

「粘土がこれ位、砂がこれ位、石灰がこれ位、大体勘と経験だ、材料にムラが出来ない様にしっかり混ぜてくれ。その後に水だ。その後は材料が均等になるように練る、いいか?」

そう言われ、色と粘度をなんとなくで覚えた。

最初は「こんなもんですか?」と親方に見せに行き「まぁこんなもんで大丈夫だろう」と言われ「あぁこれで良いんだ」と思いながらも特に代わり映えの無い作業を繰り返し小休止、昼休憩、小休止、業務終了、これで仕事が終わる。

その後、食材が無ければ食材を買ってから帰り、近所の銭湯に行き夕飯を作って柔軟や筋トレをして寝る。生活サイクルを安定させるのは楽そうだ。

休みの日には溜まった洗濯物の処理をする。大家さんに「貴方って男の割にマメね」とか言われるが他にしてくれる人がいないなら自分でするしかない。

もちろん洗濯板と桶です、最初は苦労したけど慣れればまぁまぁ形にはなる、すすぎは面倒なので水球の中に入れて洗濯機の様に回すだけ、洗濯風景を見ていたご近所の人からすると、何故か「器用ねー」とか「魔法って魔物とか敵に使うものだろう?」とか言われるが、便利に使ってナンボでしょう。

人は楽をしたい生き物なんですよ、まぁ魔族だけど。

洗濯物が終わったら、街中の探索をするようにしている。顔見知りや顔馴染の店を作る為だ、ちなみに色町には行きませんよ?

ちなみに休日は菓子にも挑戦する。ネット環境やゲームが無いからね、カステラとかプリンは比較的簡単だった気がするのでいざ挑戦!

まぁまずは簡単なプリンだよね、卵と牛乳と砂糖だけだし、専用のカップとか無いけど、まぁ陶器のカップとかも有るから掬って食べれるようにするか。

ボウルに卵入れて泡だて器で混ぜて、砂糖入れて混ぜて、牛乳入れて混ぜて、カップに入れて鍋でお湯を沸かしてそこに入れて蓋をして10分、その間にカラメルソースを作る、薪がもったいないので手から火属性魔法を出して代用、これも水と砂糖だからね、出来上がったらカラメルを掛けて粗熱を取って冷蔵庫・・・は無いから水を張った桶にでも浸しておこう。

『2号室のカームです、1人分も8人分も作る手間は変わらないのでどうぞお食べ下さい、食べ終わったら各自食器は洗ってください、甘い物がダメな人は誰かに譲りましょう』

これでよし!

食堂でプリンを堪能していたら、なんかちっちゃい女の子が来た。誰かの子供かな?

「こんにちはー2号室のカームです。よろしくねー、プリン食べる?」

「はぁ? 子ども扱いしないでよね、こう見えても結構生きてるんだから」

ちらちらとプリンを見つつ文字も読んでいるみたいだ。

「申し訳ない、2号室のカームと言います、中々お会いする機会が無かったので挨拶が遅れて申し訳ありません」

「ん、紹介ありがとう、トレーネよ。7号室に住んでるわ、いただきます。体は妖精族だから小さいの」

そう言いながら、もぐもぐと食べ始める。目を少し細め口角が少し上がっているが、美味しさで顔を歪ませるのを我慢しているのだろうか?

「上の方でしたか、これからもよろしくお願いします」

上に住んでる子ってこの子か、見た目子供だけど本当見境ないなあの馬は。

「えぇ、こちらこそ」

早めに銭湯に行き、風呂上がりに夕飯の買い物をして調理場に入ったらプリンは無くなっていた。まぁ好評で何よりだ。しかし、残りの3部屋の住人が気になるな。いつか会えるだろう。

仕事を開始して10日目、朝食と昼食を一緒に作り昼は皆と食堂に食べに行き弁当を食べつつ、定食では無く一品料理を頼むと言うスタイルにした、最初弁当を持参したら。

「おまえ自分で飯作るんか!すげぇな」

と言われたが、1人暮らしが長かった未婚男性を甘く見ないでほしいね。ちなみに今日は卵サンドだ、マヨネーズが売っていたのを見かけたので購入した。酸性度が高いから常温でもある程度なら問題無い、と記憶している。

