I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 51: When I saw a lot of people practicing ○○○○○

今、俺の足元には大量のパンと、干し肉と冷めたスープと、酒と果物と食器とタオルが有る。

そして目の前には、綺麗な海と大きな湾と、少し長い岬が見え、背中には前任の魔王の奴隷だった物と思われる建物が25軒。とりあえず雨風は平気そうか?まだ中見てないけど。

俺は、この世界での奴隷の扱いを知らない。

俺の想像でしかないが、劣悪な環境下で、最低限の食事しか与えられてないと思い、食事くらいは与えてやりたいと思い、自腹で用意しておいた。

「君は優しいね、奴隷なんか使い潰しなのに」

「作業効率が落ちると思って」

「それが優しいって言うんだよ」

そう言われ、無人島に連れて行かれた。

自宅から実家まで転移魔法陣の練習で数回往復して、その後どのくらいの量の荷物が運べるかも試した。

魔法陣が出る直径約二メートルの中なら大丈夫で、高さは手を上に伸ばした時くらいだから二メートル五十センチメートルくらい?たぶん円柱内なら平気と判断。そこから出ると、切り取った様にしてその場に残る。

生きた魔族や動物で試した事はないが、多分千切れて陣の外にある肉体は綺麗に置いて行かれると、勝手に思っている。

だから誰かを運ぶ場合は、陣から出ない様になるべく俺に近寄って貰わないと非常に危険と勝手に判断した。

陣を広げる方法とかはまだ試してはない。教わった事をそのまま実行しているだけだ。

ちなみに食料は、隣にラッテに立ってもらって魔法陣に入るギリギリの量を割り、出して持って来た。

それにしても魔王の部下が遅い。先に俺が無人島に連れて来られて「奴隷を連れて来るから待ってて」と言われこうして待っているがそろそろ三十分だ。

奴隷なんか「早くしないと殺すぞ」とか「早くしないと鞭打ちです」とか言って脅せば動くんじゃないの?とか思ってるけど転移魔法陣で数名づつ送られてくる気配もない。

「暇だ」

ここは無人島、周りに誰もいない、その場で出来る簡単な事。

1.筋トレ

2.魔法の練習

3.○○○○波の練習

今なら3しかない!子供の頃に森の中でやった事があるが、今はこの広い島に俺一人。これを逃すと次はいつ出来るかわからない。

俺は目を瞑り、深呼吸を数回して足を肩幅より少し広く開き両手首を合わせて、手を開いて、体の前方に構え。腰付近に両手を持っていきながら体内の魔力を集中させ両手を完全に後ろにもってっいて、溜めにより魔力が満ちた状態にし両手を前に出す。

「○ーー○ーー○ーー○ーー波ァーーーーーー!!!!」

最後の言葉と同時に手を正面に思い切りだし、光魔法で可視化した閃光を発射し、風魔法で向かい風を出し、服や髪をなびかせ、光は水平線の向こうまで伸びてゆく。

「ふぅ、今のは完璧だろう」

「何が完璧なんだい?それにしても面白い魔法と詠唱だね」

最悪だ、いつの間にか後ろにいたみたいだ。

「イヤ、コレハタダノアソビデシテ」

そう言いながら、にやけつつ後ろを振り向くと、魔王の部下と、両手と両足をある程度自由になるように鎖でつながれた、首輪を付けた人族の奴隷五十人が規則正しく並んでいた。

最悪だ、魔王の部下だけじゃなく、奴隷も全員揃ってる。しかも裏にはなんか空間が歪んで門みたいのが出来ている。多分転移門的な何かだろう、起動音みたいなのも一切聞こえない、大声も出してたしコレは気が付かないな。

