I Became the Demon Lord and my Territory is an Uninhabited Island

Episode 54: When I Was Pulled After Making Some Sweet Things

今日は俺も開墾の手伝いだ。ウインドカッターじゃ背の低い雑草や低木は切れるが、木は無理だった。物質の硬度とか有るのだろうか?どうやっても薄い刃で切り付けた様な跡が付くだけだ。

なのでチェーンソーのような、楕円形の薄いガイドバーを作り、魔力のコストを下げるために摩耗に強いダイアモンドとかではなく、ルビーやサファイア辺りで試してみる。

トッププレートは少し高めの三ミリメートルで、鋭角ではなく鈍角にして、一応欠けない様に配慮し、アサリも刃の厚さから左右一ミリメートル程度広くして、熱を持たない様にさせて、それを手の先にに浮かせ、高速回転させながら受け口と追い口を作り、楔を打ち込み倒して行く。モーター音もエンジン音も聞こえず、木を削り取って行き、ババババババババとチップが飛ぶ音だけが鳴る。静かでいいね。気分は手刀で何でも切っちゃう系男子。

決められた範囲を手前から切ったら、初日に地面を隆起させ根っ子を無理矢理起こし、俺が指定した場所に山積にさせて置く。

後でこの間見つけた沼から水路を引き生活用水とまではいかないが洗濯や体を洗ったりできるようにしたいと思っている。

その水で土を洗い流し炭焼き小屋を後で作り根っ子を無造作に投げ込み全部炭にしてしまおうと言う浅はかな考えだ。

根っ子を掘り起こして綺麗にして乾燥させた奴を薪代わりに薪ストーブに入れていたのをTVで見たことが有るからたぶん炭にもなると思う。まぁその内焼きレンガを作って小屋をチマチマ作ってから炭作りも再開だな。

これも交易品に成ってほしいと思っている。

そろそろ10時か、休憩させるかな。

「朝飯と昼飯の間なので少し休憩してください。少し他の場所も周ってきますね」

そう言って他の場所も見て回る。

ちなみにチェーンソーモドキは、とりあえず数本切ったが熱も持ってないし、歯の欠けもない。とりあえず手前から奥に倒す様に横移動して行き、開墾組の皆で枝打ちをさせ、一列終わったら、また一本目に戻り、手ごろな大きさに切って皆に運ばせ、斧で割ってもらい、使ってない家を仮薪小屋として使用すると言う事に決まった。

もう一つの家は、肉や魚が腐らない様に燻煙室にした。血抜きをして内臓を取った獲物を枝肉にしてから、部分肉に分けて、海水で綺麗に洗って吊るし。一日中炙っている冷燻という物だ。本当は一ヶ月以上かけて乾燥させるんだが、今日が初日なのでどうしようもない。適当に燃えない様に木を燻らせて、家中を煙で充満させるだけだから、適当に見て火が消えてたら、再点火みたいな形を取ってるだけで良い。少し触ってみたが表面が少し乾いてただけだ。まぁこれで少しは日持ちするが肉類がなくなったら半乾きの肉を調理するしかないな。

塩が作れれば塩漬けとか、ソーセージにしても良いんだけどな。香辛料は何か野草班に代理品を見つけてもらうしかない。

ちなみにチップはフルールさんと相談して、癖の強く無い木を教えてもらい使用している。ちなみに煙の中に入っても目が痛くないし、むせないすげぇ木だった。

桜があれば香りも問題ないんだけどな。ちなみに煙の効果で防虫抗菌処理もされるから長期保存が効く。まぁ、木材みたいにカチカチになるのが難点だけどな。

冷燻は肉の水分量がかなり減って、長期保存に適してるけど時間がかかる。部分肉や枝肉みたいに、大きいのを乾燥させるのに適している。大きいと乾燥する前に痛んじゃうからね。

温燻は冷燻ほど日持ちがしないが、少し柔らかいのでビーフジャーキーみたいな物にはちょうどいい。これは薄切りにして塩漬けして五日から七日干してから煙で炙る。

網とかがあればこっちにするんだけど、一頭分を薄切りにして乾かせる物がないので諦めた。

熱燻は高熱で処理しつつ香りを付けるので、その日の内に食すのが好ましいからこれは却下した。これはバーベーキューとか、そう言う時にした方が良い。

ちなみに子供達の仕事も作り、パルマさん監修の下、樹液をカップで集めて鍋に集め、煮込んでいる。

鉢植えフルールさんが子守をしている。「もう少し火を弱く、焦げ付かない様に下の方からかき混ぜて、汗かいたらパルマから実をもらって来て飲みなさい」と口を出している。むしろ口しか出せない。