しかも「瓶を洗って持って来てくれれば次から銅貨2枚安くするよ」とか言われたので大変エコである。

骨材を練り終わったら、型詰してるきつねさんの所に一輪車で持って行く、そして戻りまた練るの繰り返しだ、いい加減腰が痛くなる。面倒なので魔法で練る事にする。

なんか人が集まって来た。

「お前魔法使えるんか! なんでこんなところで日雇いの仕事してるんだよ、討伐とかの方がもうかるぜ?」

「いやー俺ヘタレで、怖いのも痛いのも嫌いなんで、死ぬ可能性の低い職を探してたんですよ、そしたらギルドで日雇いの仕事も有ったんでここに来てるんですよね。けどギルド登録も必要みたいだったので登録はしてあるんですけど、色々書く欄に馬鹿正直に書いた事少し後悔してますね」

「おい、どんだけ練れるんだよ、試してみろよ」

「んー、荒れ地だった場所を畑にしましたけど、10面とか楽勝でしたけど、きつねさんの事考えていつもと同じ量を練ってますけどね」

「おい! だれかきつねを手伝え、コンはどんどん練れ! むしろ練れる限界までやってみろ! これなら効率があげられる、窯も増やせ!防壁直してる奴等に連絡入れろ」

おやかたが、皆に聞こえるように叫んだ

おいおいなんか大事(おおごと)になっちゃったな。

比率は大体そのままで、量をどんどん増やしていき最終的には材料の1つが無くなった時点で直径4m位の大きな球体の塊になった。それがウニョウンウニョンうねって常に混ざってる状態だ。重さ? 良く解らないね。同じ大きさの水よりは重いんじゃない?

「おやかたーこれどうしましょー」と叫んだら物凄く怒られた「やりすぎだ!」

どんどん練れ言ったの親方なんですけどね、ちなみに周りは。ざわざわしている。

仕方が無いのでおやかたが、出来る限り人手を集めて型に詰める場所に集め、俺は浮遊させて持って行き型に詰め始める、ってか浮かせられるとは思わなかったよ。

俺も立方体に生成してどんどん切っていく、なんか食品工場で大きな塊から一定量を切り出す作業をしている気分だ。

材料無いから終わり次第業務が終了。

昼休憩なしで全員急いで動く。

「明日はこれを窯に入れて焼く、焼けないのは日干しにするぞ!そして今日は上がりだ!」

「「「「「うっす」」」」」

「よっしゃ今日は無理させたから飲みに行くぞ! 腹減ってるから効くぞー」

まだ3時なんですけどね。たまには良いだろう。

「あー俺はギルドに寄ってから向いますね、今日でランク1の仕事10回目なんでランクが2に上がるんで」

「おう!何時もの食堂に居るからな、絶対に来いよな!」「ういっす」

作業場から卵サンドを食べながらギルドに寄り、受付のお姉さんに親方のサイン入りのマークが10個付いた紙を渡したら

「カードを書き換えますので少々お預かりしてもよろしいでしょうか?」

特に拒む理由も無いので「あ、はい」と言いながら渡す、そういえば仕事上がりにそのまま来たけど大丈夫だよね、多少汚れてて汗臭いけど。あそこに何かの討伐依頼帰りなのか顔に返り血は無いけど鎧とかには付いたままだし。

特に何か有る訳でもなくランクが2に上がった。カードのランクの所がしっかり『2』となっている、カードを受け取った時に「ランクアップおめでとうございます」と言われたけど、1から2に上がっただけだからな。まぁ無難に「ありがとうございます」と言って置いた。

飲んだ後だと色々面倒なので、先に明日の食材の買い物を済ませてから門の近くのいつもの酒場に行くと、既に出来上がっていた。ちなみにつのさんは居なかった。

「おう! 遅せぇじゃねぇか、もうさっさと始めてるぜ!」

「あー果実酒お願いしまーす、あとは日替わり定食」

「おいおい食いながら飲むのかよ、それじゃぁ酒の美味さが解らねぇぜ? これだから酒の飲み方がわからねぇ若ぇもんは」

「いやーすげぇ腹減ってるんで、若者は酒よりも食い気ですよ」

「食い気よりも色気じゃねぇのか?」

誰かが下品な事を言って、下品な笑い声が上がるが気にしないで飲もう。

「なぁコンよー色町の方はどうなんだよ、そろそろいいんじゃねぇ?」

きつねさんがいきなり話しかけて来る。よっぽど行きたいんだろうか?