「これが君の所有物になる、大陸共通語がわかる奴隷ね、挨拶位はしないと。ほら」

そう言って死んだ魚のような目をした薄汚れた奴隷達に向かって挨拶をする。

「あー、はい。えーっと最近魔王に成っちゃってこの島が領地になったカームって言います。魔王の威厳?そんな物は有りません。部下?そんな奴は居ません。奴隷?そんな物は要りません!君達にまず頼む事は、まず全員体を拭いて綺麗にしましょうです。貴方達の裏に、前の住人が住んでたであろうと思われる、簡素な家があります。男と女で別れて、体を今から配る布で綺麗にしてもらいます。家族が居る場合はさらに別の家を使ってください」

子供もいるとか最悪だろう。元気に遊び回ってても良いくらいなのに。あとで飴を持って来よう。

そう言って少しざわついてる奴隷達に、一枚一枚多めに持って来たタオルを手渡し、湾の波打ちぎわから少し離れた、土になっている場所に建ててある小屋の前まで移動して、ぬるま湯の【水球】を出して「これでタオルを湿らせて下さい」と言って、体を拭かせる。

その間に簡易的に土を隆起させ、テーブルと釜戸を作りスープを温め、食べ物や食器を乗せる。

素手で水を掬う様にさせて、直接熱いスープを配るとかしたくないし、それになんの拷問だよ。

食べたい奴は、全員に配り終わるまで待ってて下さいとか、ニヤニヤしながらとてもじゃないが言えやしない。

「優しい魔王様ですねー」

ニヤニヤしながら皮肉っぽく言ってくる。

「物の様に扱ったりする事は、俺にはできないので」

そう言っているうちに、体を拭き終り綺麗に整列している、奴隷達に楽な姿勢で良いからと言って座らせる。

「あい、じゃぁ全員揃いましたね。今から食事にしますが、奴隷が何人来るかとか聞かされてなかったから、多めに持って来てあります。全員に配っても、お代わりが出来るくらいはありますので、落ち着いて食べて下さい。んじゃまずは君から順に取に来てください。貰った者から食べて良いですよ。顔見知りや親しい方で集まって食っても良いから」

そう言って皿にパンと干し肉と果物、カップに温まったスープを配っていく。

そして黙々と食べる人達に、何か違和感がある。会話がないのだ。多分発言が許されてないのか、食事中は話すなとか言われてたのか?

「あの、なんで誰も喋らないんですか? 食事は楽しく食べた方が良いに決まってます!」

少しづつボソボソと喋りだし、一人が話しかけて来た。

「あの、喋ってもよろしいのですか?」

「構いませんよ、それに俺は奴隷の扱いを知らないし、雑に扱いたくはないので。さっきも言ったが、奴隷は要らない、君達はこの島を開拓するパートナーだ」

そう言うと、全員が涙を流しながら喜び、抱き合っている。

あー、あー、怖い!足元に置いたスープを蹴りそうで怖い!

「なんだかんだ言って、奴隷の扱いが上手いじゃないか」

「俺の下に来た時点で、もう奴隷じゃないですよ。たとえ「自分は奴隷だ」とか言っても、俺が奴隷として扱わなければ良いんですよ」

「はいはい、んじゃ後は任せるよ、またね」

そう言って転移魔法陣を起動して帰って行った。

「パンのお代わり? 他の方の事も考えて、とりあえず一個ですね。スープ? まだわからないから、とりあえずカップ半分です。干し肉? あーそうだなこれも一枚です、果物? 子供が先ね」

とりあえず、持って来た食料はこれでなくなったし、皆は満足そうにしている。死んだ魚の目だったのが、みるみる光を取り戻していくのがわかった。

「食休みしているところ申し訳ないのですが、詳しい事は明日話します。今日はしっかり休む事、とりあえずさっき体を拭いた家に、それぞれ男と女別れて寝て下さい。悪いんですが寝具はないです。魔物の生息も確認されていますが、一応森の深いところまで行かなければ平気だと思うので、今のところは大丈夫と言い切りたいが、こればかりは祈るしかないです。それと、この残ってる樽には酒が入っています。コレは皆の物です。喧嘩しないで分ける様に。んじゃ手足の枷を取るから、ならんで下さい」