「疲れたら大人の人に言って、代わってもらうんだよ」

「「はーい」」「うん」

比較的山仕事に慣れてない女性の為に、大き目の木をくり抜き、その中に木をA型に組み、椰子の葉を真ん中から割き、何本も組んだ木に下からひっかけていき、綺麗な海水を汲んできて、上から掛けるという作業を繰り返してもらって、海の水より物凄くしょっぱくなったら鍋で煮詰めてもらい、塩にしてもらう事にした。

「こうやって作るんですか?」

「葉っぱが日の光で温まって、水が蒸発する様になってるんですよ。そうすると葉っぱに塩が付いて、その付いた塩が、また海水を掛けられて溶けて下に落ちる。それを続けます。かけ続けて海水が減ってきて、物凄くしょっぱくなってきてから煮た方が、効率的ですからね。水が重いと思ったら半分に減らして、あとは十分休みながらお願いします。後で交代要員を回しますから」

落下式塩田って規模ではないが、とりあえずは塩の作成も、今の人数分はどうにかなりそうだ。

休憩が終わり、少し伐採の作業をしていたら、子供が一人近づいて来た。

「まおうさまー砂糖できたよー」

「おーそうか、試しにこの砂糖でお菓子作ってあげるからね」

「え? お菓子!? ヤッター!」

「あと危ないから、俺に何か用事が有ったら近くの大人に言ってね」

チェーンソーモドキで切ったら洒落にならない。一応周りの確認はしてるし、近づかない様には言ってあるけど、事故がゼロになるって事はまずありえない。

俺は倒した木を輪切りにして、根っ子を魔法で起こしたら菓子作りに入る。

「すみません、俺ちょっと試したい事が有るんで任せて良いですか?後はこの小さくなった丸太を運んで斧で割って薪小屋に入れるだけですから」

「わかってますよ、菓子楽しみにしてますからね」

そう言われ子供達の所に向かう事にした。

んーこれくらいなら砂糖になるかな。

出来た砂糖を少し舐め、そう思いつつ今できそうな菓子を頭に思い浮かべる。

俺はパルマさんに実を一つ落としてもらい、ココナッツミルクを取り出し、小麦粉とパームシュガーと塩を混ぜ、簡単なクッキーを作る事にした。調理器具は仮拠点の1つを燻煙小屋にするのに掃除したら、意外に出てきたので、有る物は有効利用させてもらう。多分他の家にも有ると思う。竈もあったし。

バターとが無いが、ココナッツミルクに油脂が少し有るからどうにかなるだろう。

ココナッツミルクにパームシュガーを入れて、小麦粉を少しづつ入れ練って行き、ペタペタしてきたら、絞り袋に入れて絞り出したいけど、無いので細長くして魔法で凍らせ、適度な厚さに切って焦げ付かない様に獣油を鉄板に塗って、竈の手前の薪をずらして低温で二十分焼いて見る。

途中から子供が後ろで見ているが、最初の一口は絶対譲れない、生焼けだったり不味かったら子供達が悲しむ。だって塗った油が獣脂だもん。クッキングシートが欲しいわー。

うん、まぁまぁ。

そう思い、後ろに居た子供達に一枚づつ渡していく。皆お行儀良く待っている。あー「食べていいよ」って言うのを待っているのだろうか?

「食べていいよ」

そう言ったら一生懸命頬張り、飲み込むのが惜しそうにしながら十分に味わい飲み込んでいく。

奴隷になった頃からって考え、お菓子なんかどのくらい食べてないのかわからないが、子供に不幸はさせたくないな。もしかしたら、奴隷になる前からかもしれない。そう考えると涙が出そうになる。

俺も休日を決めて村に戻ってやらないと、子供が拗ねると思うからかえらないと、

スズランとラッテも多分怒ると思う。

なんか出張中の旦那な気分だ。

そう思っていたらまだ飲み込んでいない子が「おいひいー」と頬張りながら喋っている。

「こらこら、口に食べ物を入れたまま喋っちゃ駄目だよ」

モグモグと更に咀嚼してから飲み込む。

「まおーさますごーい。おかしも作れるんだ!」

「まぁね、このご褒美は大人には内緒ね、これから大人にも配るけど、その時にもう一回あげるからね」

「「「はーい」」」

「私も子供達に、危険がないか見てあげてたんだけど?」

「はいはい」

そういいながら【水球】で水を与える。

昨日の夜に、注意はしていたから変な声は上げないが、我慢してプルプルしている。そんな感じのプレイに見えなくはないが、そんな気分になる。子供にはまだわからないだろう。ついでに、樹液を出してもらってる木にも水を与えた。