「あ、あぁ俺も気になる」まっちょさんも言ってくる。

「あーそうですね、本人曰く『通常の店より大銅貨3~5枚くらい高い』だそうです、店はスイートメモリー、全員夢魔族らしいですよ、客入りも良かったので白だと思います、まぁ色町自体黒に近いっすけどねー」

冗談で言ったら全員引いている。

「コン、あそこに入ったんか? 平気だったのかよ」

「へ? 入って果実水飲んでただけですよ?」

「な、なら平気だ」

「んー、本人が言ってた『搾り取られるって』まさか精気とか魔力とかですかね?」

「そうだぞ、お前は魔法が使えるからある意味上客だろうよ」

「あー、言葉通りの意味だと思ってんですけどそういう意味でも有ったんですか。危ないですね、まぁ入っても買いませんけどね」

「なんだよ、男だったら買えよ。自分で処理するよりは良いだろうよ」

「いやー彼女が怖くて無理です、とてもじゃないが買えません」

「か、彼女いたのか」

「俺より細いのに力が強くて、勘が鋭いんですよ、照れ隠しに軽く一回殴られただけで悶絶しましたよ、そんなのに本気で殴られたら死んじゃいます。ただでさえ槍でゴブリンの頭吹き飛ばすのに」

そう説明しつつ残っていた酒を一気に呷る。

「一回見てみたいぜ! 今度機会が有ったら紹介しろよ、仕事中でも良いから連れて来い」

酔った勢いで親方が言っている、本当に機会が有ったら連れてって目の前でレンガでも握りつぶしてもらおうか。スズランなら多分可能だ。

ほどなくして飲み会は終了した。まだ5時半か、何するかね。

毒耐性で酔ってはいないけど酒飲んだ後すぐに風呂入りたくないし、一回帰るか。

帰ったらまた大家さんに会ったので、軽く挨拶したらまた鼻をスンスンして今度は顔を顰(しか)める。「昼間から酒?」とは言ってこなかったが、顔を見ればなんとなく解るが。「程々に」とだけ言われた。夕飯は軽く済ませよう。

その後銭湯に行き、ホカホカで良い気分なのに少し薄汚れた冒険者らしい酔っ払い4人に絡まれた。確かに借家から歩いて5分だけど、この距離で絡まれるってどんなエンカウント率だよ。

無視を決め込んで、通り過ぎようとしたら一人が「おい」とか言いながら掴みかかって来たけど足を掛け押すようにして軽く転がして逃げてきた。

争いは良くない平和最高。

高校時代、休み時間にふざけて柔道の技を軽くかけてきた佐藤君に感謝だ。相手の足の踵に、自分の足を置いて体を押すだけで後ろに転ぶ奴。覚えておいて良かった無駄知識!

後ろでなんか騒いでたけど、無視して汗をかかない様に速足で逃げた。ベッドに入り明日は型に入れたレンガを焼く作業だけどあの量、窯の数とか間に合うのかね。ってか資材が無いから俺の仕事何よ?と思いつつ寝ようとした。

隣の部屋で、馬が竪琴鳴らしながら大声で歌ってたけど、思い切り扉を叩く音がしたからたぶん大家さんだろう。多分奴も酔ってたんだろう、程々にしなかった結果がこれか。俺も気を付けよう。多分酔わないけど。

「うるさい」「キースカさん好きです! 付き合ってください」無駄に美声で叫んでいるが「ぉふぅ!」とか聞こえ、ドアを思い切り閉める音がした。多分叩かれたか、殴られたんだと思う、そして静かになる。

しばらくは飽きなくて済みそうだ。