そう言って預かった鍵で、枷と首輪を外してやると、また大喜びし始めた。

「あーそうそう。脱走しても構いませんが、ここはほぼ無人島で、貨物船が三日に一回遠くを通るのが確認できる程度らしいです。森に逃げても、魔物も動物もいるかもしれないので、素直にこの家で寝てた方が安全だと思います」

そう言ってから、俺はある程度付近の探索を始める。

まずは家の中を見せてもらうが、簡単な料理場に釜戸に水瓶、石を積んで隙間を泥で塞いだだけの簡素なつくりで床は木が張ってあり、屋根は木の皮や葉を分厚く重ねただけだった。

とりあえずは雨風はしのげるが、水瓶の水が腐っていたので、とりあえず捨てて【水球】で綺麗な水に交換して岬の方に向かう。

んーここから見える範囲だと、湾に入るところ以外遠浅なんだな。どうやってできたんだこの地形?不思議な島だな。

後は、城を建設しようとしてた跡地だな。家の脇から道が森の方に伸びており、十分ほど歩いた場所に、かなり広く開拓された場所があった。

木は切られて、根は掘り起こされ、地固めまで済んでいる。残念だが道具類は一切無い、多分勇者に救出された時に持ち出されたんだろう。

軽く歩いたが一辺が約三百歩程度だったので、多分三百メートルくらいだろう、大阪城の本丸より広いな。あ、徳○の方ね。

あった家の数からして、五人住んでても百二十五人か。そんな人員でこれをここまで開拓ねぇ。どんだけ酷使したんだか、考えたくもないな。

井戸もすでに掘ってあり、小石を投げ込んでみたら音がしたので、水はあるんだろう。飲めるかどうかわからないが。この場所でも真水が出るのか……最悪井戸掃除も必要だな。

道具は明日必要な分だけ持ってくるとして、せめて食料は自給自足にしたい。俺は森に入り、獣の気配を探ったり足跡を探したりしてみた。

糞や足跡が多数存在しており、野生生物の存在も確認できた。鹿や猪や熊までいやがる。コレは人族に注意させないと不味いな。まぁ、夕飯用に何か狩って行きますかね。

しばらく森を歩くと、黒い物体がノシノシと歩いていた。こちらに気が付くとこちらをジーッと見ている。熊だった。

あ、熊って背中見せちゃいけないんだよね。どうしよう。こんな獲物持って帰れません。

あ、立った。威嚇してるのか様子を見てるのかわからないが、危険が危ないのでまぁ殺っておこう。少し柔らかめの大きな石弾を頭に射出し、頭を吹き飛ばした。とりあえず放置して人を呼んで来よう。

帰り際に鹿も見えたので、頭を石弾で撃っておいた。これもあとで回収だ。

家まで戻り、男用の適当な家に入り「熊と鹿を仕留めたから運ぶの手伝ってほしいんですけど」と言ったが、既に酒を飲んでおり、この家の男は全滅していた挙句に「あ、魔王さま。お酒ありがとうございます」「「あざーっす」」とかカップを掲げながら挨拶してくる。駄目だこいつら。

男の家は軒並み全滅。仕方がないので女手を借りよう。一応ノックもしておこう。女性用の家だし。ノックをして返事が返ってきたので入る事にする。

「あのー、森で熊と鹿を仕留めたんですけど、俺だけじゃ運べないから手伝ってほしいんですけど。男共は全員酒飲んでて使えないし、男で酒飲んでないのは子供くらいだったんで……」