クッキーは、昼食の時か三時頃の休みにでも配るかな。

落下式塩田(仮)にも顔を出しに行ったが、一応言った通り海水を一定時間事に葉っぱに掛けて、随分海水が減っている。

「お疲れ様です、どうですか?」

「えぇ、だいぶ減って来たので、そろそろ鍋で煮込んでも良いかもしれません。物凄くしょっぱいですし」

「じゃぁ、ここに簡単な竈作っちゃいますね、少し待っててください」

そう言って、開墾中の場所の赤土を持って来て、砂を混ぜ水を入れ練り、魔法で地面を水平にして、子供が遊びで作る山みたいなのを作り中を空洞にして、上に鍋を乗せ水平になったら温風で乾燥させ、中で火を焚き強度を出す。

濃くなった海水を煮詰め、更に水が減り、塩が結晶化して浮いたり沈んだりしている。それを掬い、天日で乾燥させ出来上がり。少し結晶が大きいが、まぁどうにかなるだろう。

「んー、角がなくて少し甘いか? これならココナッツウォーターに混ぜて飲ませれば経口補水液になるな」

「塩なのに甘いんですか? けいこうほすいえき?」

「ん? あぁ、海の場所や作り方によって、辛かったり甘かったりするんですよ。少し舐めてみてください。あと経口補水液は、普通に水を飲むよりも早く体に吸収されるので、熱くて倒れたりした時に飲ませると、水よりは良いって飲み物です」

これくらい大雑把な説明でも平気だろう。

「博識なんですね。塩の方は……んー? 大陸で舐めてた物より、確かにほのかに甘い気がします」

「まぁ、塩も食べ物みたいに味が違うし、環境でも変わりますからね、今日はこれを皆に舐めさせ、問題無ければ大量に作って交易品にしてみましょう、そろそろ昼なので家の方に戻りますか」

そう言いながら拠点に戻ると、まだ代わり映えのしない食事だが、ないよりはマシだよな。

そうして狩、漁、採集組も戻って来てたので、出来上がったクッキーと塩を配り皆の意見を聞く。

「あぁ、久しぶりの甘い物だ」

「んー久しぶりに甘い物も良いな。本当に出来るとは思わなかったけどな」

「そうねぇ、本当に砂糖が出来るとは思わなかったわ」

「これ私が作ったクッキーより美味しいんだけど、女としての威厳が!」

「魔王様って本当にマメねぇ」

反応は様々だ。「不味い」って意見がないだけ助かるな。

塩の方は「うん、塩だな」「塩だ」で終わったのが少し悔しかった。

午後だが、俺は沼の方から水を引く為に、仮拠点の近くに一カ所だけ少し深くした、水が溜まる場所を作り安全の為法面(のりめん)も作る。排水先は湾内に流れる様にしておいた。

黒土内のミネラルとか微生物が、魚に良い方に影響するかもしれないからな。最初は茶色い水がムワーって広がるかもしれないけど。

洗濯とかで水質汚染とか酷くなったら、別に洗濯所を作ってそっちはとりあえず、湾外に流す様にすればいいんだし。

ソコから沼の場所まで地面を魔法で沈下させながら歩く、本当は堤防敷とかも有った方が良いのかもしれないが、その辺は後日やるつもりだ。水路の深さは一メートルくらい、両幅二メートルで三十度程度の法面も付けている。だから水路の幅は最終的に少し広く五メートルくらいだ、まだ嵐を経験してないが、増水に配慮した作りにしておかないと不味いからな。ちなみに沼までの邪魔な木は切って、一時的に転がしてある。

法面は後で石でも積んでもらうか、採石所で切り出すしかないな、後は五百メートル置きくらいにに二メートル角の深さ一メートルの升を作り、流れる水量が一定になるようにしておく。この辺も強度的な問題があるから、石材で補強も必要だな。

少し先に元魔王城建設予定地が見える、結構進まないもんだな。少し根を詰めてしまったが、太陽がそろそろ沈みそうなので急いで帰る事にした。

今日は皆に指示を出して、昨日の続きを始める。

建設跡地脇まで来たら、小さな人口池みたいな物を作り、将来この跡地に移り住む時の為の計画もしておく。

幸い比較的平地で、木々も少ないので、余ってる平地を適度に使い、深さもそれなりにして、法面はかなりなだらかにしておくか。子供が落ちたら大変だからな。

沼の手前百メートルまで来たら沼の掃除だ。まずは小川をせき止め、上流五十メートルくらいのところにも、升を作っておき、そこに水も溜めて置く。ぬかるんでる場所を適当に掘り下げ、落ち葉と泥を一緒に【水球】にして、邪魔にならない場所に山にしておく。多分腐葉土だから、今後の開拓で畑用にでも使えるだろう。

一応この辺が沼の真ん中だろうと、いう場所を探して深くしてある程度完成。

周りに木と落ち葉がなく、中央に向かってなだらかに窪んでいるとそれらしく見えるな。

ちなみに下半身は既に泥だらけで、ズボンを脱いだら蛭がいたが、焼いてから回復魔法をかけておいた。アメリカン的なジョークを言っても良いが、こっちで通じるかどうかだな。

「太腿に付いてた蛭の方がでかかったよ」ってな。

その後せき止めていた土を退かし、しばらく眺めていたが流石に水が汚い。まぁ、数週間で綺麗になるだろう。残りの百メートルも沈下させておくか。

帰り際に魔王城跡地の井戸に行き、水が沸いていたので汲んでみるが、かなり綺麗で、そのままでも飲めるので、後で小屋を建てに来て、水が汚れない努力をしようか。

手押し式ポンプとか有ればいいんだけど、今の俺じゃ作れないし、召喚された勇者の誰かが作ってるだろう。他人任せ最高だな。

時間も少しあるので、作られた道を使わずに探索目的で帰ったら、蜂の巣を発見した。

「養蜂も良いな」

そんな言葉が自然に漏れ、あとでフルールさんと相談してみようと思った。

仮拠点に戻ると狼が増えてて、人族がおびえていた。

人族からは一定距離を置いて集団で集まっていたが、どう見ても二十匹はいる。流石に怖いな。

人族は斧や鉈を持った男が前に出ているが、狼の方は相手にしていない。子供達は泣きそうだ。

「見ればわかりますが、どうしてこんな事に!」

「お、狼が森から沢山出てきまして……」

「……そうですか、なんか様子を見ている様な気もするので、俺がちょっと前に出てみます」

最悪『相手が集団で襲ってきたら、エメラルド弾を使わざるを得ない!』そう思った。

そうすると一匹の狼が近づいて来る。

「んぁ? ヴォルフか?」

あの毛の配色は何度も見てる。

「ワォン!」

ヴォルフだった。

俺はしゃがみ、適当に話してみる。

「どうしたんだあの群れは、友達か?」

「クーン」

「友達じゃない? じゃぁお前がリーダーなのか?」

「ウォン!」

「じゃぁお前の言う事は皆聞くのか?」

「ワォン!」

「そうかそうか、群れを連れて来てくれたんだな」

よしよしと頭を撫で、後ろにいた群れに吠えると群れが俺の回りにやって来た。

流石にこの光景は怖いが、俺の臭いを嗅いだり、足元に首を擦り付けたりして来る狼がいる。

「ターニャ、ソーニャ」

そう呼びかけると、胸に前足を置いて頬を舐めて来る。

あー、懐いてるのはやっぱりこの二匹か。

俺は人族の方を見るが、まだ怯えている。

しゃーないな。

「ヴォルフ、ターニャ、ソーニャ、ごめんな?」

「ワフン?」

そう言ってまた魔力を体から出し、立ち上がり狼の群れを睨みつける。

大半は驚いたように服従のポーズをとっているが、数匹は前顔部にしわを寄せ今にも襲い掛かろうと、頭を低くしている。最初に出会った三匹は、俺の横で平気な顔でお座りをしている。多分殺気を自分達に向けられてないからだろう。

あちゃー少しだけ強い個体がいたか。ってかこの辺の群れをヴォルフが集めて、残った数匹がリーダーって感じか。ランキングが俺の方が上って教え、狼のリーダーになる方法が早いか。