最初は怯えて、何かを諦めてた目だったが、小声で少し相談している。

「まーったく男共は仕方ないわね」

「あたいも手伝うよ」

先ほどとは全然違う態度で言って来たので、十人ほど集めて森に戻って行き、肉を小分けにして運んで貰った。

「内臓は食べます?」と聞いたら「綺麗に洗って煮込んじまえば、臭みなんてわからないよ」とか言われたので、下処理は任せよう。

「今日は休めとか言っておいて、なんか悪いですね」

「何言ってんだい! あんたが私達を奴隷扱いしないだけで十分さ」

「久しぶりに干し肉を食べたと思ったら、今度は生肉だよ! 奴隷になる前の生活より豪華じゃないかい?」

「そうだね!」

あはははははと豪快に笑う。

うん。なんて言うかこの年齢の女性は色々強い。

内臓はバケツがないから、腸とかは木の枝に吊るして帰ったし、レバーも大きめの木の葉に包んで持ち帰った。

道具は明日とか言ってたけど、調理器具を買いに戻り、ラッテに「あら、お早い御帰りですこと」と少しからかわれた。

小分けで人数分焼くのは面倒なので、鉄板を道具屋兼武器屋から何枚か買って来て、今日は塩コショウで済ませた。

小麦粉も持って来て、パンも作れる環境に何とか整え、夕飯は女性陣に手伝ってもらった。

早く自給自足したいな。お金も家族の為に残しておきたいからね。

まぁ、現在進行形で酒飲んでる男達には、明日から頑張ってもらおうか。

飴を怯えてる子供達に渡したら、一発で懐かれました。

閑話

島に来る前の奴隷達

地下奴隷部屋

「じゃあ、昨日話した通り、今日から新しい魔王に無人島の主に成ってもらったから、君達を受け渡すから。はい出て出てー、早くしないと鞭が飛ぶよー」

バシッバシッと石の床を叩いている

「転移門作るから、スムーズに移動しようねー」

(最悪だ、魔王に酷使されるなら、この地下牢の方がましじゃないか)

(死にたくねぇよ)

(何をされるのかしら……せめて子供だけは守らないと)

(あぁ……毎晩処理に使われるのかしら。死ぬ勇気もないしどうしよう……)

全員が並び終わり、魔王の部下らしき魔族が何やら呪文を唱え、何もない空間が行き成り海に変わり「はい、向こうに繋がったら移動しよう」と言っていた。鞭はどうなってるのかわからないが、懐にしまっていた。

そして変な門を通って並ぶと、海の方を見ている紺色の肌の魔族が、何かやろうとしている。こいつが魔王なのか?それよりも隣に積んで有る食料が気になる。あれを食べさせてくれるのだろうか?

「○ーー○ーー○ーー○ーー波ァーーーーーー!!!!」

何か解らないが変な格好で変な詠唱をして手から光を飛ばしている。

「ふぅ、今のは完璧だろう」

物凄く満足そうな声で独り言を喋っている。我々に力を見せつけているのだろう。何をされるのかわかったものじゃない。

魔王の部下に話しかけられ、片言で恥ずかしそうに振り返っている。

変な魔王だ。

そしたらその魔王はカームと名乗り、奴隷は要らないと言ってタオルを渡され、体を綺麗に拭けと言われた。とりあえず従い外に出ると、スープが暖まり良い香りがしてきた。

久しぶりに腹が大きく鳴り、生唾を飲み込んでしまう。

そしたら、なんとこの食糧を食べさせてくれるらしい。

無言で食べていたら「食事は楽しく」みたいな事を言われ、食べ終わったら首輪や手枷足枷を外してくれた。

挙句に家まであるし、酒も振る舞ってくれた。なんだこの魔王は、噂と全然違うじゃないか、しかも今日はゆっくり休めと言われたので、仲間達は酒を飲み全員が「想像してた魔王と違くて安心したぜ!しかも酒まで飲めるしよ」とか言っていた。

「本当だぜ、噂と全然違うだろ」

「あの魔王が特殊なだけじゃないか? 良く聞く噂だと、酷使されて死にそうだったところを勇者に助けられたって話しか聞かないぞ?」

そう話しながら酒を飲み、皆いい感じになってたところに魔王が帰って来た。熊と鹿を仕留めたらしいけど酒が回って良くわからない、誰かが何かを言ってたので便乗してお礼を言っておいた。

そしたら夜は熊肉と鹿肉だった。

こんな境遇なら少し位頑張れそうだ。

夕食後、魔王が子供達に飴を与えてるのを見て「実はすげぇ優しいんじゃねぇ?」って事になったし女達も安心している。