ごめんな、そう思いつつ服を脱いで左手に巻き付け、俺も笑う様に歯を見せながら歩み寄り、狼が襲い掛かってきたところを左手に噛ませ、舌を掴み地面にころがし、右手で首を押さえつけ思い切り首の皮を握り、噛みつくようなそぶりを見せ「ガァ!」と言ったら「キャイーン」と鳴いたようなので離してやった。他の服従のポーズを見せていない狼にも近づき、同じような事をしようとしたら既に服従してた。

ヴォルフが「ほらな、無理だろ?」的な目をしていた。

とりあえず俺は、狩り班から許可を貰いまだ解体していない鹿を貰い、目の前で肝臓を取り出し、軽く手の平の上で魔法で焼いて食べ、皆にリーダーである事を思い知らせて、残りの狼たちに与えた。

確かリーダーって先に食事するんだよな?そして、栄養のある部位を食べるんだったような……。まぁ、レバーくらいなら少し焼けば多分平気だと思いつつ、狼が鹿を平らげるのを見ていた。

そうしたら俺が人族達や狼のリーダーと認められ、俺の方が強いと認識して狼が服従するようになり、森に帰って行った。

「いやー、一応躾と言うか、俺がリーダーだと教え込む為だし仕方ないよねー」

血まみれの手と口周りで人族に近づいたのが浅はかだった。少し水球で洗えばよかったな。

内臓をほぼ生で食って狼を懐かせたと思われ、いままで少しだけ縮まったかと思った距離が遠くなり、子供も泣きわめいている。

かなりへこんだ。

「いや、レバーは手の平で、魔法で焼いてから食べましたよ? これは群れを従わせる為に必要だったんですよ」

そう弁解しながら手を洗い、口の回りも洗うが皆信じようとはしない。

「はぁー……怖がらせて申し訳ありませんでした――」

そう言いつつ、とぼとぼと自分が使っている家にヴォルフと一緒に入って行き、ヴォルフに話しかけながらずっと撫でていた。

「俺だって皆の前であんな事したくなかったよ、けどさ、今「自分の方が強いんだぞ」って示さないと、アイツ等人族達を襲っちゃうだろ?」

「クーン」

「あーあ、皆に怖がられちゃったかな? 子供達泣いてたよ」

「クーン」

「きょうの夕食からどうしようか、やっぱり避けられるかな?」

「クゥーン」

そう言うと、頭を膝にこすりつけて来て、前足でカリカリしてきたので、気を使ってくれてるんだろうか?

「ありがとうな」

そういいながら撫でてたら、後ろから声を掛けられた。

「あ、あの夕食です」

「あ、はい。今行きます……もしかして聞いてました?」

「申し訳ありませんでしたー」

「あーー、はい。少しだけ遅れます」

そう言って女性が家から逃げる様に出て行き、俺は「うおーーーー」と叫びながら床をゴロゴロ転げまわり「恥ずかしーー」と叫び、しばらくして立ち上って夕食を食べに行こうとしたら、更に多くの人族に覗かれてた。

なんか恥ずかしさで死にたくなった。

夕食は皆とかなり離れたところで食べ、いつもより少しだけしょっぱかった気がした。

閑話

夕食の為にカームを呼びに来た女性の夜

A「あの後さ」

B「ん?」

A「魔王様を夕食に呼びに行ったでしょ?」

B「行ったね」

A「最初に懐いてた狼、ボルフって言ったっけ? まぁ狼を撫でながら話しかけてたんだよ」

B「うわー」

A「それを見ちゃってさ、中々話しかけられなくてずっと見てたんだけど「皆に怖がられちゃったかな」とか「子供達泣いてたな」とか「夕食の時どうしよう」って狼に愚痴ってたんだよ」

B「あちゃー心が弱いなー魔王様」

A「しかも狼の方もなんか悲しそうに鳴いて慰めてる様な感じだったんだよね」

C「んー確かに見た目怖かったけど良い魔族ってわかってるし、皆少し引いちゃっただけだし、お菓子作りも上手だったし。根はきっと良い魔族なんだよ」

B「そうなんだけどねー」

C「やけに色々詳しいしさ、正直村で餓えに耐えながら生活してた頃よりはかなり良い生活だから私は感謝してるんだよ」

B「私もー。だってまだ一回も叩かれてないし、叩いてるところ見た事ないよ、むしろ優しすぎるよ」

A「私達女にも色々考えてくれてるし、気も配ってくれてるし本当良い魔族なんだけどね。まぁ無かった事にして普通に接してあげましょうよ」

BC「そうね、それが一番よね」